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暗闇の虚構  作者: 一宮 沙耶
第2章 性転換

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9話 死体

私があのメス豚を埋めた山中から死体が発見されたというニュースが流れた。

登山をしていた人が、用をたそうと登山道を外れ薮の中に入ったことから発見された。

発見者は、土から出た手の骨を見て、その場で大声を出し、ひっくり返ったらしい。

錯覚だと思うけど、手の骨がこちらに来てと手招きしていたという。


登山道から少し外れ、大きな岩の後ろだったことから、長い間、発見されなかった。

ただ、岩の後ろには平らで広い敷地があったので、死体を埋めるには手頃な空間だった。

多くの警官が捜査する中で、無惨に殺された女性の怨念のような重い霧が立ちこめる。


ドクロには何も表情がなく、ただ寂しそうな姿を醸し出す。

手足の骨も、力なく土の上に散らばり、小柄ということだけでは女性だと分からない。

髪の毛も焼けてちぢれ、元の長さは分からない。

骨格の調査で女性だと判明した。


20代の女性のもので、おそらく2年ぐらい前に埋められたのだろうと言っている。

焼かれていて、白骨化した遺体には、証拠となるものは何もなかった。

衣服も焼かれたのか残されておらず、スマホやお財布といったものが何一つない。


これは、綿密に遺品をその場に残さず、本人に辿りつけないようにするプロの仕業。

通常は、指輪、バッグの金具等が残されているが、証拠らしい物は何一つ発見されない。

ただ、犯人は一つだけミスをした。

白骨化遺体の近くにある木陰から沙奈という女性の運転免許証が出てくる。


このことから、その女性の遺体だろうということで捜査は進んだとニュースは語る。

犯人は、暗い山中で、運転免許証が落ちたのに気づかなかったのだろうと。

落ちたのに気づいても、プロでも暗くて、時間の制約から探せなかったのかもしれない。


警察の調べでは、沙奈は冬から出社していないことが分かる。

その父親は、警察に失踪届を出していたものの、放置されていたと報道される。

父親は、やっぱり殺されていたじゃないかと警察に怒鳴っていたらしい。

そして、娘が亡くなっていたことが分かり、その場に泣き崩れる姿が映像に映る。


お父さん、ごめんなさい。

私は生きているから、そんなに気を落とさないで。

そこにいるのは、お父さんの娘ではなく、人の仮面を被ったメス豚だから。

実のお父さんではなくても、少しの間、同居した人には愛着が残っている。


歯型もチェックされたけど、特に治療した跡はなかった。

沙奈も同じだったので、死体は沙奈のものだろうという結論は変わらない。

歯を治療をしていないこと自体は稀なので、遺伝子検査まではされなかった。


1年ぐらいだと、家のどこかに落ちてる髪の毛とかを調べることができる。

そうすれば、沙奈じゃないって分かったと思うからラッキーだった。

日本の警察は忙しく、失踪した人の身元調査に、多くの時間を割けない。


やっぱり、直感で運転免許証を置いたんだけど、それは正解だった。

自分の運転免許証を犯人が置くなんて、普通は考えないものね。

遺体は焼いたから、同性、同年齢、同じ背格好なら、別人と思うのもやむを得ない。


捜査が進む中で、殺された頃に、沙奈がレンタカーを借りたことが分かる。

監視カメラで、死体がある山の近くまで沙奈が運転していたことが分かった。

その後、レンタカーは朝4時ごろ、お店に誰かが返却している。


そこで、この山奥に埋められていたんだろうとされた。

この近辺で監視カメラで確認された夜11時以降に殺される。

それから犯人が穴を掘って、燃やされ、2時までには埋められたのだろうとされた。


その後、犯人がレンタカーに乗り、レンタカー店が始まる前に返却する。

店員に顔を見られないようにしたと想定される。

帰るレンタカーは監視カメラに写っていて、女性だとは分かった。

でも、その女性以外に誰もいなかったことまでは特定されていない。

しかも、その女性は、マスクと帽子で顔は特定できなかった。


さらに、死亡したと思われる直前に、500万円の預金が全て引き下ろされていた。

本人が銀行から通帳と印鑑で現金を受領したことは確認ができている。

投資詐欺等ではないかと聞かれ、問題はないとはっきりと回答があったと銀行はいう。

何か脅迫されたんじゃないか、金目当ての殺人だろうということで捜査が進んだ。


「脅迫の現金の受け渡し場所として山奥が選ばれたんだろう。周りに人がいないし、殺してもわからない。こんな深い穴を掘って埋めたのだとすると、時間的にいっても男性じゃないと無理だな。帰りのレンタカーに女性が映っていたとすれば、男女の共犯で行った犯罪なのだろう。」

「レンタカーが、ここから夜中にレンタカー店の前に返されていた。翌日までのレンタルだったけど、電話で、お返ししますって女性の声で連絡があり、朝に店員が確認したらキーもあって、追加料金もなかったから、お店も問題視していなかったらしい。その女性って誰だ。紗奈の周辺を洗え。だれか、紗奈を恨んでいた人がいたに違いない。」


男女2人共犯の脅迫と殺人、死体遺棄ということで捜査が進められた。

その後、紗奈が隆一をストーカーしていたことがラブホの監視カメラから分かる。

それが何らかの形で隆一と一香にバレ、脅迫されていたという仮説が出された。


ただ、一香と紗奈が話している場面は見つからない。

レンタカーの中からも、隆一や一香の指紋、髪の毛などは発見できなかった。

見つかったのは、ただ、紗奈の指紋や髪の毛だけ。

相当、犯罪に精通した犯人だとも言われた。


その後の取り調べで、一香の話しを聞いても、紗奈のことは知らないと一点張りだった。

その言葉には迷いはなく、取り調べている刑事も、本当だとしか思えないと言っていた。

隆一も、沙奈のことは知らないと言うだけで、不審なことは見つからなかった。

捜査は難航し、結局、犯人は分からずじまいで、捜査チームは解散することになる。


世の中では、次々と犯罪のニュースが流れ、解決されない事件は忘れ去られていく。

山中に白骨遺体があっただけでは、暴力団絡みの事件なのか等、何も分からない。

しかも、紗奈は、ごく普通に生き、恨まれるような人ではなかったとも言われた。


そんな紗奈はニュース性がなく、あっという間に関心は失われていった。

あえて言えば、発見者の心にはこれからもずっと、手招きをする手の骨が記憶に残る。

でも、それだけのこと。


最近は、刑事も来なくなり、捜査は終わったんだと安心する。

やっぱり正義は私にあるのよって、ニヤリと笑う私がいた。

でも、紗奈の部屋からとんでもないものが見つかる。

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