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暗闇の虚構  作者: 一宮 沙耶
第2章 性転換

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6話 殺意

女性の体になって気づいたことがある。

これはこの体の特質かもしれないけど、体が弱く、あまり活動的に動けない。

また、生理は辛く、生理の周期で心の激しい心の振幅が訪れる。


いきなり暗くなったり、寂しさや、憤りを感じることも多い。

また、女性どうしの関係も陰湿だと気づいた。

目の前で笑いながらうなづいていても、裏では協力せずに邪魔をする人が多い。


男性の時には、人付き合いも少なかったから、そんな経験はなかった。

女性になってからも、相変わらず、人との交流は広げていない。

でも、女性からは、どうしてか人付き合いが少なくても、陰湿ないじめを受ける。


人と関わらないから放っておいて欲しいのに、邪魔をしてくる人がいる。

私の容姿が美しいだけで、邪魔だということなのかしら。

陰で、私の悪口が言われたり、物がなくなったりする。

子供じゃないんだから、そんなことはやめて欲しい。


そんな女性が多いことに、腹が立ってしかたがない。

特に、同僚の萌絵はひどかった。

私にはいいことしか言わないのに、裏では私の根も葉もない悪い噂を流す。


私が萌絵に何をしたというのよ。

私の容姿とスタイルをライバル視しているの。

そんなことを言われても困ってしまう。


そんなことを考えているときに、2人の間に決定的となる事件が起きる。

お客様に提案をする朝に、提案書のファイルが入ったフォルダー全部が消されていた。

ログを調査していくと、萌絵が最終アクセス者になっている。

萌絵に目を向けると、機嫌良く、キーボードを打ち続けている。


「萌絵、私が午前中にお客様に提案する提案書、消したでしょう。」

「そうだったんだ。何か間違って消したような気がしたんだけど、何を消したか分からなくなっちゃって。ごめんね。復元すればいいじゃないの。」

「ごめんじゃ、すまないでしょう。もちろん、復元しようとしたけど、復元できないように操作されている。意図的でしょう。」

「やだ、私を犯人にしようとしているの? 一香って、性格悪くない? 本当に嫌だよね。こんな女性がいると会社の雰囲気が悪くなる。」


悪意を持った削除で、もう何を言ってもだめだと思った。

お客様にお詫びをしたけど、重要な提案で、スケジュールが間に合わないと怒りを買う。

お客様から、当社の別部門から提案があり、その部門との取引に切り替えると伝えられた。


その別部門を聞いた時は愕然とする。

萌絵の部門で、提案者は萌絵だという。しかも、提案内容は私が作成したもの。

私は、社長から呼ばれた。


「伊東さん、お客様はお怒りだ。木下さんが気を効かせて対応したから、なんとかなったものの、それがなかったら、重要顧客を失うところだった。これは大きな責任問題だ。」

「違うんです。私の提案書を盗み、私の提案書を削除して邪魔したのは木下さんなんです。」

「自分の失敗を他の人になすりつけるんじゃない。伊東さんは職場での評判が悪いと聞いているよ。伊東さんは、キャリア採用で、まだ試用期間中だと言うことを考えて、辞めてもらうことにした。懲戒処分にすると伊東さんにも影響は大きいから、今日中に依願退職をしてもらいたい。」


転職したばかりの会社では、私の味方は誰もいないと思い、泣く泣く退職することにする。

私は何もしていないのに、萌絵は、日頃から私の悪い噂を流し、仕事の邪魔をしてきた。

挙げ句の果てには、萌絵は私に会社を辞めさせた。

私は何もしていないのに、会社を辞めさせて人生を狂わせることまでするなんて許せない。


こんな人は生きている資格がない。

あまりにひどい仕打ちに腹がたって、殺意を抑えられなかった。

そう、私は何人も殺してきた経験がある。それを侮ってもらっては困る。


萌絵は今週木曜日に名古屋出張が入っているのを思い出す。

萌絵は、出張のときは、会社から出る宿泊費との差額を懐に入れている。

そこで、いつもインターネットカフェに泊まっている。


私は、名古屋に行き、萌絵がインターネットカフェに入る所を確認する。

古びたビルで、狭い階段を降りるとドアがあり、それを開けてカフェに入る。

ドアの前には、横にある居酒屋のビール瓶等が並ぶ。


私は経路やドアの前をチェックしていると、ヤクザ風の男性が私に声をかけてきた。


「お姉さん、何しているの? インターネットカフェに入ろうか、居酒屋に入ろうか迷っているとか? それなら、俺達と一緒に飲もうよ。俺の友達がもう一人、中で待っているんだ。奢るから来いよ。楽しませてやるから。」

「いえ、友達が、このインターネットカフェで待っているって言ったけど、本当にこの店なのか確認していただけ。誘ってくれて、ありがとう。でも、今日はいいわ。今度ね。」

「そんなこと言わずにさ。さあ、居酒屋に入ろう。」


彼は私の腕を捕み、強引に居酒屋に連れ込もうとする。その時だった。

インターネットカフェに入ろうとする男性3人組が仲介に入ってくれる。

イケメンの学生が3人、私の前に立って、ヤクザ風の男性を遮る。


「嫌がっているじゃないですか。離してあげてください。」

「関係ない人が邪魔するんじゃないよ。」

「あなただって関係ない人でしょう。」

「喧嘩売っているのか?」

「いいですよ。こちらは3人、しかもボクシングクラブのメンバーです。やりますか?」


ヤクザ風の男性は唾を吐き、居酒屋に入っていった。


「ありがとうございます。助かりました。」

「女性1人でふらふらしていると、この辺は危ないですよ。気をつけないと。」

「そうですね。気をつけます。本当に、ありがとうございました。」


深々とお礼をして、その男性3人組を先に通す。

その3人組は爽やかに笑い、奥に進んで行った。

今日はボクシングの試合でもあって名古屋にきて、それぞれの部屋で泊まるのかしら。


まずは荷物だけ置いて、これから名古屋の街に繰り出し、飲みにいくのかもしれない。

でも、これから大惨事が起こるから、間に合わないわね。

その後、私は、受付にいく。


私は、ドアの横の部屋を申し込んで個室に入った。

用意してきた新聞紙を床に敷き詰め、ガソリンを撒く。

そして、炎を出すライターを投げる。


私は、勢いよく部屋を飛び出し、カフェを出た。

私を助けてくれた男性3人組もこの火災に巻き込まれるか分らないけど、そうなったらごめんなさい。

恨むなら萌絵を恨んで。萌絵のせいで死ぬことになったんだから。


あのヤクザ風の男性は入口近くに座る男性に挨拶していたから、そこに座るはず。

一緒に葬れる。あなたみたいな人は、この世に生きている価値はないの。

どうせ、飲んだ後、私を犯すつもりだったのでしょう。死んでも自業自得。


ドアの前にビール瓶ケースやLPガスボンベを置いて、ドアが簡単に開かないようにした。

しかも、ガスボンベのハンドルを開けて、ガスを勢いよく外に出す。

シューという音が心地よい。このガスに引火して居酒屋は大爆発となるはず。


ドアの先では、火事だとの叫び声が響き渡り、煙がドアの隙間から漏れる。

ただ、居酒屋には悲鳴は届いていない。

私は、すぐに名古屋駅に向い、新幹線に飛び乗って東京に向かった。


翌朝、カフェでは、ドアが開かず15人が逃げ遅れ死亡したというニュースが流れる。

カフェには、思っていた程、人はいなかったのだと不思議に思った。

萌絵の被害者を多く出したくないという神様の配慮だったのかもしれない。


カフェの中は、壁が炭のようになり、その前に黒焦げになった遺体が重なって見つかった。

私を助けてくれた男性のサングラスと同じ物をつけた遺体もTVの映像に映る。

私を助けてくれた3人もその中にいたのだと思う。やはり、間に合わなかったんだ。


一酸化炭素で息ができずに倒れ、死亡した後に火に焼かれたのだろうとニュースは伝える。

今回は、災難だったわね。萌絵がいたインターネットカフェに入ったのがいけなかった。

全て萌絵のせい。ゆっくり、あの世でおやすみなさい。私は手を重ね、祈る。


LPガスボンベが爆発し、居酒屋にいた20人も亡くなったという。

居酒屋では、爆風に多くの人が壁に叩きつけられていた。

特に、居酒屋の入口近辺の被害はひどく、壁は血だらけで、人はお煎餅のようだった。

間違いなく、あのヤクザ風の男性はこの世から消えたと思う。やっぱり神様っているのね。


無差別殺人で、近年稀に見る凶悪犯罪だとニュースは伝えていた。

35人にも及ぶ死亡者を出した事件に、殺人を楽しむプロファイリングがなされている。

全く違う。萌絵を狙った事件だとは誰も気づいていない様子。

たまたま、萌絵のせいで、関係のない人々が犠牲になっただけで、無差別ではない。


ニュースでは、消防隊が中に入ろうとするも入れない状況を説明している。

煙が階段から流れ、酸素マスクをしないと入れないと言っている。

しかも、いつ大型の爆発がまたおきるかわからないらしい。

居酒屋の料理場に、まだ爆発していないガスボンベがあると。


数日後に、鎮火し、死亡した人のリストが公表された。その中には萌絵もいた。

萌絵の顔は大火傷で、見るに耐えない姿なんだと思う。

あなたの汚れた心にぴったりの姿。


私を敵にまわしたのがあなたの失敗だったわね。

もう少し苦痛を味わせたかったけど、私の心は広いから早く死なせてあげた。

でも、心の中では、少しづつ焼けていく萌絵の姿を楽しく思い描いていた。


まず、あのひどい言葉がでてくる口から火が入り、炎が肺の中に溢れる。

そして、炎が喉を通り、目と鼻、口へと流れ、顔はただれる。もう人間には見えない。

炎はさらに勢いを増し、髪の毛を縮れさせ、頭は黒い煤に覆われた頭骸骨だけとなる。


それとともに、卵巣にも火が周り、萌絵の将来に出てくる卵子も含め、全てを焼き尽くす。

焼けて、灰となった卵子が子宮に伝わり、外に出て、女性器も焼き尽くす。

そう、もう女性らしさなんてどこにもない醜い炭の塊。

そんな変わり果てていく萌絵を想像し、私は、テーブルにチーズとシャンパンを用意する。


あなたのせいで、大勢の人が巻き添えとなった。

あの世で、その方々にお詫びをしなさい。

私は、自分の部屋で、シャンパンをグラスに注いで笑顔で乾杯をした。

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