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暗闇の虚構  作者: 一宮 沙耶
第2章 性転換

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5話 彼女

私は、退院すると、すぐに、隆一にこの体を見せたかった。

でも、内向的な隆一は、面識がない私にすぐに心を開くことはないと思う。

だから、偶然会ったように見せかけるために、しばらく、後を追うことにする。


夜7時に、隆一は会社から出てくる。

その後を追うと、会社からずっと後ろを歩いていた女性が隆一に急に声をかける。

誰なのかしら。会社のビルからずっと一緒だったことが気になっていた。


「隆一、もういいんじゃない。」

「ここなら、もう会社の人にばれないかな。一香、今日も素敵だね。」


その女性は、隆一と腕を組み、イタリアンレストランに入っていく。

隆一には彼女がいたんだ。社内恋愛の彼女が。知らなかった。

SNSの紗奈に興味があるような話しをしていたのに。


私については、会社では、言われたことを適当にこなしておけば良かった。

伊東さんが、どうして、こんな楽な会社が嫌だったのか分からない。

どうして、男性の体になるまでの覚悟をさせたのか。


ただ、言われたことだけをするだけで、上司も、最近は良くなったと褒めてくれる。

それに笑顔で応えるだけで、職場の時間は穏やかに過ぎていく。

給料は低いけど、仕事に追われずに定時に帰れるし、私にとって、この生活が向いている。


その分、隆一の尾行に時間を使うことができた。

その週末には、2人はディズニーランドに行ったから、その後をずっとついていく。

周りから見ると、女性1人でディズニーランドを歩く不審者と思われたかもしれない。


1月の寒い日、隆一は、公園の池に、滑って飛び込んだこともあった。

意外とそそっかしいことに笑っちゃったけど、寒そう。

横にいる彼女、早くコートを脱いで、隆一を温めてあげなさいよ。

本当に、何もできないんだから。私の方が彼女として向いている。


それからも1ヶ月ぐらい、毎日のように2人の後ろを歩いた。

秋の銀杏並木では、密かに2人の写真をとって、彼女の顔だけ私の顔に合成する。

一緒に歩いた記念としてフォトスタンドにして机の上に飾ってみた。


そんなフォトスタンドも増えて、お父さんから、彼ができたんだねって冷やかされる。

そうなの、とっても素敵な彼なんだからと自慢しちゃった。

でも、お父さんには、自慢のお父さんだと思ってるよって言っておいた。


お父さんは、愛している娘が成長する姿を暖かく見守っているように見える。

紗奈さんとお父さんがよい関係だったことには感謝している。

干渉もせず、放置もせずに、暖かく接してくれる、この距離感は心地いい。


そんな中、、ある日、飲んで帰る道で、隆一と一香はキスをしていた。

この私がいるのに、一香の汚い唇に触れるなんて、本当に気持ち悪い。

一香のどこがいいのよ。


確かに彼女は、顔は可愛い。

でも、隆一と話すときは声が1オクターブぐらい上がって、あざとい。

こんな裏表がある女性だって気づいてよ。


ネイルを見ると、真っ青にラメが入っている。

品がないけど、これが隆ーの好みなのかしら。


また別の日には、2人はラブホに入り、1時間半ぐらいで腕を組み、笑いながら出てきた。

一香、汚い体で、隆一のこと汚さないで。


この世から、あんなメス豚はいなくなってしまえばいいのよ。

どうして、隆一は、あの女性の醜い姿に気付かないの?

本当に人を騙すのがうまいメス豚なのね。隆一が悪いわけじゃない。


多分、あのメス豚、体で隆一を誘惑したのよ。

あんな醜い心だと、それしか、使えるものないもの。

そんな汚い体で隆一を汚さないでよ。

あんたなんて、この世から消えればいい。


毎晩、その女性の写真をナイフで突き刺す時間が増えた。

こんな女性が世の中にいることが間違っている。

毎晩、あの女性が電車に轢かれ、脳が飛び散る姿を想像していた。


でも、2人が腕組んで歩く日々は続いた。

隆一は、優しいから、あんな女性でも別れようと言って、悲しませたくないんだと思う。

私が、隆一のために、なんとかしないと。


隆一の生涯の伴侶として、あの女性と別れさせてあげる。

隆一と、結婚して、子供ができて、子供の結婚式を迎えてなんていう幸せの日々。

そんな夢に、毎日、浸った。邪魔なのは、あのメス豚だけなんだけど。


私は、あのメス豚の帰宅ルートと監視カメラを調べた。

そうすると、ある住宅地の十字路で、監視カメラはなく、薄暗い場所を見つける。

あのメス豚は、そこを曲がっていく。


私は、その十字路の角にレンタカーを置き、メス豚が来るのを待っていた。

そして、メス豚がその角を通ったとき、前から近寄る。

ナイフで下からお腹を刺して、ぐるっと一回転させた。


そして、刃が上を向いた時に、ぐっと上にあげた。

メス豚は、目を見開き、口から血を出して、何か言おうとするけど、言葉にならない。

倒れた体に馬乗りになり、ナイフを上から振り落とし、心臓を一刺しにした。


再び私の方を見たけど、体が痙攣して声を出せないみたい。

そう、あんたは豚なんだからしゃべれなくていいのよ。

でも、自業自得ね。どれだけ、悪いことしたかわかっている?


あなたが悪いのよ。1分ぐらい経つと、動きも止まった。

車まで引きずり、ブルーシートを敷いた後部座席に引き入れる。

くだらないメス豚なのに重いわね。迷惑かけないでよ。

そして、ポリタンクで持ってきた水を道路にまき、血を流した。


血がついたシャツを着替えて山奥に車を走らせる。

数日間かけて掘ってあった穴に、メス豚と、さっき脱いだシャツを放り込む。

ガソリンで焼いて、その上から土をかぶせた。

そのときに、私の運転免許証を、近くの木の下に忍ばせておいた。


焼く前に、身分証明書とかスマホとかは全て取っておいた。

だから、発見されても、このメス豚に辿りつかないと思う。

普通は、私の運転免許証がここにあるんだから、私の遺体だと思うでしょう。


しかも、このメス豚には家族はいないと隆一に話すのを聞いたから、探す人もいないはず。

これで、隆一をたぶらかす、あのメス豚を駆除できた。

世の中も、その分だけ良くなったと思う。


そして、私は、次の日、整形外科に行って、一香の顔に整形してもらった。

お金はそこそこ出したから、医師は、整形の理由は聞かなかった。

そして私もびっくりするぐらい彼女と同じ顔になった。


もともと、スタイルも私と似ている。

髪型も彼女と同じにしたら、誰がみても見分けがつかない。

せっかく美人の体を手に入れたけど、一香の顔も可愛いから損をした気分ではない。

まあ、女性になりたかっただけで、顔はそんなにこだわっていないから、どうでもいい。


一香のスマホは遺体の指紋で入り、認証データを変えた。

一香のワンルームマンションに、死体のポケットに入っていた鍵で入る。

だらしない女ね。物が床とかに散乱しているじゃないの。

私は綺麗好きなの。片付けないと。


部屋の中には、隆一との2ショットもあった。

でも、この顔は今は私のものなんだから、私との2ショットよね。それは残しておくわ。

それ以外は、下着とか、気持ち悪いからみんな捨てちゃった。

水商売の女みたい。いや、水商売もしていたかもしれない。


隆一の好きな料理Bookと書かれたノートがある。

なんだ、あんな汚れた女でも料理、作れるんだ。

隆一は、玉子焼きは甘い派なんだって、知らなかった。


その時、荷物を預かっているって大家さんがやって来る。

でも、私が一香だって、全く疑っていなかった。

やっぱり、一香でやっていける。


私は、手術前、一香の会社に、退職届を出していた。

そして、一香の顔で面接を受け、別の会社に転職をする。


IT業界は人手不足だから、能力があれば転職はある程度、簡単にできる。

転職理由も、休業期間があるのも、前の会社でパワハラを受けたせいだと説明をする。

よくある話しなのか、医師には通っていないというと、それ以上聞かれることはなかった。


給与振込の銀行口座は再就職先の会社で登録しておこう。

銀行のカードはあったけど、PWを忘れたと言うと、いろいろ聞れて面倒だし。


一香の部屋を解約し、引っ越して、隆一からは消えたようにみせかけた。

整形のために会えない時間もあったし、さすがにすぐ会うとばれるかもしれない。

少し、時間をおいた方がいい。

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