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第8話 VSデス・ケルベロス

【カイの過去】


 ――目の前に炎を纏った巨大な犬型の魔物がいる。そいつは俺と、少し離れた場所でタンカの下敷きになっているシロを見て、ジュルリと舌なめずりをした。


 S級魔獣デスケルベロス。S級の魔物の中でも上位の実力を持つ強力な魔物だ。

 S級最上位クラスの素早さが最大の武器。攻撃力も上位クラス。S級を代表するモンスターの一匹だ。

 残酷な性格の持ち主。獲物をさんざん痛みを加えてなぶり殺す習性を持つ。その残虐性もデスケルベロスが恐れられる理由だ。

 そのデスケルベロスの前に俺の最愛の家族の愛犬シロが身動きが取れない状態で投げ出されている。


「――やめろ」


 ――デスケルベロスが3つの首全てに醜悪な笑みを浮かべる。まるで人間のように悪意に満ちた表情。ゾッとした。


 だってその真下にシロがいる。3年間激しい苦痛を伴う不治の難病に耐えて、今日ようやく新しく見つかった治療法を試すために救急車で大病院に運んでいる最中だった。俺が手術する予定だった。ようやく、シロは苦しみから解き放たれて、また昔みたいに元気な姿を見せてくれるはずだった。幸せな笑顔を見たかった。


 なのに、なのに「なんなんだよこの現実は」現実なのか「これが現実だ」これが? 現実なの? なんで? なんで!? なんで――なんで「ハァ、ハァ」なんで、なんでなんででなんで「ハァ、ハァ」んでなんでなんだよ「なんで、こんな現実が」なんでなん――でなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで――これが現実なんだろう。


 現実はいつも地獄に(「やめろオオオオオオ)解体されるんだろう(オオオオオオオオ!」)


 俺の嘆きは現実の前にはあまりにもか細く無力だった。俺はメスを片手にデス・ケルベロスに立ち向かった。


 片腕一本で弾き飛ばされた。今、俺は死にかけていた。胸板から腹にかけて巨大な爪痕が刻まれていた。デスケルベロスの腕の一振りで横転させられた救急車の底部にもたれかかった態勢。


 地獄絵図がよく見えた。




 バリ、ボリ、グチュ、グチュ、ポキ、ポキキン、グジュグジュ、ブチリ!!



 目と耳と魂に二度と消えない灼熱がこびりつく。








:これさ、天使ちゃんコメント機能生きてるの気づいてないよね?

:攻撃の余波で表示だけ壊れたっぽいな。コメントと配信はしっかりできてるみたいだし

:なに冷静に会話してんだよォ!

:感情的に会話して何が解決するんだよォ!

:正論言うな!

:あーもう滅茶苦茶だよ……

:それよりあのリーマン誰よ。見たことないんだけど?



 ――カイがデスケルベロスと服を脱ぎ散らしながら対峙してる頃、天使と、ついでにカイも壊れていると思い込んでいるDキューブは実はコメント投影表示機能が壊れているだけで他の機能はばっちり生きていた。


 言い換えるとカイの戦いはばっちりコメント付きでワールドレベルの超有名人気白髪美少女Dtuber天使ちゃん――探索者名ザ・スノーホワイト・エンジェルの天使ちゃんねるを通して全世界に配信されていた。天使チャンネルのコメント欄は天使ちゃんの危機に突如として現れた謎のリーマンの話題1色だった。



:なんか格好つけてコート脱いでて草

:かかってこい犬っコロが。転がしてやるよ(キリッ)

:かっけぇ……(笑)

:死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

:嫉妬厨ワラワラで草

:いやTPO弁えろっちゅーねん

:だからあいつは誰なんだよォ!

:待ってろ。今闇ルートで冒険者ギルドにアクセスして調べてる @黄昏のスーパーハカー

:急に笑わせんな。何が闇ルートだ中学生が

:少なくともS級じゃない。S級の顔は全部覚えてるから断言できる

:格好つけの野次馬かよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?

:終わった……天使ちゃん、あああ……

:やばっ、デスケルベロス動く

:予兆なしほぼ瞬間移動攻撃くる

:終わった……



 デスケルベロスが大地を踏みしめる。攻撃の予兆だ。誰もが次に起こる悲劇を予想した。石辺が舞う。


 そして次の瞬間、血飛沫も舞った。


 噛みつき攻撃に当たり前のように短剣でカウンターを決めたカイが短剣を引き抜く。そして短剣を振ってその先に突き刺さったものを地に投げ転がす。


 デスケルベロスの眼球だった。遅れて悲鳴が上がった。



 コメント欄が沸騰した。




:待て! 待て待て待て! 待て待て待て待て待て待て待て待てまって待て待て

:え!? 何が起きたん!? 気が付いたら眼ん玉転がってたんだけど!?

:Haaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaan⁉ Who is him!? Who is him!? @Fuck Man

:それはこっちが知りたいよ! 誰だよあいつ!

:キルドッグ

:ニンジャの動きじゃない今の? あいつニンジャの中身だろ

:天使ちゃん! 助かる! 俺の天使ちゃん! 明日も、明後日も、俺のおかず!

:天使ちゃん呆然顔可愛い

:Kill Dog? @Fuck Man

:キルドッグってなんやねん

:天使ちゃんが助かるなら何でもいい頑張ってくれええええええええええええええええええ!

:けど手負いの魔物は怖ぇぞ。こっからが本番だ。頼むから頼むぜ……




 デス・ケルベロスが明確な怒気を纏う。体からオーラ――体から溢れた魔力の波が立ち上る。魔力は魂から湧き出づるもの。感情で増減する。これからのデスケルベロスの攻撃は威力も速度もさらに増す。どう見ても仕事帰りなラフな格好をしたくたびれたリーマンなど一撃で死ぬ。デス・ケルベロスが再び攻撃モーションを取る。カイに襲い掛かる。


 さっきと同じことが起こった。ケルベロスの右の頭部が両目を失う。けたたましい悲鳴をあげ続ける。あまりのうるささに真ん中の首が右の首を食い千切る。首が一つ、潰れた。


 残る首は2つ。


 明確な大戦果。


 まぐれでは、ない。


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