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第6話 天使ちゃんねる【配信回】

「ハァ、ハァ、なんで、B級ダンジョンにS級モンスターのデス・ケルベロスが……!?」


 ――私は己の不運を呪わずにいられなかった。S級モンスター。それはAランク冒険者の5人パーティが最低でも3組は協力しないと打倒は難しいといわれる凶悪な魔獣だ。S級冒険者ならソロ討伐可能だろうがそんな都合のいい存在が偶々現れてくれるわけがない。現状は絶望的といえた。



:天使ちゃん逃げて! マジ逃げて!

:そいつソロで相手していいモンスターじゃねぇから!

:え? 現実……これ? ドッキリだよね?

:いやぁああああああああああああああああああ死なないでぇええええええええええええええええええ!

:天使ちゃんが! 俺の天使ちゃんが死んじゃう! 神はこの世にいなかった!



 コメント欄に視聴者のコメントがものすごい速度で流れる。みんな、絶望している。当たり前だ。何せ相手はSランクモンスターなのだから。A級冒険者の私が叶う相手ではない。



:いいか。生き延びる方法を教えてやる。他の冒険者を囮にしろ。それが一番生存確率が高い。今すぐ実行するんだ



 ある一人の視聴者がおそらく現実的には最善解と思しきコメントを残す。確かに、私が生き残るだけならそれが一番確立が高い方法だろう。少し開けた空間には、私のほかに5人ほどの冒険者がいる。ガタイのいいアメリカ人だ。そこそこ戦えそうだ。足止めにはなるだろう。


 しかし、論外だ。私は笑ってDキューブに告げる。


「そんなことはできません。この状況で私がやるべきことは一つです」



:やめろ! 

:それただの自殺行為だから! あんな筋肉マシーンより天使ちゃんのが100倍価値あるから!

:こんな時くらいキャラ捨てていいんだって! 偽善者ムーブはやめろ! 生きろ!

:生きて! 天使ちゃん! 私天使ちゃんがいるから明日生きようって思えるの! 生きてよぉお! あんなマッチョ見捨ててさぁ!

:そうだぜ! 絶好の生贄が要るんだからサクリファイスエスケープしちまえよ! そして醜い本性を曝け出しな

:こんなときまでアンチ殺すぞてめぇ!

:は? しらんわ。この偽善者の化けの皮剝ぐまで死なんわ



(――くす。こんな時まで、この世は醜いなぁ。でも、だからこそ、私は正しく生きる。だって、この世に光はあるんだって、みんなに教えたいから)


 コメント欄はもう見ない。何を言われるかなんて想像がつく。そして私の意見が変わらないことも分かってる。だって、みんなを信じてるから。私が正しい行動をすれば、光を見せれば、この世が光に包まれるって、私には分かってるから。


「――みなさん。聞いてください。ここは私に任せて先に逃げてください。私はA級冒険者の中でも上位の実力の持ち主【ザ・スノーホワイト・エンジェル】。多少の足止めならできます。逃げて、助けを呼んできてください。お願いします」


 ただ逃げて、と言っても、人間は善意が邪魔して中々逃げられない。だからこそ、助けを呼んできて、という役割を与えた。人は大義名分があれば何でもできる生物だから。


「……分かった! 逃げるぜ!」

「ヒャッホウ! 逃げようぜケビン! 迷ってたけどそういわれたら仕方ねぇよなぁ!」

「すぐ呼んでくるよ! ひ、ひひ! その間任せたよ!」

「絶対、助け呼んできます!」


 マッチョなアメリカ人たち。ついでに近くにいた女子高生が逃げる。私はニコリと微笑んだ。助かるといいな。



:うわぁああああああああああああああこんなときまで悪癖が出たぁああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

:真正だ……この子は真正だったんだ! キャラじゃなかったのかよ! ヤべぇぞある意味!

:う、嘘だろ? あの状況で自分を犠牲にした? お、俺は、こんな天使になんてことを……! もう、偽善でもなんでもいい! 俺が生贄になったっていい! だからとにかく生きてくれぇえええええええええええええええええええええええええええええ!

:アンチが改心しやがった……!

:天使ちゃんねるの恒例行事

:コメント欄でコントしてる場合じゃないんだけどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお?!

:天使ちゃん、生きて!

:つかもう、コメント見る暇すら――



 ――私は自作した武器エンジェル・ロッドの柄を固く握る。そして魔力を込める。デス・ケルベロスの動きを止め続けるために。


「GURURURURU……」


 デス・ケルベロス――全長4,5メートルを超える巨大犬型モンスター。100メートルを一秒で駆ける俊足がある。鋼鉄の鎧をバターのように噛み砕き、切り裂く、牙と爪がある。Aランクのゴリラ型モンスターの筆頭キングス・コングに匹敵する怪力がある。強くて速い、まさに強敵です。


 そしてその口は火を噴く。


 だからこそ、光の輪で縛り続けている。


「GURURURURU」


「くっ……!」


 光属性上位魔術ライトリング・グラビティ。光の輪を飛ばし、相手を拘束する魔法だ。光の輪が巻き付いた対象は強力な重力に襲われ、まともに身動きが取れなくなる。拘束しかできないが、その分強力な効果を持つ魔法だ。下位モンスターなら圧力でミンチに出来る。


 光の輪は現在デス・ケルベロスの口に巻き付いている。だからブレス攻撃を防げている。あの冒険者たちを逃がすこともできた。だが、長くはもたないだろう。


 エンジェル・ロッドを握る手が今にも弾き飛ばされそうだ。魔力を込める手に、反発力がミチミチと伝わる。そのAランクのゴリラ型ボスモンスター【キングス・コング】に匹敵するパワーでもって、ゴリゴリに抵抗してくる。力の均衡の天秤が徐々に逆転していく。


 そしてついに、拘束は解かれた。


(ボーナスタイムはここまでですか――!)


「GU、GUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」





 ――光の輪が砕けた。


 デス・ケルベロスが拘束から解かれる。怒りを込めた赤い瞳で私を射抜く。


 身が、すくんだ。でも、エンジェル・ロッドを固くに握って、真っ向から対峙する。


 魔物は一匹残らず撲滅すべし。


(そのために、私は戦う――!)


 魔力の限りの抵抗を私は試みる。もうコメント欄など見る暇はない。

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