第4話 ダンジョン潜入ももう惰性だよ
ダンジョン。
それは災害であり恵みである。
モンスターという災害を世界に放つ。そして同時にそのモンスター自身が文明の恵みとなる。だからこそダンジョンの取り扱いは難しい。世界各国で様々な扱いをしている。だが、一つだけ共通している認識がある。
最上位ランクダンジョンは最終的には滅ぼさなければいけない。でなければ人類が滅ぶ。
「ま、Bランク程度のダンジョンなら国が長く大事に管理するんじゃないですかね。何せダンジョンは資源ですから。手放すはずありませんよね。本当国家というものは醜いです。ダンジョンなんてものは全て討滅するに越したことはないのに」
暖色の茶色い石壁が続く実にダンジョンらしいトンネル道を歩きながら俺は宙を浮遊しついてくる配信ボット【Dキューブ】に自論を垂れる。Dキューブは高性能ハイテク機器で高級品だ。最低でも30万円はする。俺も結構無理して買った。そしてその出費に見合う回収は――。
(――っと。いかんいかん。この思考は泥沼だな。もう過ぎたことだ。忘れよう)
「おっ、敵です。あれはCランクモンスターのマッド・ケルベロスですね。しかも2匹。ぶち殺しましょう」
思考を切り替えたい。丁度そう思った時に通路の奥から炎を纏った獣が2匹走ってくる。俺は短剣を構えて無造作にマッド・ケルベロスに近づいていく。そして、2匹の魔獣を見る目に力を込めた。
俺は一瞬で二匹の動きを予測し、そしてその後の自分の対応も決めた。
(――これは、分かれて挟み打ちしてくるな。それだけ。所詮獣の思考だな)
マッド・ケルベロスは予想通り俺の2メートル手前で左右に分かれた。俺は分かれる直前、既に右に体を踏み込んで短剣を突き込んでいた。予想たがわぬ位置にきたマッド・ケルベロスA(仮称)の額に短剣が吸い込まれるように付き込まれる。悲鳴は上がらなかった。マッド・ケルベロスAは脳髄に短剣の切っ先を抉り込まれ一瞬で絶命した。俺は即座に短剣を引き抜き横に振るった。
「ほっ、と」
「キャォ“オ”オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
耳の穴から脳に短剣を突き刺しそのまま壁に叩きつける。マッド・ケルベロスB(仮称)はしばらく生きて啼いていた。でも、すぐ沈黙した。絶命したからだ。俺は短剣を振って血糊を飛ばす。
「マッド・ケルベロスは頭から突っ込んでくる癖があります。その癖頭蓋がもろいです。こんな風にカウンター気味に頭をぶっ刺してやると一撃です。また、直線軌道に強いわりに方向転換が苦手という弱点もあるので、前述の戦法が難しい場合にはひたすら横に回り込んで頭蓋に攻撃を加える戦法が有効なのではと思います。参考になれば幸いです」
俺は淡々とDキューブに向けて解説する。通常ならDキューブの下部に視聴者コメント欄が光学投影される。だが、俺のDキューブの下には何も表示されていない。コメント機能は配信者の意志でOFFにできる。
コメント機能は自分の意志でOFFにしている。
「……じゃ、次行きましょうか。仕事帰りで時間ないのでサクサク進みましょう。金目のものが入った宝箱とか見つかるといいですねー……」
俺は適当に言葉を繋げながら配信を続ける。そろそろ配信やめるべきか。そんな思いを抱きながら。
「……そういえば」
ふと、立ち止まる。そして先ほど接敵したモンスターと子のダンジョンの情報を頭の中で比べ、思わずつぶやいた。
「マッド・ケルベロスってこのダンジョン出現したっけ?」
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