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第1話 糞上司の後腐れない殺し方をたまに真剣に考える

「犬飼ィィィッ! どうしててめぇは言われたことすらちゃんとできねぇんだッ! 幼稚園児でも今どきできんぞそんぐらいッッッ!」


「すいません! すいません!」


 ――俺、犬飼黒介はブラック企業の糞上司にひたすら謝っていた。勿論腹の中では悪いとは思っていない。思っていることなど「地獄に堕ちろ禿課長」一択だ。だが、表には出さない。代わりに論理的な反論を試みる。


「で、ですがここの工程をこうすることによって時間効率は跳ね上がります。というかそうしないと間に合わなかったんです! 見たら分るでしょこの仕事量! 課長のやり方でやったら一日で終わる量じゃないですよ!」


「馬鹿野郎がッ!!!!!! 勝手な判断をしたことが問題だって言ってるんだよ! 今回はたまたま上手くいったかもしれない。でもだ、例えばお前がもっと大きな輪の中で仕事を任されて、それを独断で工程を変化して、その結果失敗して周りに大迷惑がかかったらお前どうすんだ? この場合誰が悪いと思う。ええっ!?」


「それは、例えが極端」


「言えやッッッ!」


「……」


 俺は望まぬ答えを無理やり言わされた。禿げ頭かち割てぇと思いながら


「お、俺です。その場合は、俺が悪いです……!」


「おう。そうだろが。全部テメェが悪いんだよ。ちゃんと言えたじゃねぇか。それがお前の罪だぜ」


「……」


 極論を展開して権力で無理やり首を降らせる。糞上司のいつものパターンだ。そして相手に無理やり非を認めさせてからマウントを取る。だが、まだ終わりじゃない。


 ここから糞上司のオナニーが始まる。


「俺はお前と違って短期的な目で物を見てねぇ。もっと大きな目で物事を見てんだよ。大局観があるからな。お前のメジャーじゃ俺は測れねぇ。人間としての器が違ぇんだよ。俺はお前のためを思って言ってやってんだ。それが分かんねぇのかなぁ……分かんねぇんだろうなぁ……まだ未熟なお前には。全く、やれやれだぜ……」


「ッ!」


 どこまでも上から目線。どこまでも自分が正しい、凄い、偉い。そして俺が未熟で間違っている。その連打。やれやれと肩をすくめる動作。その表情。そして全身からそこはかとなく漂う未熟で幼稚な部下を窘める冷静沈着な俺カッケー感が果てしなく苛つく。反射で手が震える。目の前の糞上司を殴りたくて。


 でも、俺は殴らない。


 なぜなら、夢があるから。


「……はい。俺の判断が間違っていました。申し訳ありませんでした」


 苦汁を飲み込んででも今の仕事に貼りつく。ダンジョン探索には金が要る。広告収入目当てで始めたダンジョン配信は軌道に乗らず金にならなかった。だから、まだこの会社で働く必要がある。幸い、給料だけはそこそこいいから。


 ダンジョン探索一本で稼ぐプロ探索者は相応に敷居が高いのだ。


「おう。それでいいんだよ。最初から分かれや……無駄な時間使わせんなよ。無駄なゴミが。一つ言っとくけどお前がいなくてもこの会社回るから。お前は歯車でさえないんだよ。ただの寄生虫なんだよ。この給料泥棒が。俺みたいにちったぁ会社に貢献してから文句の一つでも言えや」


 糞上司は吐き捨てながら自分の席に去っていった。そしてスマホを弄る自分の業務に戻った。俺は殴り殺したい衝動を堪えながら今日も勝手に効率化を図って自分の仕事をこなした。


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― 新着の感想 ―
こんばんは。 居ますよねぇこういうクズ…現在だと『バブルの負の遺産』を自分達の世代やその下の世代に押し付けた、団塊の世代と団塊ジュニア世代辺りかな? 少し遡って、大した才能もない癖に『金の卵』とか言…
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