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第16話 燃え上がーれーいややっぱ燃え上がるな

 糞上司と縁を切った後。


 コンビニ。


「あっ」


「……コーヒーレギュラーお願いします」


「は、はい。かしこまりました。120円になります」


 現金で払いコーヒーマシンでドリップしたホットコーヒーを窓ガラスにもたれかかって飲みながら俺は遠い空を見上げた。


「……これが新たなる世界か」


 戻れない過去がちょっとだけ恋しい。






 自宅への帰路を俺は歩いている。夜はいい。何せ人が少ない。そして目立たない。いつもより暗く見える夜道を歩きながら俺はため息をついた。


「なんか、ドッと疲れたな。今日くらい家に帰って何もせず休むか……ん?」


 進行方向の先に赤い光が見える。それはどんどん大きくなる。火事だ。俺は走った。


「俺の家の方向だ! まさか、まさか……!


 そのまさかだった。俺の家が燃えていた。 たくさんの思い出の籠った俺の家……!


「シロ! 母さん! 父さん!」


 俺は何の躊躇もなく家に飛び込んだ。そして玄関口の写真を確認。


 火が、燃え写っている。俺は写真に手を伸ばした。


「ぐぅううううううううう!」


 火を素手で握り消す。熱い。でも関係なかった。どうせ怪我は治せる。


 でも、写真は、思い出は、燃えたら治せないんだ。


「……消えた。あとは――」


 俺は家の中を見た。そして絶句した。


 何もかも炎に巻かれてしまっていたから。


 写真が燃え切らずに残っていたのは奇跡だった。


「ッ! 屋根が……!」


 燃え壊れた屋根が倒壊する。俺は慌てて家を出た。


 バチバチバキバキバキバチドガシャアアアアアアアン!


「あ、ああ……」


 ――倒壊し炎の山塊と化した己の家を俺は呆然と眺める。それから、ポケットから取り出した写真を掌の上に広げて見た。


「――シロ。母さん。父さん」


 原型が残らないくらい煤けてくしゃくしゃになって大事な思い出は跡形もなくなっていた。もう見えなかった。


 雫が一粒、写真に落ちた。


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