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まだ幼虫の僕だけど、頼りなくない男になってみせるよ。

 僕は、咲人。(さくと)と読むんだ。

昨年、IT専門学校を卒業して新卒社員として大手企業の総務事務職で働いている。

 専門学校時代の友達は、たいてい営業職についていて、僕よりも給料がいいらしい。

 「俺も東京で転職するって。すぐそうするって。」

 「まあまあ、落ち着けって。お前には無理だっつうの。」

 友達とトークするときは、いつもこんな押し問答をしてるんだ。

これは、まだ一部のやつしか知らない話なんだけど、就活で失敗したんだ。

自分が選んで申し込んだ会社は、5社くらいあったけど全部ダメだった。

そんな時、まみこが(これ、僕の母のことね)

 「咲ちゃんによさそうな会社の募集みつけたわよ。うちから通えるし、事務職よ。

咲ちゃんはしゃべりが苦手だから、営業なんて絶対むりだから、ここを受けてみたら?」

 まみこのすすめで、最後の頼みの綱と思って応募したら、本当にうかったんだ。

そして、2年間の短い独り暮らしが終わりを告げて、自宅通勤の新卒社会人として2年目に

突入してるってわけだ。

 社会人はいいよ。学生より数倍いい。

働いた分の給料を全部自分を喜ばすためにつかっているよ。

メンズエステにも通って自分みがきしているし、給料入ったらすぐ新しい服を買いに行くんだ。

なんでそんなに何着も新しい服がいるのかって?わかんないかな。

 女の子がさ、僕と写真撮りたがるからだよ。

 いつも同じ服装じゃ、まずいんだよ。

 いろんな場所やシチュエーションで、ポーズきめて二人で写真を撮るんだ。

 このまえは、ピアスの穴もあけた。1回失敗したけどね。2回目は慎重にやってる。

最近、疑問におもうことがあるんだ。

20代の女の子の、考えることについて、だんだんわからなくなってきたんだけど。


 この前、つきあってる彼女と、一緒に住もうかって話になって、

一緒に不動産屋に行ったんだけど。


その日は、前夜に降った雨のせいで、うだるような蒸し暑さだった。

雲ひとつない青空のもと、いつものように二人でおしゃれにキメて、スマホ片手に

もう片方は彼女と手をつないで、不動産屋に入ったんだ。

 「どこ行っても暑いね~、いっそ二人で部屋借りて、住んじゃったほうが良くない?」

 「あー、いいねー!そうしよう!」

そんな感じで、彼女って僕の提案にいつも反対したことなんてなかった。

(僕の事、いちばんわかってくれる理解者だね。)

社会人には、今年の春からなったばかりの医療の仕事をしている女の子。

同い年だけど、僕のほうが社会人としては先輩なんだ。でも、えらそうに訓示たれるつもりもないし、

 いっしょにいて、遊んでて楽しいのが一番じゃないかな。


 まあ、そんなこんなで、不動産屋で何部屋か一緒にみてたら、一気に二人で生活するんだっていう

気持ちが高まってきた。

 「お家賃は、こちら2DKで諸経費合わせますと、6万1500円でございます。近くにコンビニ、スーパー

ありますし、おすすめの物件でございます。」

僕たちよりも2,3才上かなっていうくらいの若い女性が、明るい口調で(アニメの声優さんみたいな

口調、といったらわかりやすいかな)早口で説明してくれた。

 「じゃあ、検討してまたご連絡しまっす。」

僕も明るく早口で返した。


 帰りの道すがら、

 「お腹すかない?」

って彼女が言うから、ファミレスに行くことになった。

彼女はナポリタンスパゲッテイを注文し、僕は焼肉丼を注文した。

 食べながら、ふと一緒に暮らした場合の家賃の事が気になった。

 「あのさ、二人で住むんだったら、家賃どうする?」

僕は、頭にうかんだことは、たいていすぐに口にするタイプなんだ。

 彼女は、それを聞いて、突然驚いたような顔になった。

 「え?もちろん咲人が出してくれるんでしょ?」

 「えー!」


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