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勇者帝国の反逆者  作者: 畠山こくご
第四章 悪魔の子マリン=ブラッド
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22. 勇者皇帝の残虐さ

 ルドベキア帝国領北東の渓谷ーーそこにある鬼人(ゴブリン)たちの住処で、天を衝く程の破裂音が響き渡った。

 大量の火薬が爆発した場所には砕け散った岩が散乱し、黒煙が空高く昇って遥か頭上に浮かぶ雲へと同化していく。


 「戦いの狼煙は上がった。皆殺しだ!」


 勇者皇帝ポトスの掛け声で、同行していた10名の勇者たちは一斉に戦闘態勢に入った。

 鬼人(ゴブリン)狩りなら本来は銅勲章以下の勇者のみで十分事足りるが、この戦いの本命は彼らを助けに現れるであろう魔導姫ミスティであるため、金勲章勇者であるパインを筆頭に、銀勲章勇者数名を含めた精鋭部隊による襲撃となっている。

 その中に1人、勇者としての初戦場を経験する少女がいた。


 「大丈夫よ、リリカ。鬼人(ゴブリン)なら倒したことあるから大丈夫……」


 この中で唯一の無勲章である彼女は、そう自分に言い聞かせながらEXカリバーを起動させると、輝かしい実績を持つ先輩勇者たちに続いて敵の群れに突っ込んで行く。

 

 「こいつは何だか弱そうだな! やってやるっ」  

 「見かけで判断しないでっ!」

 「ぐああっ……」


 周囲にいる歴戦の猛者たちの中で一際初々しい彼女は格好の狙いの的となるが、甘く見て襲いかかって来た1人の鬼人を瞬時に返り討ちにした。


 「あの新人、なかなかやるな!」

 「流石はクリヴィア家の御令嬢だ」

 「俺たちも負けてられないぜ!」

 

 リリアの活躍を見た他の勇者たちは一層奮起し、各々が磨き上げた技を披露し始めた。


 「神聖鎌撃(シンセサイズ)!」


 ある者は大鎌型EXカリバーを振るい、四方八方から群がる鬼人たちの首を一纏めに刈った。


 「光刃乱舞(こうじんらんぶ)!」 


 またある者は、ブーメラン型EXカリバーを投げて広範囲の敵を切り裂いた。

 今回の戦いに同行している銀勲章勇者は皆、大鎌やブーメランなどの一度に複数の敵を纏めて倒すことに長けた改造型EXカリバーの使い手である。

 彼らが討ち漏らした敵は、銅勲章の勇者やリリカたちは単体攻撃適正のある剣型EXカリバーで確実に仕留めていった。


 「お前たち、やる気になるのは大いに結構だが余の獲物も少しは残しておけよ?」


 成す術もなく次々に倒されていく鬼人たちを見ながら、皇帝ポトスは高笑いをした。


 「よくも父さんたちを……うおおおおぉっ!」

 

 その時、彼の背後の岩陰に隠れていた鬼人の子どもが鉈を両手に握って奇襲を仕掛けてきた。

 

 「それで隠れていたつもりか?」


 皇帝のすぐ側にいた拳法師範パインは、頭を斬ろうとして飛びかかって来た敵を回し蹴りで迎撃した。


 「お見事だ、パイン。それでこそ余の盾役に相応しい」

 「皇帝の命を狙うとは、子どもの割に肝が座っている。成長すれば脅威となり兼ねない。ここは首を折ってやろう……悪く思うなよ?」

 「待て」


 倒れている鬼人の少年に容赦なくとどめを刺そうとするパインを、皇帝ポトスは制止した。


 「何のつもりだ?」

 

 死を覚悟していた鬼人は、皇帝の行動に疑問を示す。


 「たった今、命が助かるんじゃないかと淡い期待を抱いただろう?それは甘いな。パイン(こいつ)を止めたのは貴様を生かすためではない。余が直々にとどめを刺すためだっ!」


 狂気じみた笑顔を浮かべるポトス。鬼人の少年は恐怖で凍りついた表情になる。

 

 「余の命を狙うような不届者は、自分の手で始末しないと気が収まらねぇんだよ!」


 皇帝は敵の胸を右足で踏み付けると、愛用の細剣(レイピア)型EXカリバーを取り出して起動させ、敵の喉元へと突き付ける。


 「虫ケラの分際で余に刃を向けたこと、地獄で後悔するがいい」


 ポトスは鋭く伸びた光の剣を目の前の敵に容赦なく突き刺そうとする。


 「陛下! 危ないっ」


 その光景を見ていたパインは、空から近づいてくる何かの気配にいち早く気付いて彼を抱きかかえ、その場から素早く退避した。

 すると、直後に彼が立っていた地面に小さな隕石が直撃し、銃で撃ち抜かれたような穴が空いた。


 「何事だ?」


 あまりに一瞬の出来事だったため、皇帝は状況を把握できずパインの顔を見る。

 彼女は瞳を閉じ、呼吸のペースを徐々に早めながら意識を周囲に張り巡らせ始めた。


 「いる! ついに獲物が姿を現したぞ!」


 パインは崖の上に鬼人ではない新たなる敵の気配を察知し、その方向を指差して他の勇者たちに大声で知らせた。


 「バレたのなら潔く姿を見せるまで。この魔導姫ミスティが来たからには、これ以上の犠牲は出させない」


 大きな岩の後ろから姿を現す魔族の救世主。まだ生き残っていた鬼人たちは彼女へと希望の眼差しを向け、歓喜の声を上げる。

 

 「態々あんなド派手な爆発なんて起こして……あなたたちの目当ては最初から私なんでしょう?」

 「ほう、それがわかっていながら出てきたというのか。面白い」


 皇帝ポトスは先程納めた聖剣を再び起動させ、切先をミスティへと向けた。


 「それにしてもその立ち位置、気に食わないな。余を上から見下ろすことを許されているのは神だけだ!直々に討ち取ってやるから降りてくるがいい」

 「あなたが私を? 戦いは部下に任せて自分は弱い子どもを殺そうとしていただけのあなたに、私は倒せないと思うわ。悔しかったらここまで来てみなさい」

 「魔族のような劣等種族が、人類の頂点に立つ余に向かって生意気なっ! 降りてこないなら引きずり下ろすまでだ」


 短気な性格故に、挑発を受けた皇帝は彼女の元へ向かおうと崖の方へ駆け出したが、パインが回り込んで制止した。


 「鬼人たちはほぼ殲滅しました。残った敵の掃討は大鎌を持つチェンスと新人のリリカに任せて、残りの7人に総攻撃させましょう!」


 それを聞いていたミスティは、パインの提案に拍手をする。


 「良い案ね。でも、もっと良い案を思いついたわ」


 そう言って息を吸い込むと、ミスティは渓谷中に響き渡るような大声を発した。

 

 「聞いて! 鬼人のみんなは勇者たちに手を出さないで! その代わり、勇者たちも鬼人には手を出さないで欲しいの! 私の命が欲しいのなら、ここにいる11人全員で私にかかって来なさいっ!」


 それを聞いた鬼人たちは武器を捨て、両手を地面について不戦の姿勢を見せ始めた。


 「どういうつもりだ?まあいい。皆の者、散れえっ!」


 皇帝ポトスの命令で、戦場にいる勇者たちはミスティの居場所を取り囲むような位置へと移動した。


 「かかれっ!」


 ミスティに向かって四方から一斉に崖を駆け上がる勇者たち。

 魔族の救世主ミスティと勇者帝国の精鋭11名による戦いの火蓋が切られた。



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