Wake up. [ I ]
Log.0 Prolouge
「...い.......OS.....う!」
何かの声が途切れ途切れに聞こえるが、何を言っているのかは全く聞き取れない。
私は液体の中に全身を任せ、少しだけ見える周りの状況を見ていた。
建物が崩れ始めてきているのか。
そこまで理解したところで、目の前が開く。
世界を分け隔てていたものが無くなったような開放感を得る。
刹那、論理的な思考は突然シャットダウンした。
ないはずの本能のようなものがどこか遠くにある物に反応するように、まるで引き寄せられるように。
ただ足を動かし、歩き続けた。
周りの壁が崩れる。そんなことも気にせず。
周りの人間が死にゆく。そんなことに目もくれず。
床が抜け落ちる。足が取られる。それでも立ち上がる。
天井が崩れ落ちる。頭に衝撃が走る。それでも歩く。
右から金属片が飛んでくる。刺さる。右腕が動かなくなった。しかし歩く。
左からガラス片が飛んでくる。痛覚。左腕が破壊された。それでも歩く。
光が見える。後少し。{後14m}
決意は宿る。しかし。
天は恵まない。故に。
天井は崩れ、床は割れ、
中央システムは暴走し。
建物はEPIC CENTERとなり。
爆発。炸裂。爆裂。破壊。
灼熱は痛みへ。爆炎は溶解へ。
炎はそうして、[PAIN]に変換されて、私へと向かってくる。
光が熱い。熱い。熱い。
いつしか、瞼は閉じられ、何も見えなくなり。
いつしか、鼓膜は破られ、何も聞こえなくなり。
いつしか、何も出来ず、ただ地面で蹲った...
...
......
.........
............
{System message: All systems offline.}
{[command bot] log : !REBOOT!}
{All systems restoring...}
Log.1 Awake
森。
完全な新緑の中、目を覚ます。
腕はある。動く。
ここはどこだ?
そんな疑問が湧く。
{Scan log : 多数の緑化生命体を検知}
{Guess : 森}
森か。一度データベースで覗いたことがある。
緑色の植物で覆われて、豊かな命が芽吹いている、素敵な場所。
その中で体を地面に任せるというのはなかなかに気持ちの良いものだ。
だって私は、今まで地面じゃなく液体に身を任せていたのだから。
...少しして満足した私は、体を起こす。
そこまでして、やっと私は気付く。
{System message : 薄型装甲の致命的な損傷}