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風探偵――五龍の使い手たち  作者: 安田けいじ
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真王との再会

 そして年が明け、春が来て、神一はJRの天王寺駅に立っていた。改札口から出てくる人並みの中から、源爺と真王の姿を見つけて神一が手を振ると、彼女も神一を見つけ、笑顔で小走りに近づいて来た。


「真王、久しぶりやな。会いたかった」


 一年ぶりに会った彼女は一段と女っぽくなっていた。


「世の中にこんなに人がいたなんて、びっくりや」


「僕も去年、此処で感じた大阪の第一印象は、人の多さだったかな」


 神一は、二人の荷物を取って先に歩き出したが、真王は、キョロキョロと高いビルや、華やかな店並に見とれていて、なかなか足が進まなかった。


 三十分くらいでアパートに着くと、源爺達は、神一の両親に挨拶してから、彼の隣の四号室に入った。神一は荷物の整理を手伝って一段落すると、自分の部屋に戻った。暫くすると、真王がジュースを持って入って来た。


「寂しくなかった?」


 神一がジュースを受け取り、彼女を自分の横に座らせた。


「少しね。でも、あっという間だった。修行に明け暮れていたから」


「修行って、どんな修行をしていたの?」


「今迄の復習みたいなものよ。何かしていないと神ちゃんの顔ばかり浮かんできて悲しくなるから」


「そうか、僕も頑張ったんだぞ。空手部に入って、全国優勝したんだ。空手は、風破の基本形態に出来そうなんだ」


「そうなの。それで、私は此処で寝てもいいの?」


「あかんあかん、高校を卒業するまでは親が許さないと思う。お互い、もう子供じゃないから、けじめをつけないと」

 

 すると、真王は寂しそうな顔をして、神一を見た。


「僕だってそうできたらどんなに嬉しいか。一緒に暮らせば真王のことを抱きたくなってしまう。まだ結婚してないのにそんな生活おかしいだろう」


 真王は、「嬉しい!」と言って神一に抱き着いてきた。神一は、一瞬戸惑ったが、彼女を抱き返した。


「キスだけならいいか」


「キスだけ」


 二人はそっと唇を合わせて、一年間の寂しさを埋めるように長いキスをした。

 幼い頃から、共に苦しい修行を勝ち越えてきた二人には、既に夫婦以上の強い絆で結ばれていたのかも知れない。


 新学期が始まって、真王も空手部に入った。


「あなたが、噂の真王ちゃんね。部長の鳳沙也加です、よろしくね。神一君、あなたが教えてあげて」


「分かりました」


 真王は、神一と沙也加の素振りを見ていて、親しい間柄だと感じとったようで、彼女の嫉妬心に火がついてしまった。


 神一は、不機嫌そうな真王に、空手の突き、蹴りなどの技をひと通り教えてから、防具を付けて、実戦形式でやってみた。風の技で鍛え抜かれた彼女が、そのコツを掴むのに時間はかからなかった。暫くすると、凄まじい蹴りと突きが、神一の身体に炸裂した。


「ようし、こちらも本気で行くぞ!」


 神一が、本気モードとなると、凄まじい戦いが展開され、周りの部員たちは圧倒されて二人の戦いを見守った。

 身体は小さいが、動きは真王の方が早くて、神一が翻弄される形となり、一瞬の隙をついて、真王の蹴りが神一の胴に炸裂し、彼は吹っ飛んでしまった。


「そこまでよ!」


 倒れた神一の上に真王が馬乗りになって、腕を振り上げようとしたのを、沙也加が止めた。


 皆は、その光景を呆気に取られて見ていた。彼らは、入部初日に、全国大会優勝者の神一を倒した、その異常なまでの闘争心の真王を見て、この女の子は一体何者なんだろうと囁き合った。


「真王ちゃん、空手部はあなたを受け入れることは出来ないわ。夫婦喧嘩なら他でやって」 

 沙也加が近づいてきて、耳元でささやいた。


 神一と真王は、その日に退部届を出した。


 家に帰っても、真王は、黙ったまま口をきかなくて、神一の部屋に行くことも無かった。源爺も神一の両親も、二人の変化に気づいていたが、何も言わなかった。


 真王は、沙也加の「夫婦喧嘩なら他でやって」の一言で、神一が自分達の婚約の事を話していて、彼女とは何もなかったのだと分かった時には、後の祭りだった。

 自分の嫉妬心から、皆に迷惑をかけてしまったと、一人、塞ぎ込んでいたのだ。


 暫くすると、神一が、真王の部屋に顔を出した。


「話があるから、あとで僕の部屋に来てくれる」


 五分ほどして、沈んだ顔の真王が神一の部屋にやって来た。


「機嫌を直せよ」


 神一が、真王の顔を覗き込むように言った。


「私、もう学校にいけない」


「明日一緒に、みんなに謝りに行こう。沙也加先輩のお父さんは空手の道場をやっているんだ。僕に、空手を教えてくれた恩人なんだよ」


「そうだったの。でも、綺麗な、沙也加さんと神ちゃんが仲良くしている所を見ていると嫉妬の心を抑えられなかったの。私、変?」


「普通だろ、僕も同じ立場だったら同じことをしたかも、真王を誰にもとられたくないからね。でも、学校で孤立するわけにはいかないから、お互い、多少の事は辛抱しなきゃね」


「うん」と言って、いきなり真王が抱き着いて、神一を押し倒した。


「でも、浮気は許さないから」


 真王が甘え声で神一に迫った。


「了解」


 二人は、激しいキスをして、神一の手が、少し大きくなってきた真王の乳房を服の上から優しく愛撫した。一瞬、真王の手がそれを拒んだが、すぐに受け入れた。そして、神一がスカートに手を入れた瞬間、彼の身体に電撃が走った。


「ウウッ!」神一のいきり立った気持ちが、一瞬で萎えていった。


「それは、まだ駄目。結婚してからよ」


「ごめん、つい……」


 真王は、乱れた服装を直すと、痺れる神一を残して自分の部屋へと戻っていった。


 次の日、二人は空手部に行くと、土下座をして皆に謝った。そして、二人は復帰を許された。

 二人は在学中、神一は空手の世界大会で、真王は全国大会で優勝して、一躍人気者となった。


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