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風探偵――五龍の使い手たち  作者: 安田けいじ
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風探偵①

 雷武は裁判にかけられ死刑を求刑されたが、被害者三人が極悪人であり、その犠牲者遺族から助命の嘆願書が出された事で、死刑は免れ無期懲役となった。しかし、事件が忘れ去られて半年が経った風の里に、その雷武が姿を現した。


「雷武? まさか脱獄して来たのか!?」


 驚いた神一は、雷武の顔をまじまじと見つめた。


「人聞きの悪い事を言うなよ。実はね、これはオフレコなんだが、この力を世界の為に使えと釈放されたんだ。表向きには病死という事になっている。但し、赴任地はニューヨークなんだ。今日は、お別れを言いに来た」


「そうなのか。でも、よかったじゃないか。僕たちの力は世の為に使ってこそ生きると思う。あっちへ行ったら、いい人を見つけて身を固めると良い。家族はいいぞ」


「ああ、そうするよ。真王さんは居ないのか?」


「うん、もうすぐ生まれるんで、大阪の母さんの所に居るんだ」


「そうか、もうすぐ父親だな。おめでとう。また会う事もあるだろう、彼女によろしく言ってくれ。幸せにな」


 雷武は、晴れやかな笑顔を見せて旅立っていった。



 次の日の朝方、神一のスマホに、真王が元気な女の赤ちゃんを産んだと知らせがあり、神一は取る物も取りあえず大阪へと向かった。

 部屋に入ると、元気そうな真王の笑顔が飛び込んで来た。

  

「真王、お疲れ様。よく頑張ったね」


 神一が、ベッドの脇に立って真王の唇に優しいキスをした。


「ありがとう、神ちゃん。元気な女の子よ」


 隣のベッドには、赤ちゃんが小さな手足を動かしていた。


「あはっ、可愛いね。小さい時の真王に似ているよ」


「そうかしら、お母さんの話だと美人になるそうよ」 


「そうか、美人か、真王の子だもんな。だったら、美王みおはどうかな?」


「えっ」


「この子の名前だよ」


「美王、いい名だわ。よかったわね、美王、いい名前を付けてもらって」


 二人が、赤ちゃんの顔をしげしげと見つめて、その子の未来を思い描いている所へ、神一の母が顔を見せた。


「母さんありがとう」


「私にとっても初孫よ、お世話するのが楽しいわ。真王ちゃん、あの事は言ったの?」


「あの事って?」


 神一が、何事かと真王の顔を見た。


「この子の手に触れてみて」


 神一は言われるままに、小指で、赤ちゃんの手に触った。


「僕がパパだよ、宜しくね」


 赤ちゃんの手が神一の小指を握ると、神一の身体にピリピリと電流が走った。


「参ったな。帯電体質か?」


「それだけじゃないのよ。お腹にいる時に気付いたんだけど、この子、電気を自分でコントロールしているみたいなの」


「まさか? ……真王の血を継いだんだな。しかも進化している。

 ……この世界が、まだ、この子の力を必要としているという事なんだろうか?」


 神一は、我が子を見つめながら、その行く末を思うと不憫さが込み上げ、思わずポロリと涙を落した。


「馬鹿ね、何を泣いてんの。時代が必要としているなら、それだけの人間に育てるだけよ。そして、この子が一人の人間として幸せな家庭をつくり、大輪の花を咲かせる人生を送れるようにするのが私達の務めだわ」


 真王が、きりっとして言い切った。


「そうだ、その通りだね。ママには敵わないな、なあ、美王」


 神一が、小指で美王の手に触ると、彼女がニコッと笑ったような気がした。


「じゃあ、仕事に戻るよ。出張で暫く留守にするけど、何かあったら電話して」


 神一が病院を出ると、夏の日差しが降り注いでいて、一気に汗が噴き出して来た。彼は大阪空港から、新しい事件調査の為、八丈島へと向かった。



 八丈島の空港に着いた神一は、小さな旅館に宿を取ってから警察署に顔を出した。そこでは、五十代で恰幅の良い、警視庁の岡田警部が待っていた。


「神一君、遠い所までご苦労様です。警視庁の岡田と申します。早速ですが事件のあらましを説明させてください」


「お願いします」


 岡田警部は、事件の内容がびっしりと書かれた、ホワイトボードを見ながら話し始めた。


「事件が起きたのは一月前で、被害者は、この島で建設会社を経営している田中と言う人物です。海岸に打ち上げられていたのを、観光客が発見しました。遺体は死後数週間ほど経って、かなり腐乱していましたが、解剖の結果、心臓が握りつぶされたように破裂していたんです。胸にそのような外傷もない事から、能力者の仕業ではないかと思われ、貴方に来て頂いた次第です」

 

「なるほど、心で物体を動かす念動力ですね」


「そんなものが本当に存在するのでしょうか? 私には信じられませんが」


「あるでしょう。現に、私達も心で風を動かしています」


 神一が、部屋の中で風を起こして見せると、書類が舞い上がり、ホワイトボードが倒れそうになった。神一は、それを、風御で浮かせて元の位置に戻した。


「わ、分かりました。それくらいにしてください!」


 岡田警部が、乱れた髪を抑えながら叫ぶと、風はピタリと止んだ。岡田警部は、吹き出した汗をハンカチで拭いながら、飛び散った資料を神一と拾い集めた。



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