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風探偵――五龍の使い手たち  作者: 安田けいじ
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百龍雷破①

 それから半年が経ち、神一たち風の使い手六人は、表向きは探偵社の社員だったが、政府からの要請で、公安警察の特務課に所属し、難事件の解決に当たっていた。


 二か月前に、土鬼帝はホステスの風音を気に入って結婚していた。また火王勝も神一の友人の鳳沙也加を見初め、結婚式が終わったばかりである。

 それぞれ、大阪郊外に新居を建てて、親と共に住んでいる。二人共、新婚なのに出張が多いと、文句を言いながらも事件に挑んでいた。



 一方、神一達は風の里に住んでいたが、仕事が忙しくなると交通の便が悪いというので、政府に無理を言って、専用ヘリを買ってもらった。

 ヘリポートを建設し、整備、運転の職員が常時五名体制で勤務しており、人気のなかった風の里も少しだけ騒がしくなって来た。


 神一達の家も増築され、最新設備を揃えたチームのセンター機能を備えていた。そこでは、真王が数名のオペレーターと共に、入ってくる情報や、火王、土鬼からの連絡を受けて的確な指示を出していた。


「神ちゃん、帰ったばかりで悪いんだけど、千葉に行ってもらえないかしら?」 


「千葉だって。昨日、東京から帰ったばっかりだよ、堪忍してくれよ」


「そう、じゃあ私が行ってくるから、留守番お願いね」


「えっ、あかんあかん。今大事な時なのに千葉になんか行かせられないよ。分かった、行きます、行きゃあいいんでしょう!」


 神一が、口を尖らせると、真王がニコッと笑って自分のお腹を撫でた。彼女のお腹には待望の赤ちゃんが宿っていたのだ。


「どれどれ、赤ちゃんのご機嫌はどうかな?」


 神一が、彼女のお腹に耳をつけ、赤ちゃんの鼓動を聞こうとした。


「まだ三か月なんだから聞こえるわけないでしょう」


「いやまて、何か言っている。ママはパパにもっと優しくしてねだって」


「あら、私には、ママのいう事を素直に聞きなさいって聞こえたわ」


 二人の漫才のようなやり取りに、周りのオペレーターが吹き出していた。 


 

 神一は、気を取り直して、千葉の事件の詳細に目を通し始めた。

 その事件は、千葉県の片田舎の海岸線に殺人犯が出没し、三人が犠牲になったというものだった。千葉県警は、数百人の警察官を投入して捜索したが、犯人の手がかりは掴めなかった。ただ、三人の死因は、いずれも感電死だったのである。


「真王、お前の他に、雷撃を使う者がいる可能性はあるかな?」


「そうね、風の使い手なら、修行次第で使えると思うから、天真の残党の中に居てもおかしくは無いわね。もう一つは、機械を使ってる可能性もあるんじゃない?」


「機械? それなら普通の人間にでも出来るな。さっさと終わらせて来よう、明日一番に発つよ」


 次の日の早朝、神一はヘリで関空まで行き、そこから飛行機で羽田に向かい、更に電車で千葉へと入った。千葉駅には県警、警備部の森田係長が出迎えに来ていた。


「特務課の神一さんですね、県警の森田です。早速ですが、現場を見てもらいましょう。車を待たせてあります」


 森田は先に立って車に案内すると、事件現場へと向かった。そこは、九十九里浜の海岸沿いを走る、道路から少し外れた草むらだった。草が黒く焼け焦げ、落雷らしい痕跡がまだ残っていた。


「ここが、第一現場です。第二、第三と、同じ海岸線の数キロの間に事件が起きているのです。遺体は、真っ黒に焦げて判別に時間がかかりました」


「そうですか、三件の事件発生当時の天候は分かりますか?」


「それが、三件とも現場付近が雷雨だったと聞いています」


「単なる落雷事故ではないと決めたのは、どうしてですか?」


「三件とも、事件の夜は、ピンポイントで事件現場の上空にのみ雷雲が発生していたようなんです。それから、日本では雷は同じ所に落ちないと言いますが、犠牲者はすべて数十回の直撃を受けていました。このような現象が、日本で起きるはずがないというのが専門家の意見でした。

 それから、その犠牲者は、三人とも指名手配されていた殺人者で、全員、県外から来ていることが分かったんです」


「……不思議な事件ですね。確かに誰かの意図があるような気もします」


「あ、そうそう、これがその時の写真です。たまたま、沖を通った船から撮ったものです」


 神一は、その写真を森田から受け取ると、驚きの声を上げた。


「こ、これは! 百龍雷破じゃないか!」


「ヒャクリュウ? 何ですそれは?」


「我々、風の使い手の雷の技の奥義で、無数の雷を間断なく落とすことが出来ます。稲妻を龍に見立てて、この名があります」


 神一の言うように、その写真には無数の雷光がナイアガラの滝のように降り注いでいた。


「やはりそうですか。それで、止められそうですか?」


「簡単にはいきません。ともかく雷の技の専門家と相談してみます」


 神一は、その場で写真をスマホで送り、真王に電話を入れた。


「真王か、大変な事になった。ともかく、送った写真を見てくれ」


「分かった。……これって、百龍雷破よね。私が、水神の父と戦った時に使った技よ。眼下にいる敵を無差別に攻撃する危険な技だわ。天真の残党の仕業に間違いないわ」


「やはりそうか。雷の奥義を操る敵となると、真王に来てもらわなければならなくなった。身重の君に戦いは無理だから、僕に雷撃を教えてほしいんだ」


「すぐに、そちらに向かうから。詳しい事はそれからにしましょう」


「頼むから、くれぐれも無理をしないでよ」


「了解!」



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