表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風探偵――五龍の使い手たち  作者: 安田けいじ
3/37

勝つ為の修業①

 夏休みが終わって二学期になった。神一と真王は、風の修行に専念しすぎて、学校の勉強が疎かになっていた。


「最近、授業も上の空みたいで、成績が落ちて来てるけど何かあったの? 長距離の通学も大変だと思うけど、しっかり勉強しないと高校や大学に行けないわよ。授業に集中しなさい」


 先生が、俯く神一と真王に優しく諭すと、二人は勉強にも励むようになった。



 厳しい修行に耐えて瞬く間に一年が過ぎると、神一と真王は、風の実力をメキメキと上げていて、修行は、武器としての風の使い方の段階に入っていた。


「基本の訓練は、ほぼ完成したようだから、今日からは、いよいよ、実戦に即した修行に入っていこう。

 これは、風の力を身に着けた悪人が出た時に、戦い勝つ為の訓練だ」


 源爺の話で、二人は、風の力を使う人間が源爺以外にも居る事を知った。そして、自分達が修行をしているのは、その使い手達と戦う為なんだと朧気ながら気付き始めたのである。

 神一達を訓練する源爺の顔が、以前より厳しくなって、神一達の眼の色も変わった。


「風の武器には、風牙(ふうが、高速の風で全てをぶった切る技)、風の盾(風圧で、攻撃を防御する技)、風破(かざは、掌から一気に風を放ち攻撃する技)、風御(ふうご、風で刀やナイフ、鉄球などを動かす技)、龍の風(竜巻を制御して、全てを吹き飛ばす最強の技)、などの技がある。 

 風の盾は防御だから必須だが、自分の得意な技を身に着けて、磨き上げることが大事だ。全てを習得するには時間が無いかもしれんからな。

 そして、此処が一番肝心なところだ、全ての技は殺傷能力があるという事を忘れるな。お前達も、一つ間違えば命を落とすことになる。心して取り組んでもらいたい、いいな!」


 「命を落とす」と聞いて、二人の心に恐怖心が起きたが、後戻りするわけにはいかなかった。

 二人は、まず、風の盾を修得すると、神一は風破かざはを、真王は風御ふうごを選択した。


 風破は、風を掌に集めて一気に放ち、その衝撃で相手を倒す技で、風の衝撃波のようなものである。強力になると、相手の内臓を破壊してしまうから、実戦では、力のコントロールが必要となってくる。

 神一は、一メートルくらいの大きさの石の前に立つと、懸命に風を放ったが、石の上の埃を飛ばすだけで、石はビクともしなかった。


 一方、真王の風御は、武器となる物体を風に乗せて自在に操り、相手を攻撃する技で、物体を操る念動力に似ている(本来は、刀や手裏剣、鉄球などを使う)。

 彼女は、まず、小さな石を風に乗せて、二十メートル先の空き缶を撃ち抜く訓練に入ったが、思うように石は飛ばなかった。

 

 二人の修行は、相変わらず登下校の時間も惜しんで、山道を駆けながら行われ、夜は学校の勉強、休みの日は朝から晩まで修行に明け暮れて、気が付けば二年という月日が、あっと言う間に経っていた。

 神一は中学二年に、真王は中学一年になっていた。修行を続けながらも、二人は、相変わらず、布団を並べて寝ていて、真王も自分の寝顔を神一に見せる事にも無頓着だった。異性と言うより、兄妹のような気持ちが強かったようだ。


 学校の行き帰りは、風に乗って山の木々をかすめて飛んだ。この頃には、山を抜けるまで十分とかからななかった。

 中学生になるとスカートの制服を着るから、通学時にいつもは先を争う彼女も、神一の前を飛ばなくなった。


「先に行って。私のパンツを見たいの?」


「えっ、あ、そうか、真王もお年頃だもんな」


 神一は照れながら、最近女性らしくなった真王をちらりと見た。



 激しい修行の末に二人は、風破と、風御を修得して、対戦訓練に入った。

 真王は、野球のボールくらいの十数個の石を、自在にコントロールする力を付けていた。真王が操る石が次々と神一を襲うと、神一の放った風破が、的確に打ち砕いていった。彼も、二十メートル以内なら風破で小石を撃ち砕く力を付けていて、例の一メートルの石も、一撃で木っ端微塵に砕けるようになっていたのだ。


 当初、二人は防具を付けて戦ったが、それでも、生傷や打撲痕は絶えなかった。戦闘中はお互いを思いやる事も出来ずに、敵として戦わなければならなかった。手心を加えたり、音を上げそうになると、源爺の叱責が飛んだ。

 限界を超えた訓練は二人の身体も心もボロボロにしていった。


 二人は、その身心を癒すかのように、朝になると無意識に抱き合って寝ていた。不思議と寝ている時は、抱き合っていても感電する事は無かった。神一が目覚めると真王の顔が目の前にあって、甘い髪の香りが神一の心を癒した。

 神一は彼女の腕を解いて、そっと自分の布団に戻って朝を迎えるのだった。時には、真王が神一の布団に居る事もあった。


 心身ともの極限状態にあって、神一と真王が無意識に求めたものは、互いの匂いであり、鼓動であり、温もりだった。それは、生きている実感への渇望か、単なる癒しへの渇望だったのか、それとも、愛だったのか――、二人にも分からなかった。



 そんな最悪の期間を二人の絆で見事に勝ち越え、今は、防具を脱いでも自在に戦えるようになっていた。力のコントロールが出来るようになったのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ