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短編

やっと取れたよ。推しキャラヌードルストッパー

作者: 松本せりか

「やったー、2個目ゲット」

「おめでとうごさいます。良かったですねぇ」

 横にいたゲーセンのお姉さんも一緒に喜んでくれてる。


 私はこの日、久しぶりに行ったゲーセンで奮闘していた。

 ネットでUFOキャッチャーに私が大好きなキャラのヌードルストッパーが入荷したとの情報が入ったからだ。


 頑張ったよ。私も、私のお財布も……。


 一個目はね。比較的……まぁまぁまぁって感じのタイミングで取れたんだけど、2個目が、くっそ難しかった。

 商品は、1個ずつしか置いてない。だから、取れて商品が無くなったら店員さんを呼ぶのだけれども、『何か細工してないかい?』って感じで、難易度が上がっていた。


 え? 店を変えれば良いじゃんって? 良いよね、都会は。

 ええ、私が行ける範囲のゲーセンでこのキャラのヌードルストッパーは、ここしかありませんでしたわさ。


 だから、店の思惑がどうであれこの店で頑張るしかない。

 そう思って、頑張ったさ。大枚を(はた)いたさ。


 必死で頑張っていたら、どんどんお金をつぎ込んでいく私を見かねたのか定員さんが、アドバイスをしてくれだした。

 少し商品をずらしてくれたりして

「これで、ここを押すだけで誰でも取れますから」


 そして冒頭である。


 ここまで苦戦したのはこの店員さんの所為かもしれないのに、私は嬉しくてお礼を言って帰ってきた。



 夕飯がカップ麺ってのも、どうかと思うんだけどね。

 だって早く使ってみたいじゃない……。決して、お金が尽きて家にあるカップ麺でしばらく暮らさなきゃいけなくなったわけじゃない。

 だんじて、違うんだからね。


 1個目は、箱ごと棚に飾って、使うのは2個目。

 その為に2個ゲットしたんだもん。


 私はいそいそとお湯を沸かし、カップ麺に注いだ。

 そして、2個目の箱に入っていた推しキャラくんを出してそっと蓋の上に乗せ……


「あっち―っ。何すんだよ、この野郎。やけどすんじゃねーか」


 目の前で……っていうか、カップ麺の蓋の上でちっちゃい人形……私の推しキャラなんだけど……が、怒ってる。

 …………へ?

「えっと」

「あーもう。これが俺の仕事だっていうんだろ? お前すごい顔して俺を取ろうとしてたもんな」

 

 私は、真っ赤になった。

 恥ずかしい、見られてたの? って、いや見てたんだろうけど、好きな人(?)にそんな事言われたら、恥ずか死んでしまいたくなる。


 そんなことを思っている間にも、彼は私の部屋をきょろきょろ見渡している。

 そして、棚のところで止まった。


「ふ~ん。俺は使い捨て要員なんだな」

「へ?」

 何? 何言ってんの? 大好きな推しキャラを捨てたりするはずないでしょう?

 そう思って、彼の目線の先を見た。


 そこには、大事に置いてある一つ目の推しキャラ。つまり今しゃべっている彼と同じキャラが箱に入ったまま置いてある。

 その箱を見ている彼は、少し悲しそうに見えた。


「そんなこと無い。私、ずっと好きだったんだから、あなたを取るのにどれだけかけたと思っているのよ。捨てたりなんかするものですか」

 私は思わずといった感じで、勢いよく彼に言う。

 彼は私のその様子に驚いたようだったが、

「そ……そうか。そうだよな、お前必死だったもんな」

 そう言って、へへって感じで笑った。


 ああ、もう死んでも良い。この状態で死ぬことを『尊死(とうとし)』と言うのだろうか……。

 推しキャラの笑顔、頂きました。


「あっ。もう良いみたいだぜ。

 お前、時間計ってなかったろ」

「あっ、は……い?」

 彼が私に向かって両手を差し出している。

「自分で降りれねーんだよ。さっさと降ろせよ」


 うっわ~、照れてる顔も頂きました。

 …………鼻血出そう。


 私は、そっと彼をテーブルに降ろした。

「あ……あの、カップラーメンだけど、少し食べる?」

「はぁ? 人形に物食わすとか正気か? お前」

「あ……そうね。そうだよね」

 ハハハ……私は、乾いた笑いをしてしまった。


 私がラーメンを食べている横で、俺はどこにいればいいんだ? とか、大切に扱えよ。とか、色々言っている。

 そういえば、俺様キャラだったね、あなたは。

 

 まぁ、明日になれば普通の人形になっているでしょう。

 妄想だもんね、推しキャラ人形がしゃべって動いてるなんて、どこのファンタジーだ。

 そう思って、私はベッドに、彼にはベッドサイドのミニテーブルの上に、寝床を作ってあげてお互い寝てしまった。






「おいっ。遅刻するんじゃないのか、さっきから目覚まし鳴ってんぞ。いい加減、起きやがれ!」

 そして次の日、私は威勢の良い推しキャラの声で目が覚めるのだっだ。


                                 おしまい

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