チヨ&チワワ
チヨ&チワワ
【星降る夜、空が満点の輝きで今日も私を包み込む。アスタリスクの輝きの如く・・・】チヨの秘密のポエム
チヨは二階建てアパート大和ハイツの大家さんである。アラフォーとは思えない凛とした佇まいに姉御のような面倒見の良さから近所ではチヨさん!チヨさん!と評判だ。
そんなチヨは最近越してきた外国人ウェカピポの面倒を見てやっていたが最近ウェカピポも日本に慣れてきて気にかけてやる必要も減ってきたので少し暇を持て余していた・・・
「暇だねぇ・・・たまには暇を楽しむとするかね」
ハイツ前の掃除を終わらせたチヨは凛とした表情で雲一つない晴天を眺めながら誰にでもなく呟くのだった・・・
すると前方から何やら狼狽した様子でウェカピポが歩いてくる。
「なんだい?情けないツラしてどうしたんだいウェカピポ?トラブルかい?」
「ォオー!チヨさーん!コンニチハー!ウェカピポ同僚にまたまた犬の世話を頼まれて参っちゃったオー!!」
相変わらず威勢のいい男だよ・・・ウェカピポが威勢を失っていない事に安心したチヨは凛とした佇まいで言い放った!
「イヤならイヤと!駄目なら駄目と!ハッキリ言わなきゃだよ!ウェカピポ!!今度から頼まれたらウチはペット禁止だと言ってやんな!それでも文句を言うようなら私のとこへ連れてこい!説教してやるよ!」
ウェカピポは面目ないです面目ないですとペコペコしていた。チヨはウェカピポのこの従順さが好きだ。
そしてふと手提げカゴの中を見ると小型犬が愛くるしくチヨを見上げていた。
「とりあえず・・・今日1日は私が面倒みてやるよ。ウェカピポじゃ面倒見きれないのだろう?」
ウェカピポはアリガトゴザマースアリガトゴザマース!と威勢よく礼を述べるとニコニコして自分の部屋へと消えていった
「じゃあ、行こうか?ミルキィちゃん。」
凛とした佇まいで今まで幾人もの面倒を見てきたチヨにとって小型犬の面倒などキャベツの千切りとたいして変わらない難易度だった。それにチヨは犬好きである。
部屋へ入るとチヨはまずミルキィを風呂場へ連れて行きノミ取りシャンプーで体を洗ってやった。すると凄く気持ちよさそうに目を瞑りジッとしている・・・そしてドライヤーで全身を乾かしてやるとチヨはミルキィを膝に乗せブラッシングしてやるとミルキィはまたしても気持ちよさそうに目を瞑りジッとしていた・・・
この時点でミルキィは完全にチヨに己の生命を捧げたと言っていいだろう。完全にチヨを主人と認めた瞬間である。
わずか30分程の出来事。
これがチヨがチヨたる理由である。
誰もチヨを下に見る事はない。誰もチヨには逆らえない。チヨの凛とした佇まいには人間だろうが動物だろうが太刀打ち出来る物は居ないであろう・・・
そしてチヨは自分を慕う者には全力でサポートするし面倒を見てやる。それが人間だろうが動物だろうが。もし、仮に、チヨに逆らい敵対する存在が現れればチヨはどう対処するのか・・・想像するだけで恐ろしい。
それほどの凛とした佇まいなのであった。
今回も小型犬のミルキィの面倒を全力でみてやった。餌を食べて眠くなってしまったのかミルキィはチヨの膝の上で眠っていた。
一通りミルキィの全身を撫でてやったチヨは就寝前の美肌ケアをしようと手鏡を見て自分が満面の笑みを綻ばせている事に気付いた・・・
自分を慕ってくる小型犬が愛しくてたまらなかった・・・
そんな小型犬の面倒を張り切りすぎてしまった自分が少し可愛いな、とも思った・・・
だがしかしチヨは次の日にはまた、凛とした佇まいで皆を律するだろう・・・
その次の日も・・・
その凛とした佇まいこそがチヨの在り方なのだから・・・
それを失くせばチヨはチヨでなくなるのだから・・・