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ウェカピポVS走る人

ウェカピポVS走る人


ウェカピポは早朝ジョギングをたまにする、夜走るのは怖いから

ウェカピポは適度な運動を心掛けている、肥満になりたくないから

ウェカピポは毎朝キャベツを食す、キャベツが本当に好きだから


ウェカピポは毎日では無いが休日だったり早くに目が覚めた時には早朝ジョギングをしていた。健康にも良いし周りの地理を少しづつ覚えられるしメリットしか無いしね。強いてデメリットを上げるなら横腹がたまに痛くなる事だろうか?


その日もウェカピポは小鳥がさえずり始める時間に目が覚めたので威勢良くジョギングに出る事にした。


「ンーーーー・・・!気持ちの良い朝デスネーー!軽く流しまショー!」


早朝の街並み、スーツを着た人達は皆無で喧騒も無くたまにすれ違うのは自分と同じようにジョギングをする人のみで穏やかな時間が流れている。ウェカピポはこの穏やかな雰囲気の街並みが好きだった。


「ウォーク&ラン!ウォーク&ラン!ウェカピポピポピポウォーク&ラン!」


ウェカピポ気持ちの良い朝にご機嫌である


歩き出したと思うと威勢良く走り出す。

ウェカピポのこの威勢の良さに周りのランナーも一目置いていた。ウェカピポはすれ違う人すれ違う人に威勢よくオハヨウゴザマースの声を掛けるので近所のランナーはだいたいウェカピポの事を知っていた。ウェカピポも周りのランナーと特段喋る訳ではなく挨拶をする程度だがだいたい常連は顔馴染みだと思っていた。


だけどウェカピポ、実は気になる男性ランナーが1人いた。彼は本当に本当にごく稀にしか出会う事は無いのだがウェカピポがオハヨウゴザマースと声を掛けても一度も返事を返してくれた事はなかった。

そもそも彼はウェカピポとすれ違った事さえ気付いていなかったのかもしれない。それほどに彼は何か集中している様に思えた

ウェカピポはただ前一点を見つめイヤホンを両耳に着けて息一つ乱さず走る彼を見て何か並々ならぬ気迫めいたモノを感じた。

たまにしかすれ違わないだけできっと彼は毎日、毎日、何処かで走り続けているのだろう・・・


そんな彼が今日珍しく前方から走ってきたのでウェカピポは威勢良く挨拶!挨拶は礼儀だとチヨさんに教えられたから。


「オハヨウゴザマース!!気持ちい朝ですネー!」


彼は悪気は無いだろう・・・本日もウェカピポなど全く眼中に入っておらず一心不乱に走り去った


「相変わらず集中してますねー・・・オハヨウゴザマースを無視されるのはちょっとムカっしますネーー!もう3回目ヨー!プンプン!」


ウェカピポはだがしかし持ち前の威勢の良さで汗を流して帰路へと着いた。


そしてキャベツとスクランブルエッグとトーストでモーニングを済ませるとだいたいその日1日元気に乗り切れた。ランの後のキャベツとスクランブルエッグは元気に過ごすためのウェカピポジンクスの1つである。



ウェカピポはその日もモチロン威勢良く授業をこなした


「ナイストゥーミートゥー!!皆サン!今日も張り切ってレッスンしましょうネーー!」


「ナイストゥーミートゥートゥーウェカピポ!!」


ウェカピポの威勢の良さは生徒にも伝染するのか生徒達はウェカピポの授業を受けている間だけは声のトーンが1オクターブ上がる。

コレはウェカピポ効果と後に呼ばれる事になるとかならないとか・・・


その日の夜ウェカピポはヌードルにお湯を注ぎボンヤリとテレビを観ていると思いもよらぬ人物の姿を見て愕然とした。


何か夏の音楽フェスの特集なのだろうか?

たまに見かける彼が画面の中に居るではないか!しかも見た事もない様なキラキラと輝くまるで少年の様な笑顔で!


ウェカピポは時間が経つのも忘れテレビに釘付けになった。ロックバンドのボーカリストとしてオーディエンスに語り、歌う姿はとてもキラキラ輝いていて威勢のいいウェカピポに勝るとも劣らない威勢の良さであった。きっとアノ姿こそが彼の本来の姿なのだろう


そんな彼の語りの中で彼が何を思い走っているのか・・・ウェカピポの疑問を解消させる一幕があった。


「俺は、毎日欠かさず走っている。雨の日もどれだけ徹夜した朝の日も必ず走っている。スゴイね!って言ってくれる人も居るんだけどそうじゃないんだよ・・・走るのを止めちゃったら全てが止まってしまう気がして、本当は怖くて怖くてたまらないんだ。だから俺は必ず毎日走る事を宣言するし宣言したからには必ずこの足を止める事はない!俺が走るのを辞める時、それは俺たちが音楽を辞める時だ。わかるか!?つまり俺たちは音楽を一生辞めないって事だぞ!」

そして歌われるRUN of ROCK

どうやら新曲らしい


ウェカピポは彼の画面越しから伝わる彼の熱量にやられたのか一旦落ち着くためにお湯を入れて忘れていたヌードルを啜った。すでに麺はふやけて冷めていた。

兎にも角にも洗面台へと顔を洗いに行った。そして鏡を見て自分が涙を流している事に気付いた・・・


彼があんなに素晴らしいパフォーマーなのにすれ違う時、自分に何もパフォーマンスしてくれなかった事が許せなかった。キラキラ笑顔が見たかった・・・

そんなのは言い訳で、何よりもそんな彼を今まで知らなくて愛想のヨロシクないイヤホン野郎

だと誤解していた自分自身を余りにも許せなかった・・・


しかしウェカピポはいつの日かまた早朝ジョギングで彼に会えば威勢よくオハヨウゴザマスを言うだろう・・・

またいつの日かは威勢良くサインをせがむ日もあるだろう・・・


その威勢の良さがウェカピポの取り柄なのだから・・・

それを失くせばウェカピポはウェカピポでなくなるのだから・・・

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