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人間界 ターゲットの始末

晶「問題っ!この小説が唯一自慢できることは何でしょう?」ネコ「………そんなの誰でもわかってるんじゃないのか?」晶「ま、まぁ………わかった方は感想とかで教えてください」ネコ「やれやれ、絶対に必要ないとはおもうんだが?」

七、

「残念だよ、シノン………俺は嘘をつく悪魔とか天使とかが大嫌いなんだよ」

「え?で、でも………悪魔は嘘をついてなんぼですよ?」

「そういう揚げ足とる奴はもっと嫌いだ…………ちょっとお仕置きしちゃおうかな〜」

 俺の肩を先生が掴む。

「まて、いたいけな魔王に手を出すんじゃない」

「え〜だって、魔王っていかつい顔で粗雑で乱暴ですよ?」

「それはお前の悪友たちだろうが?ほら、この書類の職業欄に『魔王』って書かれてるぞ?」

「あ、本当だ…………でも、ちょっとこの子の性格じゃ考えられませんけど?」

 おどおどしている彼女へと視線を向ける。

「顔は可愛いですし、胸も結構ありそうで……優しそうな性格はまさに女神ってところじゃないですか?これ、魔王じゃなくて絶対に女神だと俺はおもいますけど?」

「じゃ、知り合いに電話してみろ」

 渡された黒電話の番号をまわし……………一番信頼できる相手に電話をかける。

『あ、シグマか?』

「あ〜もしもし?えっと、零時か?今、忙しいか?」

『まぁ、デスクに貼り付け状態だ…………周りの連中がうるさいからな』

「いいじゃねぇか、ハーレムで…………で、ちょっと聞きたいんだが………お前、シノンって言う魔王知っているか?」

 俺の言葉に『シノン………シノン………』と呟いている。

『ああ、最近格上げになった魔王だろう?よくどっかの魔王の娘とつるんでる女の子だったかな?それがどうした?』

「そうか、それならいいんだ…………じゃ、デスクワークがんばれよ」

 受話器から

「あ〜また女性と話してるわね!おしおきよ!」という恐い声が聞こえてきた。まぁ、あれだ………魔王よりも周りのほうが強いという話はまれに聞く。

「こほん、どうやらシノンは魔王だな」

「やっと認めてもらいましたか?」

 よかったぁといわんばかりの視線を俺に送ってくるのだが…………それはさておき、

「何で魔王シノンは人間界になんか来たんだ?魔界には色々とおもちゃに出来る連中が揃ってるだろうに?」

 一般悪魔は魔王のおもちゃと言っていいぐらいに面白おかしく扱われている。俺も悪魔になりたいな〜と思ったこともないではないが、それじゃ俺が他人から逸脱しているということが魔界では普通となってしまうので面白くない。

「え〜と、魔王の受け継ぎ儀式が終わってすぐに先輩と一緒に倉庫を片付けていたら装置が出てきて、それが人間界に行く道具で〜…………それなら盗賊団がやりたいって私がやりたいって言ったらレーミさんが盗賊団を結成してくれたんです」

「人数は?」

「私と先輩だけですよ?」

 高飛車なリーダー、それより地位は確実に上なのだが引っ込み思案で間違いなく役に立たない下っ端……………俺が倒されても一週間後には警察に連行されている姿を容易に想像できたのは俺の想像力がたくましいからではないだろうな。

「あのなぁ、魔王だったらそういうことしたら駄目だろ?」

「え〜と、何でですか?勇者が私を倒しに来るのを待つなんて面倒なんですよ?シグマさんって天使ですけど勇者なんですよね?それなら私、人間界に来た甲斐がありましたよ♪」

 何?この子………意外と行動派か?そして、恐ろしいぐらいの天然だな…………

「はぁ、そんなことはどうでもいい…………」

「ど、どうでもいいんですかぁ〜」

 泣きそうになる。

「あ〜ごめんごめん、とりあえず俺のことをもう怖がってないのならよしとしよう………先生、この二人どうしますか?」

 一人は尻を上に向けている状態でふてくされているし、もう一人は勝手にゲームの話を俺にし始めているし…………

「面倒だな」

「面倒ですよね……………あ〜シノン、お前は魔界に帰る気はないのか?」

「え〜と、いずれ帰りたいと思っています。でも、人間界のほうが楽しいですね?」

 俺はこの子が可哀想になってきた。もう、いろんな意味で…………

 先生もそうおもったのか、シノンへと今度は視線を向けた。

「こほん………シノン……だったかな?魔王が人間界で悪さをしたらどうなるかわかってるか?」

「え?さぁ?反省文ですか?」

 かわいらしく首を傾けるシノンに俺は頭を押さえる。

「ちょっと、そこのあなた………この屈辱的なポーズを早くやめさせなさいよ」

「………ここに来てあんたが口を開いたのかよ…………わかった、全世界の男子を手玉にするような扇情的なポーズがいいのか?」

 これ以上シノン側にいたら確実に脳みそが張る状態になってしまうと確信した俺はレーミ側にまわることにしたのだった。

「そ、そんなポーズはとらせなくていいわ…………それより、私の翼をどうしてくれるのよ!片翼しかないわ!」

「そりゃ、あんたが投降しないからだろ?」

「そ、そうだけど…………」

 まったく、なんで権力者ってのは大体こんな高飛車が多いんだろうか?いや、例外がそこに一人いるのだが…………

「あ〜残念ながら二度と魔王の部屋から出られなくなる」

「う、嘘!?」

「悪魔と違って天使は基本的に嘘はつかないからな…………」

「いやですよ!そんなの!」

「………まぁ、だから魔王は絶対に人間界にいこうとしないからな………」

 涙と鼻水で整った顔を汚くしているシノンがそろそろ可哀想になってきたのだが…………まぁ、俺が悪いわけではない。

「あんた、このこと知っててシノンを唆したのか?」

「唆すのは悪魔の仕事だわ…………こっちに彼女を連れてきてずっとつかまらないようにすれば彼女はとりあえず、あくどい悪魔には騙されないからね………恥ずかしいから早くまともな寝かせ方にしなさいよ」

 レーミなりの優しさなのだろう…………

「先生、で、この二人を魔界に帰すんですか?」

「お前が捕まえてきたんだからお前が好きにするといいさ………いっとくけど、帰すときの手続きはお前がしろよ?」

 私は知らんとばかりに先生は後ろを向いてしまった。

「それなら放っておいて構いませんか?」

「また、悪さするだろう?あ〜あ、捕獲じゃなくて迎撃って命令して置けばよかった」

「どうせする気はなかったんでしょ?」

 魔王を倒しちゃうとちょっとまずいことになる。魔王が統一している地域の悪魔たちはやりたい放題を開始………手のつけられない状況となり、魔王を倒したものがとりあえず魔王とならなくてはいけないので俺がシノンをしとめてしまっていたら魔王になってしまうところだったのだ。

「…………しょうがない」

 俺は黒電話で給料を申請していた相手を待つ。

「………えっと、魔王シノンとその知り合いの………レーミだったか?その二人が何者かに襲われて生まれ変わっちまった………ああ、シノンが統一していた地域の魔王を決めておくようにと他の魔王に通達しておいてくれ、給料?別の誰かが横から掻っ攫っちまったからあきらめる………珍しい?いつもは意地汚く盗んでいくくせにって………まぁ、手を下すのがおそかった俺が悪いから自重してるの!じゃあな!」

 俺は電話を切って後ろの二人組みに口を開く。

「え〜………魔王の娘のレーミと魔王シノンは本日付、黒い羽根を生やした謎の人物にやられて生まれ変わった……そういうことにしておいてくれ」

――――

 結局、今回の仕事で手にはいった給料はタダ………俺のお財布も増えることなく、剣が突き刺さった壁を修理したせいで逆に減ってしまったのだった。


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