人間界 ターゲットの捕捉
シグマ「え〜零時先輩は出番が近いとのことでしたので主役降板……メインが決まるまで補佐の俺が前書き担当となりました………さて、前回から人間界にやってきている俺なので、天界のほうには殆どいません。とりあえず、人間界が終わってから天界に行こうかな〜なんておもってます!それでは!評価感想、よろしくおねがいしまっす!」
五、
「こちら天使さん一号、ターゲットはただいま帰宅………どうぞ」
『こちら保健室の天使、ターゲットの名前は浅川シノン今日付けで天使さん一号と同じ教室に転校してくる悪魔です、どうぞ』
トランシーバーを介しながらの会話で、前者が俺、後者が先生だ。
「両親などの存在はなさそう………おっと、コンディションレッド、危うく発見されそうになりました、どうぞ」
『そろそろ戻ってきてください、どうぞ』
「これから着替えのようですが、どうぞ」
これからがいいところなのに…………
『カムバック、どうぞ』
「………了解」
俺はトランシーバーの電源を切るとさっさとその場を離れたのだった。俺は残念ながらそこまでお馬鹿ではないのでちょっとしたことでミスをするのが大嫌いなのだ。つまり、上司からすぐに戻るようにといわれたら戻るほうである。
――――
「で、時間かかりそう?」
俺は牛乳を飲みながら首をすくめる。
「さぁ、それはちょっとわかりませんね………素人なら楽なんですが………」
「ま、シグマの目の前に現れるのは相当玄人な連中しかいないからね〜へんな期待はしないようにしましょうか」
既に外は真っ暗だ。悪魔が相当強くなる時間帯なのだが、相手が動く時間としてはちょっと遅すぎるとおもわれる。
「申請、通りました?」
「ええ、通ったわよ」
一応、悪さをする天使とか、悪魔とかを捕獲、もしくは迎撃した場合には神とか魔王とかから報酬を得ることが出来る。めちゃくちゃありえないぐらいの値段を吹っかけてもいいのだが、その分、戦闘なんかで人間界に迷惑がかかった場合は一、二回のミスで給料の八割が飛んでいく。失敗の例を挙げるならば人間に怪我を負わせる、人間に見られる、建物を壊す………といったところだろうか?
俺のことを補佐してくれているこの保健室の先生はギャンブラーなところがあるので、物凄い値段をふっかけまくっている。俺が一回でも失敗すればほぼ、給料はゼロとなってしまう………
「で、シグマから見てあの子は何か悪さをする感じに見えた?」
「いえ、そう見えませんでしたけど………」
俺が知っている悪魔の知り合いにあんな顔の連中はいない。すべて世紀末に出てきそうなごつい顔をした不良ばかりだ。
「ま、あんたが骨抜きにされないことを祈るわ」
「骨抜き?残念ながらあの子は俺の好みじゃないんで………その点は大丈夫だとおもいます」
「おっと、ターゲットが動き出したみたいよ?」
保健室の先生…………コードネームは保健室の天使…………がそう呟く。
「………珍しいっすね?玄人なら家の中で静かにしてそうなんっすけど………」
俺は牛乳がまだ残っているカップを机の上に置く。
「ま、あちらの事情なんて色々とあるわ。さて、今回の仕事は確実に相手を捕獲!」
「捕獲?」
迎撃じゃなくて?手加減しないといけないところもあるし、あとくされがなくて迎撃のほうが楽なんだが………
「ええ、奇怪な行動をしているみたいだし、あんたの同級生を早々生まれ変わらせるってのもどうかとおもうからね」
「情に流されてやられるっていうのはよくある話ですよ?」
俺の知り合いがそれで何人か生まれ変わっちまった…………生まれ変わった連中、全員金持ちの子どもとして生まれ変わりやがってぽっちゃりけいになっていたのを見るとああ、生まれながらの勝ち組ってこういう連中なんだな〜とおもってしまった。
「ま、その点はあんたの腕を信じてるわ………一応、神様にこのこと伝えておこうか?」
そういって黒電話を手にしている。あの電話の構造を知りたいのだが何故か天界につながるという違えない事実を所持している。
「いえ、あんなちみっちゃい神様に言ったところでそれがどうしたってところでしょうからね………ああ、その神様の補佐をしているジャスさんに伝えて置いてください………ま、徒労に終わるかもしれませんけどね」
俺はそういって保健室を後にしたのだった。
―――――
「お〜ほっほっほ!!」
「あ、あははははっ…………はぁっ」
ターゲットとされていた女の子の家の近くの空き地に二人の女性がいた。片方は高らかに笑っているのだが、もう片方は困ったようにしか笑っていない。
「………」
俺は固まってその光景を下からしか見ていなかった。なぜなら、相手はまぁ、簡単に言うならゴーレムのようなものの肩に乗っていたからだ。
「ピンクか………まぁ、女子高生らしいな」
「あっ…………」
恥ずかしげに笑っていたほうがあわててスカートを押さえる。
「まったく!みられるってのはわかってるんだからきちんとその対処をしておくものよ!」
高らかに笑っていたほうが片方を叱責。
「す、すみませ〜ん」
「こほん、え〜と、あんた天使よね?」
比較的胸が大きそうなお嬢様気質の悪魔が俺に尋ねてくる。答えてやる義理はないが、なんだ、答えてやるのが人の道だ。
「俺か?俺はシグマだ…………」
俺がそういうとたしか、シノンのほうがあわてているのが目に見えた。
「し、シグマって言ったら…………極悪天使じゃないですか!せ、先輩〜なんでこんなところに降りちゃったんですか〜」
「ええい!うっとおしい!大体、ここに来たのはあんたが装置を押し間違えたからでしょう!」
そんな三流漫才をしている二人組みに俺はため息を吐くしかなった。よかった、今回はあたりを引いたようだ。ああ、当たりって言うのは楽な仕事な。
「…………で、あんたらは何なんだ?」
俺がそう尋ねるとシノンじゃないほうが胸をそらして俺を見下ろしてくる。
「よくぞ聞いてくれたわ!あたしたちは貴族盗賊団よ!あたしが団長のレーミ!」
レーミと自称した団長さんはポーズを決める。
「え、え〜と、私が…………」
「シノンだろ?」
「え?なんで知ってるの?」
決めポーズをとる途中でやめてしまっているのでなんだかおかしいポーズになっている。えーと、具体的に言うなら胸を強調するようなポーズだな。ま、それなりに胸があるからさまにはなっているが…………
「その貴族盗賊団?だったか?お前らに一つ言いたい」
「何?特別に聞いてあげるわ」
「貴族ならいちいち盗賊団を結成すんな………じゃ、俺の言いたいことはいったからばいばい」
俺は銃を取り出して相手の黒い羽根に狙いをつける。
「ひ、ひえ〜撃たれる!」
「あ、安心しなさい!天界と魔界の住人には飛び道具は通用しないわ」
それは事実だ……………というのも、俺もそれをよく知っているわけではないのだが聞いた話では別世界の力が働いているらしい。簡単に言うならブラックホール?見たいなものが天使と悪魔の周りに渦巻いているそうで、それが飛び道具を消してくれているらしい。だから、天使と悪魔は基本は剣での戦いをしているそうだ。ま、俺は違うが………。




