“甦らない記憶伍”
“甦らない記憶伍”
己のやりたいことをやる。けれど、そのやりたいことというのは……人様ざまで大まかに云うなら、組み込まれた〔遺伝子・情報〕に左右されたりも?するのであり……ただそれだけではなく、そこに携わってくる〔リボ核酸〕によってまた導かれる道に違いがあるってことだろうか……;ヒトって複雑過ぎるようで、実は単純なのかもしれない。元々は命の奪い合いをしていた種族であり、そのなかには隠された真実が眠っていたりするのかもしれない。
それらすべてを操作されているとするなら、ね。しあわせって失くしてから気付くものとかよくいうけれど……操作に委ねられたものを失くして気付くのがしあわせって……どういう価値観なのか僕には判らないや。
“ぉい、なに小難しい顔をしている?……お前はもうあのおっさん……俺もおっさんだが;、に関することでなにかを考えるのをやめておけ。せっかく美味い料理があるんだ。食って少し寝ておけ”
“そ、そんなに僕の顔は険しいですか?まだ鳩尾に違和感があるからかもしれないです”
“心配するな、もうやらんって;”
“……そういや、結構俺ら寝てないような気がしてきたな;”
“あー。云われてみれば;どれくらい眠らなくても大丈夫なんだろうね”
“……会話が会話でなくなったときはもうヤバいんじゃないでしょうかねぇ”
“KKさんはなんか平気そうだよね……自己防衛本能が僕らと異種なんだろうか”
確かにここの料理は美味い。尤も。いつも食しているのは、妄想癖人のたまに気紛れで出てくるような手料理と、自室と同じビル内にある安さ重視のものばかりだからなぁ。腹八分目。とはいうけれど、たまのドカ食いも必要なことがあるらしいし……満腹になれば必然と睡魔も襲ってくるだろうからと、僕はたんまり喰うことにした。今は何も考えたくない……。
“そうそう、食え喰え。鍛えてある割りにスレンダーなんだから。もっと、こう、、、”
“ストップ、J氏。それ以上を云うなら、不快な言動にあたります~”
“いいじゃねぇか、これくらいはなぁ?”
い、いや、僕にその言葉を投げかけられても否定しかしないけど?
“確かに以前と違って、発言の不自由さを感じますよねぇ……冗談が冗談として通じなくなったのは一体いつからだったんですかねぇ……”
“単語の定義は人によるから、まぁ、難しいところだよね”
ほどほどにしゃべりながら、どれもこれも美味そうに見える料理に手を伸ばす。品の名前なんて判らないほど見たことの無い盛り付け?で……喰うのが勿体無くも感じる。だからというわけじゃぁないけれど、あまり形の変わっていない、僕でも判るものに手を伸ばす。ちなみに、カツヲの叩き。これ、生姜醤油で食うの好きなんだよね……。血圧やコレステロールなんかを下げてくれるタウリンも入っているし、うん、云うこと無し!!
“カツヲ好きなの?他にも色々並んでいるのにさっきからそれしか喰ってないみたいだけど……”
“ぇえ、まぁ。クセ?なんですかね……1つのものを喰い続ける、みたいな……うまくいえませんが;”
“あーいるよね、なんか判る。あれでしょ?あの、開けたスナック菓子なんかを一旦しまってもまた出してきて結局全部喰わないときがすまない、みたいな。俺もそうだし”
ち、ちょっと違う気もするけれど……そういうのもあるからまぁいいか;
“ま、まぁそんな感じですね”
喰った喰った。唐突だけど。
“僕、少し眠らせていただきます。いつまでここにいるのか判らないので、あと1人か2人……交代でどうですか?”
“流石ゆとり世代……ぁ、良い意味で、だからな!戦いで冷静さは必要。ゆとり万歳!!”
“じゃ、俺も寝るわ”
“……ぇ。Jさん、志願するんすか?……2人別々のほうがいいんじゃ”
“むしろ、逆のほうがまずい気がするわ、Jさんの場合;”
入り口の扉を開けたときには見えなかった部屋の奥には、ただの赤というよりはワインレッド?に近い色の生地に定番である金色の刺繍で彩られたこれまた豪華にみえるソファが並べられていた。僕はその1つに横になる。遠慮も無く;
“……あの、ここで……寝るわけですから;僕は皆さんを信頼しています。おやすみなさい”
“おやすみ~。J氏、もっと椅子離して。誤解を招きます”
“……キミ寝るなら私もご一緒させていただきますかねぇ。茶飲み友達がいないのは少々淋しいですし”
ぇ?!……ま、まぁいいか。
“おやすみなさい、Oさん。僕は寝つきの良いほうです……が、鼾うるさいかもです……”
“大丈夫、心配には及びませんよ。私も昔、寝つきの良いOちゃんと評判でしたから”
……この人……本当に多芸ですよね……。
“ぉい、俺には挨拶なしかよ”
はいはい、
“おやすみなさい、”
“こういうとき、6人って結構良い人数だよな、3,3にもなれるし2,2,2もいけるし……”
“……KKさんはひとり黙々って感じだけどね;”
……どうでもいいが、さっきからこの高級ソファだから落ち着かないのではなく……妙な……けっしてJさんではない視線を感じて眠れそうもなさ気なんだ……;




