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“再び陸”

“再び陸”


“くれるのかね……”

“ぇ、その前に、本物か?でしょ……”

今までの何もかもが、そう、走り疲れだとか息切れだとか……否、息切れは別の……、息を呑みこんだままという意味で途切れたりはあるかも。それらが吹っ飛ぶほどの、そんな光景が拡がっていた。ただ、Jさんが立ち上がるのは無理そう。皆の足の隙間からではよく見えないらしいというのと、それ以前に肩で呼吸をしながら前を向く気力さえないようだ。先に行ってくれと云わんばかりに、ただただ手の甲を見せたまま手首だけを動かしている;

崩壊した僕らの後ろ、通路のあるところで止まっていた。何故か犬はそこではなく奇妙なところにマーキングをしていた。僕には何も見えないところなんだが……?確か、草1本が生えてさえいればそこに“する”というのは聞いたことがあるけれど……何もないのに足を上げて?ぁ、アイツはオスで……オスだけど何もないところでは足は上げない。……あそこに何かあるのだろうか?そういえばたいして気にも留めていなかったけれど、所々おかしなところで止まってマーキングしていたかもしれない。だが、僕は記憶力が優秀なほうではなく……あまり憶えていない。それでも何箇所かは憶えているわけで。そうだ、Nさんにスプレーかけてもらえばなにか判るのかもしれない。後で相談してみよう。それを憶えていたら、の話。

そうこうしているうちに、皆が躊躇いも無く部屋に吸い込まれてゆくように入っていったため残されたのはJさんと犬と僕。

部屋の中に何が見えるって?

……壁一面に宇宙空間が、おそらく投影されているのだと思う。だだっ広い部屋の真ん中から広範囲にわたって、札束がこれ見よがしに積んであり、それだと判るように照らされてもいる。ここは、造幣局か;……と思えるほどな量の札束というより、なにあれ、ホント、僕の家より広いくらいの広範囲に詰まれた札束の山。山……氷山よりもうかなりあるのよ。

“意味が判らない”

“ここに誘導されて?持ち逃げしても出られないだろ;”

“ぇ?それ犯罪ですし、い、いや……もうすでに不法侵入やら……ぃいや、考えるのはやめだわ;”

“誘導されたのならお持ち帰りでいいんじゃないの?”

“うん、大丈夫じゃね?万が一のときは、ご都合主義のG取引(今で云うところの司法取引のようなもの)があるさ、な?”

“は、ぃ……で、ですね……ははは”

いや、流石にまずいでしょ、お金は……そ、そうじゃないか;話がまたややこしくなってきた。僕の事を……過去の、そうG取引のことはココにいる皆がある程度は知っている……尤も、普段は忘れてしまっているほどのようなことだけれど。特にJさんは……取引が巧かったりするんだ、これが;

“見たからってどうかなるんすかね……つか、J氏、どうよ?”

“ゼーゼーしてます……暫くは動けないかも”

“じゃぁこれからどうするの、ねぇ、これあればもう仕事しないですむから、ねぇ”

……ですね、KKさん!けれど別の意味で……お勤め……ごくろうさまです。

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