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“誰の肆”

“誰の肆”


妙に静まり返ったそのロビーは。

見えないものへの恐怖の度合いは、無いだろうものが見えないのと有るものが見えないというその違いがある。厄介だが;それが屋敷の奥への進入を阻むようで。

“静か過ぎますねぇ”

“なに、かえって気楽になれる”

“前向きだな……Nさん。羨ましいわ”

“静か過ぎて叫びたい心境に駆られます……いいですか?”

“いや、ドーベルマン来たら困るからヤメテKKさん”

“ぁ。僕、犬は得意です”

“な、なにその、ブリーダー発言”

“前から、どんな犬や猫にでも懐かれやすい傾向のような……尤も好きか嫌いかと訊かれれば苦手ではありますが”

“……へぇ、今は犬飼ってないの?”

“ぇえ、この先もですが”

もう2度とあんな思いはしたくない。僕の犬はアイツだけにしたい。

“よく、他の犬の匂いがすると吠えられると聞いたことがあるけれど、それってどうなの?”

“家に犬が居たときも、目だってそんなことはなかったですね”

“前世、犬だったとか”

“かもしれないです……鼻も結構利くんです”

緊張感有り過ぎもどうかと思うけれど、無さ過ぎも;このまま還れそうな気がしてきたその時。

別の扉がまた開いたような……音は聞こえなかったけれど、どこからか冷たい風というよりは空気が漏れてきた気がした。皆で辺りを見回すが、特に変わったところもなかったが丁度良い話の途切れに奥に進むこととなった。

“しかし広いわ、誰も居ないわ……ヘビかネズミでも出てくるんじゃね?”

“さっきから気になっていたんですが、幽霊屋敷じゃぁないですよね?人、住んでいるんですよね?”

“ぇ、犬は大丈夫だけど幽霊はダメなの?”

“あれって、ただの素粒子の塊じゃないの?”

“素粒子って……マジで?あれって物質だったの?人の想いつか念みたいなのって、ぇ?物質?”

“ん?じゃなんだと思っていたの?”

な、なに、この人たちの今日のこれまでの会話。ついてゆけない;素粒子ってナニ;

気付いてみれば。会えば現場なわけで、仕事の話以外まともに話したことなかった人たちだ……尤も僕は普段から話す相手などほぼ;いないわけで。僕の知らないことばかり云われて、ちょっと今日はどれだけ利口になったことか;

“……深く考えたことなかったつか、気体とはなんかこう違うっつう意味でさ、ん~;次元の違いつか?上手く云えんわ……んじゃ視える人とそうでない人の差って?”

“なんでここに来てまで暗黒物質の話になる;”

“幻覚も実は視える人とそうでない人とでは脳に影響の有るDNAレベルの損傷……いや、構造改革みたいな違いがとか思うか、、なぁ……実際、見えないというより、視えていないものの方が多いですよ、たぶん;たぶんですけど”

“それって……本人の見たくないかどうかの関係つか都合じゃねぇの?”

“それも一部あると思う……そこ!!”

突然、NTさんが僕の右脇を人差し指でさした。皆がその方向に目を向ける。

“そこに何か居てもまったく不思議じゃないと思いますね、俺らには見えないだけで;”

なに、この、急に根拠の無い恐怖感が根拠の有る推論に変わっていく……僕の浮気者!みたいな感覚って。確かに僕も見たくないものはある;たとえば……待って;僕は得体の知れない幽霊はみたくない!!

“お前らな;先に進むぞ、俺は”

Jさん。唯一、というわけでもないけれど割と難しいと云われているS級の資格保持者であり、僕らに視えないモノまで操れる……操れるという表現は云いすぎか;ただ誘導できるという優れ者であり、曲者でもある。因みに僕はB級で、C級というのはなくSとBの間にA級というものがある。

ぇっと、つまり幽霊と思っているものはホロに近いのか?ヤメテ;もう僕の今日のメモリが満タンです;


そして僕らがあっさり捕まったのは……書くまでもありませんでした;

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