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“誰の参”

“誰の参”


“鳴らないんだけど……音がしないだけ?”

NTさんは何度かボタンを押してみたようだが、その音は僕らにも聞こえなかった。

“俺ら庶民とは違って鳴らないタイプのなんじゃね”

“カメラには映ってい……いや、点灯していない?ようだな”

仕方なく、扉をノックしようとNTさんが手を伸ばしたそのとき。

ギギギギギ……っ

またも勝手に開けられた模様。ちょ、オカルト?やめて;それ以前に内開きで……両扉の開く家を生で見たのは初めてかも。

“危ないな……もし俺が転んだらどうすんだよ”

“高そうだしな、扉;触られたくなかったんじゃないかな”

相変わらずなKKさんはそう云うと、ズボンのポケットから除菌ウェットを出した。無論、事前に触れずにすむよう、ビニールの簡易手袋も、その上には新しい白袋もはめて;

ところで今さらですが。皆、上着を脱げば見事なまでの制服着用です。もろ制服だと見えなければOK!!らしく、一見すると激ダサ?ではありますが、ある意味職業病なんですね、たぶん。落ち着きますし、どこへでも行けます。すでに恥じらいなどありません;

“手、蒸れたりして汗疹とかできないんっすか?”

“まったく問題ないね。私からしたら、触るほうが危険”

“それにしても、白袋がとても綺麗で関心するな。皆も見習えよ”

“……新しいのくださいよ;立て看板やらカラーコーンやら動かすとスグ汚れるんですから”

“汚れるなんて甘いです;2重にしても手袋切れますし”

“俺にいうな;内勤に云えよ”

“ぁの、扉開いているんで入らないと。閉まってからじゃ遅いし”

一度始まれば、なんだかんだ職務での様ざまな話が止まらなくなるのはいつものこと。還れなくなると僕は困るので;皆を急き立てるようにこちを挟んだ。

“ぁ、おお、そうだったな”

“慎重に”

“挨拶もしたほうがよろしいかと……”

“ごめんください~どなたかいらっしゃいませんか?”

目の前には、見たことも無いような玄関マット。これが?泥落とし用のマットなの?有りえない。

それは見事な毛並みで……もとい、シンプルなデザインな割りに毛足は程よい長さで、一方向に整えられたそれは、僕の家の絨毯より高級で触り心地の良さそうな……ぉっと、ウチは畳しかないんでした;玄関マットなんかないし。

踏めない;

“踏み絵かよ;”

“これ、入るなっていう嫌がらせじゃね?踏めねぇよな、こんな高級そうなの”

“気にするな、俺らがメンテナンスするわけじゃない”

Jさんはそういってズカズカ入り込んでいった。が、マットに気をとられ挨拶はしていない?やはり高級なマットを前に動揺を隠し切れないようだった。

そんなJさんに続き、皆はそーっと踏みだし、更に少しでも踏まずにすむよう歩幅を大きく……って;どんな罰ゲームなの?という感ありまくりなまま奥へ進んだ。

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