“誰の弐”
“誰の弐”
もう引き返せないところまで来たんだな……。なんて、それは泳げない僕だけ?で、橋を下げるための装置を探すには屋敷内へ潜入……もとい、突入あるのみ!!と、気持ちだけは意気込んでいるようにみえるだろうけれど、実際は普通に屋敷に招かれているだけかもしれない。それで、愚痴をグチグチ聞かされるだけなのかもしれない。
そういや、犬も泳げなかったな……。妄想癖人が云ってたっけ。泳げるかどうか川にいれてみたけど、流されているだけだった、と。誰に似たのか;
“玄関も自動で開くんですかね?”
“そんなことより、なにこの庭園”
“良い眺めですねぇ、ちょっとお茶でもほしいところです”
“茶菓子とね”
“そんな悠長なことを云っている場合ですか;もう、玄関は目の前なのに”
“いや、でもこれいいわ……シンメトリーですね。とても綺麗に整頓されている”
“整頓って;箱庭じゃないんだから”
“書物で見たことがあるな、遠い昔に沈んだとされているらしく〔東世〕つって、とても綺麗な桜華とかいう樹木があるそうだ。そこの雰囲気に似ているな、この庭”
“物知りっすね……Jさん”
“沈んだ?まさか、沈められたとかではないんですよね?”
“なに?興味あるのか?今度その書物みせてやるから家に来いよ”
“……そ、そうですね、ここから無事に還ることができたら、”
“なんで沈んだんですかね、俺も気になるわ”
“大方、後先考えずに発達しすぎた文明に潰されたんだろうな”
“そうじゃなくっ;俺はJさん宅に呼んでくれないんですか”
“あれ、玄関じゃね?”
長無駄話のおかげか、迷いながらもなんだかんだ着いたようだ。
“お。まずは呼び鈴鳴らしてみるか”
“みんな用意はいいか”
皆が一斉にJさんに背を向け、来た道のほうへ走り出そうと構えた。
“ぉい、ピンポンダッシュじゃないんだから”
“違いますって;逃げる準備です”
“お前が押せ”
Jさんのご指名;で、NTさんが押す羽目になった。何故か彼は断るということをしない性格というか性分のようだ。辞めてから音沙汰もなかった彼が、一体、今回は何故あのマスターの店に来たのか不思議でしょうがない。後で訊いてみよう、本人に。
何か中途半端に遣り残したことがあるのかもしれない。




