“無一致団結弐”
“無一致団結弐”
暗く短い廊下を抜けると……そこは……部屋があると、そこにマスターがいると思っていた;声の感じからしてそんなに遠くではないと踏んでいたのに。
見当たらない。
もう少し……奥まで……と思い、突き当たるまで壁伝いに真っ直ぐすすむ。
あ。
……あれ;扉らしきものがない、壁しかない……。見落とすような距離でもない。視界はある程度利く。まさか、天井や床になにかあるとか?昔の忍びじゃあるまいし……い、いや、有り得るかもしれない。そうは考えたが、一旦、皆のところへ戻ることにした。
“マスターが見当たらないどころか、マスターの居そうな部屋への扉がないんです”
相変わらずKKさんの切迫した声が壊れた再生機のように、ぁあ、まるで経文のように聞こえてきた;
“……そうか。たぶん大丈夫だ、なんらかのシステムを作動させたのかもしれない”
“……昔の忍びの末裔だったりするんですか;”……ぇ、させた?
“末裔ではない……ないが、まぁあれだ”
KKさんは相変わらず淡々と繰り返している。喉、渇かないのかな。いらなきゃ僕が飲めばいいかとシンク下の扉を開ける。案の定除菌剤の容器を見つけることが出来た。シンク全体を一旦除菌し、コップを洗い除菌後に軽くすすぎ水をくんだ。ぇ?布巾は使わないのかって?彼らには自宅のもの以外おそらくNGなのです。
“KKさん、”
“もう点く?”
“水、飲みますか?結構、乾燥してきたようだから、ぁ、手も除菌洗いましたし、コップも”
“ぁあ、ありがとう、蛇口なんかも除菌してくれた?本当は専用の水が良いんだけど”
“専用のものは見当たらなかったのですが、他は大丈夫です”
“だよね、いつも専用に置いてもらっているのに切らしたままだったんだ。ありがとう、本当に?”
そう云って僕から受取った。一応。
“本当に。うちも同居人が割りとうるさくて慣れていますから”
僕はそう応え、彼の目の前で除菌ウェットを取り出しシンク下に非常用に?おいてあった棒を丁重に磨き;彼に渡した。ここを見せることに意味があるのさ。
“その同居人さんとは良い友人になれそうだ、良ければ今度、一緒に暮らそうと云っておいて”
伝えるだけは伝えますが……極端な人だな;
“ええ。伝えますが、それJさんの指示があるまで点けないでください”
足元で僕のズボンの裾が引っ張られ、何かと思いしゃがみこんだ。
“お前、見えないところで苦労人なんだな”
Nさんが小声で僕の耳元に囁いてきた。あれからずっと傍にいるようで、足元確保以外は、ほぼ何もできなかったらしく;とはいえ、なんかお似合いに見えて?
“いえ、今のNさんほどでは;”
突然、ドアをノックするような音が聞こえてきた。風?いや、誰かが故意に叩いている音だ。
“俺が出る”
Jさんが扉の前まで行き、扉は開けずに見知らぬ声の主に語りかけた。
“どなた?”
“私はダイの遣いの者でスーと申します。ここを開けて中へいれていただけませんか?”
Jさんは、暗がりながらも皆へ目配せをする。皆は無言のままに頷いた。それを確認した彼は扉を開けた。
空世なら扉から入るなんて動作さえいらないだろうになんでさ;
“ありがとうございます”




