“AB日”
“AB日”
無事に帰宅すること、明け方の4時を回っていた。
涙でびしょぬれになった、水も滴るいいなんとやら、2名。御手洗くんの厚意である、びしょぬれ乾燥を丁重にお断りをし何事もなく、帰還できたのはある意味淋しいことかもしれない?仕事帰りに上司とそこらで一杯ひっかけながらの無駄長話、こういうのは意外と必要だと思うんだ、個人的にね。けれど、ただの腹の探りあいになるのは疲れるだけかもしれない。曲者上司は意外とキレものだし、御手洗くんは未だ謎過ぎるし、僕は平凡。そしてこの今の普通世のおかれている状況!良い子は早く寝るのが得策。
“もう4時か、早いな。残業代は出るから”
そんなことより早く眠りたいのは、張っていた気が緩んだため?どっと疲れが出たせいだろうか。上司はボタンを押して僕の家の……家というかアパートだね。過去の面影をすべて背負ったかのような建物の前に車を止めた。
“今日を休みにしてもらえたのが助かります。今すぐにでも眠りたいや;”
“いいぞ、ここで寝ても”
ご遠慮します、と車を素早く降りた。無論、送っていただいたお礼はキッチリ述べて。
“ぉい”
ドアを閉める前に呼び止められたが、ほぼ同時に僕は多少の勢いをつけドアから手を放してしまっていたため窓が開けられた。身体を窓枠に伸ばし、そこから何かを投げられたので僕はツイ;得体の知れないものかもと思いつつも反射的にそれを上手に受取った。
“ナイス。やるわ、それ”
……石?
“ぁ、ちょ、これは?”
“拾ったものだし、腐るほどあったし1つくらい構わんだろ”
ぇ?!!!!!!!まさか。そう、あの場にあった、ダイヤの原石。なんで僕に;共犯という意味が込められているのだろうか?……法律は詳しくないから判んないや;判らないけれど、それは僕らだけで……たぶん地世である御手洗くんは気付いているのだろう;確かに領域としては普通世だけれど。
僕が唖然呆然としている間に、既に音も立てずに上司はその場を去っていた。
ぇえ、音しないんですアレ。すごい進化です。聞こえないと危ないかなと思うけれど、五官に何かある人は優先的に任意で電子標識器具のようなものを……埋め込むことが出来る。あくまでも任意でだが、直接視覚や聴覚などに認識させることが可能らしく事故もない。それが普通世の医療。らしぃが、埋め込むとなると至極当然、空世との合同術?となるわけだ。ただの手術ならば単体で可能だけれど、それもケースバイケース。細かく云えば、利権とか様ざまにあるんだろうね……経済の?裏の裏のような。
行く前はここに座っていた犬。玄関の扉の前に目をやり辺りを見回してみるが、未だどこにも視えない。最近こういうことが多いな。何かあるハズだ。たぶん。
僕は、流石に2人とももう寝ているであろうと予測をし静かに扉を開ける。
……。
お、重い;
わずかに開いた隙間から中を覗く……。
“おかえり~なにやってんの、寒いから早く入りなさい”
!!!お前こそ何やってんだよ、こんな時間に;そして僕はどうやら置いてイカレタようだ。
重い扉の内側で犬は眠っていた;つか、なんでお前は寝ているんだよ;
“この時間は、私だけのもの。早く寝て。”




