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“忘却の輪参”

“忘却の輪参”


“全然関係なくはない話なんだけどさ”

“なに?”

“俺ら、この記憶いつまであるんかね?”

“あー。それは俺も考えていた;だってさ、初めから金振り込む云々の記憶が吹っ飛んでしまえば何もないことにできるしな”

“だろ!!しかも、御手洗(みたらし)くんの云うようにだぜ?実際の時間が1時間やそこらならおおよそ20時間ほどすっ飛んでもおかしくないじゃん?”

云われてみれば……そうだ。金は要らないし考えもしなかった;ただ、僕が忘れたいのは他人からしたらどうでもいい体裁だけ。……恥さらしな自分;誰かは憶えていても、せめて自分の記憶さえなくなれば……なんてさ。

“お金、振り込まれないって事?私なら記憶は確かですから。メモもしました、ほら、ここ”

KKさんが手帳のようなものを差し出す。こういう場合は振込み主であるおじさまに一筆記してもらうほうがいいんじゃ?とは思うけれど……それも難しいんだろうな、彼の場合。SIBにもそういうところがある。ちなみに、僕らは資格証はあっても警察手帳のようなものはない。その証も失くせば実費だし、持ち歩かなければならないのなら……失くしやすいカード1枚にしておかず手帳にしてくれてもいいのにと思ったりする。思ったりしたら、いつの間にかシステム側の管理となった。いつでも取り出せる、そう、BM(ベーシックマネー)カードのような扱いとなったのである。あ。特に僕がそう考えたからなどではなく、たまたま時期が重なったときに資格を有したというだけの話です。もう少しだけシステムの話をすると、自分が突然誰も居ないところで何らかの事情で倒れたりしても緊急車両を呼ぶ必要もなく手配される仕組み。それは、自宅であろうと人里離れた山の中であろうと。……助かるか……そうでないか……は、また別問題ではあるけれど;何故そういうシステムがとられるようになったかを話せば長くなるけれど、簡単にいうなら何度訓練をうけたところでそれを生業にしていない場合、イザというときに咄嗟に行動を取れるヒトのほうが“稀”だかららしい。それと、僕はまだであったことがないけれど、ヒトのヒトへの無関心さなどからがあるらしい。全部、らしい、の話。

なんだかんだ、僕らはそういう意味でも監視下にあるわけで。それでも何故か減らない犯罪があり……リューさんがアノ研究をしていたのも判る気がする。

“KKさん。たぶん、それも記憶ごと消されますね;”

“わ、私は触らせない、断じて”

“う~~ん、触らないというとややこしいけれど、初めからその手帳の存在がなかったことになるかもしれない……政府(うえ)ならやるだろうな、と思う”

“ところでさ。魂だけでフラつくのってどんな気分なんだろうな?”

“な。中身何もみえなかったもんなぁ……ただ、手足を動かしたい衝動に駆られればいつでも肉体を造ればいいのだろうし;馴染むかどうかは知らんが”

“身体の重さなんて感じないんだろうな……俺なんかからしたらある意味、羨ましいかもしれん”

“ぇえっ?Jさんその鍛えてある身体で重さとか感じるの?そういうもんなの?”

“……腹、出ているからじゃね?これ、どうみても、ビール腹じゃないの?”

そう云ったNさんが、Jさんの腹部の出っ張ったあたりを軽くたたく。

PON!

なんて、良い音がするはずもなく;

“お、俺で遊ぶなや;”

“つ、つい;たたきたくなるほどに、素晴らしい出具合ですよね!”

“KKさんや、お前なんかは身体の重みなんて感じないだろ?”

い、今、忘れたい話しに繋がるであろうそこに触れてほしくなかった……僕としてはね;KKさんは当分話しに加わって応えることは難しそう。どうやら目に入った草の生えている並びが気に入らないようで、そっちの世界の住人になったようだ;案の定、

“御手洗くん、すまないがね。手袋とスコップ、これくらいの、小さいのでいいんだ……ない?”

『ご用意いたします』

……ぁあ。この人、絶対僕が〔触るなっ〕て云ったことを根に持っているに違いない;

“ぇえ、感じないですね;考えたこともなかった……尤も、僕は泳げないのでそれが感じる云々に関係しているかどうかまでは……;”

“あー、それ、まじなの?今度、俺が教えてあげるよからさ、海、行こうぜ!!”

どんな話にでもノリノリになれるNさんにしぼって喰いついてくれそうな返し方をしてみた。

“う、海ですか……ぇえ、そ、そのうち……”

“待て。俺も行く”

“な?!なんで、俺らの上司であるJさんと一緒に、しかも休日に行かにゃならないんです;今日は仕方なく居るだけですから、そこのところ忘れないでくださいよ、もう……。あなたは嫁さんと、あ。”

“あー。皆、黙って忘れたフリしていたのにNTさんってば。……俺は愉しいからいいけど”

“……あれ、もう別れたんですか、Jさん……何がまずかったんです?”

“騙されたっぽぃですよ、Oさん。あの時、話の早さの流れに適当に流して埋もれるかのように云ってましたけど;”

“見抜けなかったのがJさんの良いところでもあるのですから、気にしなくても良いんじゃぁないですかねぇ”

“なるほど……ものは捉えようだな。よし、今日から婚活でもするかな”

“ぇえっ?この、普通世が、いや;世界が滅亡するかもしれないってときに?”

“……その腹で?”

“滅亡は大袈裟だろ……つぅか、滅亡するなら尚更だ!!腹は。俺の懐は深く愛に比例しているんだぞ、尊敬しろ”

だ、大丈夫だろうか……。実は僕以上に忘れたい事実があるのは……彼なんじゃないだろうか。結婚するって大変なんだな。縁がなくて良かった;

『……。あまりおすすめしませんが、ご紹介システムがありますよ、BOSS!!』

……な。なにその、あまりおすすめできない?ご紹介って。

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