"*M日"
“*M日”
国道の長いSトンネルを抜ける前、が、今日の現場。
いやな雰囲気……な、気がするのは、この薄暗くジメジメした感のありまくりなた
めかと思う。……だがしかし、次の瞬間それは、それは?
今日の僕の配置。ほぼトンネルの前付近であって。どうも先ほどから犬の鳴き声が
聞こえる。聞こえてくるのは……トンネル内部。反響気味なのでよく判る。さて、
どうしたものか……。
いや、別に。
僕はいつもの如く棒が武器なわけだけれど。
作業員たちの武器である工事車両は調子が悪いらしぃ。
辺りには、サルと猫?しかいない。そんな何匹もじゃぁないけれど; ……誰にも犬
はみえない。僕にもさ。
それでもなんとか強引に作業は進められてゆく。……が、それも限界がきたようで
わき出る水の量が半端じゃぁなくなり、中断せざるを得ない状況となってしまう。
"ラッキーじゃね?"と無線が入る。こっそりね;
そのラッキー感は、ここから離れようとしないコイツ……ここというより僕のそば
を……、というのを付け加えても良いかなぁ;
"良い天気ですね"
僕は無線でそう返した。相方は"ラッキー"への相槌だと思っていると思う……。し
かし僕の空を見上げながらのそれは、他のナニモノでもない"現実逃避"だった。
この状況、まずくね?
緊急に"小屋"で会議が行われることになった。この水をどう回避して作業を続行し
ていくか、ということだけど……
僕はひとり、みんなここから逃げた、退避した方が良いと考えている。
……が、それをダイレクトに表現発信できるほどの立場にいない。
権限ハ、アリマセン、から。
いや嫌々、そうじゃぁなく。意見くらい述べます。求められれば、だけど。生憎、
資格所有者が僕なため、リーダーが幸か不幸か僕なんです;
現場監督が案の定、僕に意見を求めてきた。
どうする?数字に弱い僕は理論的にも論理的にも、どうすりゃ全員退避させられる
のかの台詞が思いつかない&信頼されているほどの面識もない。会ったのは今日が
初めての監督なわけで。いや、初めてじゃなくても信頼はどうか、と。思うけれど
後ハ野トナレ山トナレ作戦、ですね。
"あの車両気になっていたのでずっと観ていたのですが、先ほどより沈んでいるよう
にみえますが"と、とある車両を指し示し、とても意見とは思えないほど遠い発言を
してみた。
"ホントだわ"
作業員のひとりが続ける。
"そういえば、今日に限ってあの車両調子悪いんだよな"




