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“忘却の輪”

“忘却の輪”


“ぇっと。ここはどこです?私は一体……”

“ぉお!……Oさん、今、少々屈みますから”

御手洗(みたらし)くんの云うように、ほどなくしてOさんは目醒めた。負ぶっていた彼を降ろすためにJさんは腰を屈め、Oさんが降りやすいような体勢ををとった。

“すまないね、確か部屋のソファで寝ていたと思うのだが……いつの間に”

久々の下界……;に少々眩しいらしく、彼は周りの光りから目を覆うように手をかざし、降りる。

“大丈夫ですか、気分が悪いなどありませんか”

心配そうに顔を覗き込むJさんや皆の顔を見回しながら笑顔で彼は応える。

“大丈夫ですよ。……10分ほど眠ったかねぇ”

この言葉に皆が絶句したのは……云う間でもなかった。

“え?え?ぇえつ?じゅ、じゅっぷん?居眠りレベルですよね、それ”

“ど、どういうこと?oさんにはそんな短く感じたってこと?”

“私は昔から余所で眠るときは、深寝短寝でねぇ……実際短時間なのかそうでないのか。ふぉっほっほ”

やはりこの人……も、……只者ではない;早寝であり、深寝であり、短寝って。だいたい、短寝なんて初めて訊いた言葉だったりもする僕な訳で。

“う~む。俺らには実際、1日くらい経ったように感じるが……奇妙な話だな”

“……仔蝶の話を思い出しますねぇ”

“誇張?なにそれ”

“胡蝶じゃなく、仔蝶の鎌倉な。……蝶として自分が生を受けてから生まれ変わりを果たし、一国の主にまでなりあがり、新時代を築いたという夢のような人生の夢をおよそ10分ほどでみた青年の話さ”

“誰がそんな妄想話を……”

“いやいや、夢はまったくみていないですよ私は”

“う~ん、確かに10分じゃ俺もみないかな……気付いたら……はっ;寝てたのかって”

“……とすると、御手洗くんのいう時間軸が関係してくるわけ?”

『実際に皆さまと肉体は同じところに居ましたが、意識……のようなものがある時点から何らかの影響で飛ばされたというような状況ですね』

“……Oさんの件はそれでいいかもしれんけど、じゃぁ、俺らはどうなのよ、全員が同じような時間感覚だぞ、たぶん;”

“だいたい、体内時計が勤務の影響かなにかで同じですよね”

“そうそう、勤務が、ね”

“KKさんなんて、腹時計関係なく腕時計が同じだったもんな”

『時計を拝見させていただけますか?……大丈夫です、みさせていただくだけで触りません』

KKさんの一瞬の躊躇いを察知したかのように言葉を慎重に択ぶ御手洗くん一族って……やっぱり羨ましい。

『この製品なら可能ですね。その場に合わせての遠隔操作や、なんらかの装置上の巻き込み設定などが』

“要は、あのおっさんのいたずらレベルな話ってこと?”

『……なんと仰っていいやら……世界問題レベルになる可能性もありますから滅多なことは云えませんが』

“御手洗くん。1ついいかね”

『なんでしょう、BOSS』

“あの主は、空世の奇襲とは何か関係があるのかね”

『ええ、BOSS。広義の意ではあると云えます。ただ……関係があるとはいえ、首謀者などではないようです。犠牲者ではあるかもしれませんが……』

な……に、それ?あのおっさんが犠牲者なら、僕の犬はどうなるんだ。……あれ、そういやまたアイツ視えなくなって暫く経つが……い、いや、1時間くらい視えないのはい、いつものことか;いいや、そういうことじゃなく。それなら僕らを何故あの場所に……見落とした何かがあるとでもいうのか?

“犠牲者?とは?”

『詳しくは申し上げられませんが反空世との関りはあるようです』

一連の話の流れから、世界間の問題などで云えないと思えるような今の台詞。実は覗き込んだ例の水晶に

〔不明〕

という文字が浮かび上がっていた。

“御手洗くん、云えないというのは、判らないから云えないってことだね”

『はい、BOSS』


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