“敗北参”
“敗北参”
こうして。
よく判らないままではあるが、僕らは帰る運びとなった。運び、となったのである;
“玄関の周辺も含め。直っていますね、J氏”
“ああ。ここだけは心残りだった……二度と来ないだろう場所ではあるから……本当に良かった”
僕らの速度に適度に合わせ、家主のおっさん……いぇ、おじさまが、気紛れに壊していった通路も何もかも計算尽くしの奇妙で修復済みな、お屋敷。というより、館を後にする。
もう2度と来ない。来たくもないほどに不快な音は僕が深いだと告知したのにも関らず未だ……未だ、続いている。新手の、嫌がらせだろうか;
あれに見えるは……なんと。久々登場の御手洗くんではないか!
『皆さま、いかがでした?何か掴めましたか?』
“御手洗くん……なんだよ、ここ;訳のわからないところに連れてきて”
『……そうですか、う~ん』
“う~ん、じゃなくて。メシ喰いに来ただけだぞ”
『……正確には、大金も手に入れられた、ですよね』
“み、観てたの?!……ひでぇな”
『観てはおりません。ですが、私どもの全て……ではありませんがある程度は読めますから……』
……ぁ。やっぱり読めたんだ、御手洗くん;
“わ、私はキミに会えてう、嬉しいよ、”
“KKさん、な、なにも泣かなくても”
『私も、またお会いできて嬉しゅうございます』
地世とは仕事のみで今まであまり関わりが無かったから謎の部分が多い。多いけれど、なんとなく空世よりは地世の感覚の方が普通世に近い気がするのは……何故だろう?尤も、僕の知る中での普通世からの移住は、空世へのみだけどさ。
“で、御手洗くん”
『なんでしょう?BOSS』
“俺らは空世の奇襲を受けたため、真っ向から敵陣に乗り込む算段だったはずなんだが”
『はい、BOSS』
“これは、いかに?”
『ご説明させていただきますと長くなりますので省かせて頂きますが、』
“長くなっても、一向に構わんが、”
『ぃえぃえ、そう仰らずに、』
“長いといえば、時間。何時なの今?”
“そうそう、あれからどれくらい経った?”
『あれから、と申しますと、皆さまとここでお別れしてからということで。……小一時間ほどでしょうか』
“またまたご冗談を;”
“だって、KKさんの時計では明らかに”
“で。Oさんは……まだ?”
“起きないですね”
……、そのOさんはというと、結局どうしても起きなかったためJさんが背中に負ぶっている。起きないOさんも心配ではあるが、幾らJさんが鍛えているとはいえ……自らの巨体(は、云い過ぎかもしれない;)を支えているあの膝で、いつ起きるか判らない大の大人を背負ったまま歩き続けて大丈夫だろうか。
『皆さま、ご心配せずともO氏はまもなく目覚められることと思います。どうやら彼だけは、時間軸の違う場所にて眠りについたようです』
な?!
“どういうこと?”
“な、なに云っちゃってるのかな……あれは陰謀論で、あれ;今回の事の始まりから……もしかして陰謀論だった……なんて云っちゃう?”
“み、御手洗くん。ぼ、僕は時間軸……とか云われてもね、”
『簡単に云うとですね、ここに書いてあります』
御手洗くんは、僕らには見えない……僕だけに見えないわけではないと思われる空間の一点から、石の塊に見える綺麗な球体;のようなものを引っ張り出し僕らに見せた。
『ぁ。こちらは、水晶でございます。心の中で思ったことをこの石へと映し出せます……無論、能力の差などで必ず、とは云えませんが;』
その、石の塊はとても普通世の技術では難しいほどに見事なまでの球体……い、いや、あれは楕円体だ。なにあれ;始めて生近で見た。そして、綺麗に透け透けだった部分に文字が浮かび上がる。おそらく、普通世の言語が優遇され共通語であるため僕らにも読めるのだとは思うけれど;
“か、簡易過ぎる”
御手洗くんの持つ〔水晶〕といわれるものには、
〔時間の流れ〕
とだけ、浮かび上がって見えた。あまりに簡易過ぎて……これが御手洗くんのいうところの能力の差、というやつだからであろうことは誰にも……判らない;
とはいえ。小一時間ではあるだろうけれど、ずっとそこで僕らの帰りを待っていてくれたんだ、ありがとう。
『ぃえ、違います』




