<一日目>
俺、三木大和は今日、恋に落ちた。
*
俺は、はっきり言うとモテる。
嫌味な奴だと思って、愛想を尽かさないでくれよ。
俺は女には愛されたが、愛したことはなかった。
本気で一人の人を愛したことがないのだ。
そして、これからもこの俺の愛するという気持ちは沸かないだろうとさえ思っていたのだ。
しかし、この気持ちはなんだろうか?
君をこの手で抱きしめたくてたまらない。
君の手を握りたい。
君とずっと一緒にいたい。
こんなに俺を本気にさせた君が悪いんだから・・・。
*
俺は今日も女の子達と喋りながら登校してきた。
そして、俺は一時間目が始まるまで女の子とずっと喋っていた。
これが俺の毎日。
変わることのない日常だったのだ。
君と出会うまでは・・・。
この日の三時間目は体育だった。
男子達がバスケで、女子達がバレーだった。
俺は基本的にスポーツはなんだろうと得意である。
なので、今日も俺は活躍していた。
そんな時に思わぬ攻撃が俺の後頭部に入ったのだ。
俺は倒れながらに、後ろを向くと女子達のバレーボールが俺の後頭部に当たったのだということが分かった。
そして、俺の意識はなくなった・・・。
*
俺が目覚めるとそこは保健室だった。
俺は保健室のベットに寝かされていたのだ。
保健の先生はいないようだ。
時間はちょうど六時間目の最中である。
俺はかすかな音が聞こえたような気がして、動きを止める。
「スゥ、スゥ」
それは確かに寝息だった。
カーテンで閉ざされている向こうのベットに誰か寝ているらしい。
俺は何となくカーテンを開く。
悪いかな、とは思ったが俺は気になるとどうしようもなくなるのだ。
俺は目を見張った。
そこには、肩までを布団に掛けて寝ている女の子。
細い黒髪を後ろで束ねている。
そして、スッと通った鼻。
真っ赤な唇。
マツゲは長い。(目が見れないのが残念だ)
俺は、不覚にも見惚れてしまった。
いつまで俺は眺めていたんだろう。
気が付くともう放課後になろうとしている所だった。
俺は少し残念だったがカーテンを閉め、出て行こうとする。
するとその時保健室のドアが勢い良く開かれ、数人の女の子達が流れ込んでくる。
「あっ、ごめんね。大和君。痛くない?」
一人の女の子がそう訊く。
おそらくこの子が俺の頭にぶつけた子なのだろう。
「大丈夫だよ。だから、そんな顔しないでよ」
俺はいつも通りの作った笑顔を彼女達に向ける。
そう、俺はまだ気付いていなかった。
俺が恋に落ちていることに・・・。




