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あなたに恋する3時

In other words…Parallelより

創とちいが20歳のバレンタインの明け方の模様です。

結婚して2年になる二人…相変わらずのようです。

「さて…あいつが起きないように気をつけないとな」

俺はゆっくりと物音をたてないように起き上がる。

今の時間は午前3時。隣で寝ている妻もぐっすりと寝息を立てている。

俺達の足元で寝ているビリーも丸くなって夢の世界だ。

俺は、鞄に隠していたチョコレートをそっとサイドテーブルに置く。

幼馴染だった彼女と結婚して、もうすぐ2年になる。

二人で最初に過ごしたバレンタインは、国立大学の2次試験の直前だったから、二人でチョコレートケーキを買って食べた。

結婚して最初のバレンタインの去年は、テスト明けで一足早い春休みを兼ねて、北海道に新婚旅行に出かけて札幌で過ごした。



そして、今年のバレンタインだ。切っ掛けは1週間前のテレビのチョコレート特集だった。

テレビで披露されているのは、少々値段の張るブランド物のチョコレート。

「おいしそうね。そのうち…なんでもない」

と、彼女が口にしたのが切っ掛けだった。

本来のバレンタインは恋人達のお祭りな訳で、今夜は二人で少しだけお祝いをすることになっている。

けれども、愛する妻に感謝の気持ちを込めて送っても問題はないだろうと思って、昨日の午後にテレビで見たチョコレートショップに。

そこで俺は著しく後悔したのだ。女の子の熱気にやられてしまって、気分を悪くしてしまったのだ。

あんまり人混みは好きではない。けれども、彼女の喜ぶ顔が見たくて、顔を蒼くしながら何とかしながらゲットしたものだ。



このエピソードもあと数年もしたら、微笑ましい話になってしまうのだろう。

それでもいい。結婚しても、彼女に恋していた時の様に思い続けている俺がいる。

そろそろ就職に対して前向きに考えないといけない。

彼女の方は、公務員試験を目指すと言っている。それと並行してもう一つを提案した。

それは、子どもを持つと言う事。

彼女は一年休学してもいいから、今のうちにと考えているようだ。

確かに今から年度末にかけてのタイミングで妊娠すれば、出産は年末だ。

入学してからその事を計画していたようで、現時点で一般教養も学科の単位もかなり取得している。

来年も前期はびっちりと講義を入れる計画で、後期はゼミといくつかにする予定だと言っている。

出産した後の子供だが、彼女のはとこである義人のお母さんが見てくれると言う。

なんでも、結婚前は保育園で働いていたとか。だから、大学を卒業するまではお願いする予定だと言っていた。

もちろん、ちゃんとお金は支払うって言っていたけど…それでいいのだろうか?



俺は、来年から司法試験を受けてみようと思っている。そんなに簡単に受からないのは十分承知だが、

子供が学校に行くようになった時に、多少でも時間に融通を付けて子供の成長を見たいと思うから。

子供はなんだかんだ言って、親の背中をちゃんと見ているから。

とりあえず、行きあたりばったりになってしまうかもしれないけど、彼女と二人ならそれもまた楽しいかもしれない。

この2年間、大きな喧嘩もせずに楽しく暮らしているのだから。



成人式の後に、俺達は中学の同窓会に出席した。

夫婦になってから初めての同窓会で先生も含めて俺達が結婚した事を驚いていた。

で、やっぱり言われたわけだ。…できたの?って。

流石に違うと言ったけど、それならば俺達の子供は1歳になってて、簡単な言葉を話し、歩き始めているだろう。

子供を真中に二人で手を繋いで歩く姿を想像するだけでも楽しくなる。

彼女のお腹には、その証すらまだいないのに、その位俺達は幸せな訳で。

最近、ようやくおままごとの結婚ごっこと陰で言われる事も無くなった。

ひょっとすると、俺達が早く離婚すると思っていたのだろうか?だったらそれはまたそれで失礼な話だ。



まだこのまま起きているには少し早いから、俺はもう一つ寝ることにする。

「愛してるよ。結婚した時以上に愛してる」

彼女に誓いの言葉を囁き、布団から出ている手に軽くキスを落とす。

くすぐったいのだろうか、へらっと普段ならしない笑みを一瞬浮かべた妻が愛おしい。

「ゆっくり寝て。今夜は寝かせてあげないから。とてもあっつい夜にしよう」

俺は再び闇に吸い込まれるように眠りにつくのだった。

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