第1話
「はぁ〜、また異端児の事件だよ。」
雑誌を見ている少女は言った。
「私たちには関係ないことでしょ?ここは安全なんだし。」
そう、ここは警備が万全な学校なのである。そんな事件など起こるはずがない。
「そうなんだけどさぁ〜。やっぱり怖いじゃん。見た目は全然私たちと変わりないんだよ?警備が万全とはいえいつ襲ってくるのか分からないよ。ティナだってそう思わない?」
私の友達シアは毎日こんなことを言ってる。確かに私だって異端児は怖い。だって色んな噂とか流れているし、毎日のように異端児がらみのニュースがテレビやラジオで流れているんだから。しかもそのほとんどが人を襲ったったいう内容だったり殺人事件だったり・・・。けれど、この学校のことは信頼している。なんせこの学校はお金持ちの子どもばかりが集うようなそんな学校だからいろんな所にお金をかけている。もちろん警備に使うお金も半端ない。だから多分ここが世界で一番安全ともいえるようなところだろう。
「私はこの学校を信頼しているから。本当は私なんかが通えるようなところじゃないんだけどね。全部マルクス夫妻のおかげだよ。両親のいない私を引き取ってくれてしかも本当の娘のように育ててくれているんだもん。私にとっても2人は本当に大切な家族だよ。」
「そっかぁ、ティナって確か少し前まで孤児院にいたんだよね?」
「うん・・・。私が10歳の時孤児院に入ったらしいんだけどそれより前の記憶が無くて両親のこととか自分の名前ですら覚えていなかったの。そして私が14歳になってマルクス夫妻に引き取られたってわけ。」
「え?じゃあティナって名前はどうしたの?マルクスさんにつけてもらったの?」
「ううん。孤児院に引き取られたときに私が持っていたペンダントにそう書いてあったんだって。」
「へぇ、そうだったんだぁ。いろいろ大変なんだね、ティナって。自分の記憶を取り戻したいとか思ったりしないの?」
「そう考えたことはあまりないかも。今すごく幸せだから。」
これは本当のことだ。今私はすごく幸せだと思っている。マルクス夫妻はとても裕福な家庭であるから何一つ困ることがない。それだけではなくて本当にマルクス夫妻は私を娘として迎え入れてくれた。何よりもそれが一番嬉しいことだった。昔のことは全く気にならないというわけではないのだけれども記憶を取り戻そうとは考えていない。それで困ることはないのだから。
「あっ、シアそろそろ授業始まるよ。」
「ねぇ本当に異端児こないよね?」
(まだ言ってる・・・)
「もうそんなに心配しなくてもいいでしょ?そんなこと言ってたら本当に来ちゃうよ?」
本当にそのとおりだ。こんなに言われたら私まで心配になってくる。でも私たちには関係の無いことだ。そんな心配していても無駄なことだろう。
「うん、そうだね。前向きに考えなきゃだよね。」
そうして2人は教室へと入っていった。