04
「ねぇ、音。結婚式はどこがいい?」
「えぇ?やらなくていいよ」
「俺達だけの結婚式がいいって?音のウエディングドレス姿を生で見れるのは俺だけって事か。それはそれでいいね」
「え、そういう意味で言ったんじゃないんだけど」
土曜の休日に、我が家でまったりと寝ていたら一夜が手土産片手にやってきた。超有名ケーキ屋の№1人気のケーキにママンはうっとり。一夜を家に上げた挙句に私の部屋へと案内したママンは紅茶を淹れるべく居間に行ってしまった。一夜は寝ていた私の布団の中に入ってきて体中、ニギニギと揉まれた所でようやっと目を覚ました私は一夜に殴りかかろうとしたら、ディープなチューをされた。ねちっこくチューされたものだからMy布団をひっぺはがし、秒速で着替えを済ました時にちょうどよくママンがやってきて紅茶とケーキを持ってやってきて、「おほほほ」と非常に白々しい笑い方をして、部屋から出て行った。ついでに買い物にも行ってしまった。そして冒頭に戻る。
「子供は何人がいい?」
「え?いらない」
「そっか、まだ早かったな」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「わかってる。音は俺と二人っきりの新婚生活がしたいんだろう」
どう勘違いしたらそうなるのだろうか。一夜の頭の中身を覗いてみたら、きっと後悔するだろう事はもうわかっているので、例えでも絶対に言わない。
「一夜とは結婚しないからいいよ」
「音…監禁と結婚、どっちがいい?」
真顔で言われ、背中が泡立った。あっれー。寒気が止まらない。心なしか、部屋の気温まで極限まで下がっている気がする。
「け、けけけけけけけけけけけ結婚がいいかな…。あっはっはっは!」
「音の冗談、ちょっと本気で聞こえちゃったな」
あっはっはっは!本気だもの。
「まぁ、結婚したら外に出すつもりは毛頭ないけど」
それ、監禁と何が違うの?
そう言いそうになって辞めた。一夜の事だ。そう言ったら、私の知りたくない事までパカーンとマシンガンのように喋りはじめるのだろう。想像しただけで寒気がしてきた。
「音は、やっぱり純白のドレスだな」
「一夜…」
「これから先、純白な音を俺色に染め上げるって意味で」
幸せそうに微笑む一夜の背景は黒に染まっている…ように見えた。そうか王道の純白ドレスか。そう、少しだけ感動した矢先に、一切の手加減もなく地面に叩き付けられた気分だ。
「化粧直しは純黒ドレスだな」
「…何、純黒って…」
「もちろん、俺色に染ま」
「言わんでいい!!!」
地面に叩き付けられた後に更に、強い攻撃を食らって、地面にめり込まされた気分だ。
「新婚旅行はどこに行こうか」
「近所のせ」
「北海道で温泉巡りしようか」
「し、したい!温泉巡り!!」
温泉大好きな私に、温泉巡りという言葉はダメだろう。温泉、それは依存性Sクラスの麻薬である。
「ねぇ、ねぇ。洞爺行こう!」
洞爺とは、北海道有数の温泉街の一つに上げられる観光名所の一つである。近くに湖があり、遊覧船が運航している。らしい。ネットで調べたけど、いつか洞爺に行ってみたいと思っていた。
「それからねぇ。それからねぇ。旭川も行ってみたい」
旭川とは、北海道のど真ん中にある都市である。北海道三大都市の内の一つに上げられる。らしい。旭山動物園に、大雪山にあるらしい温泉街は有名らしく、なんでも年がら年中雪が積もっているんだとかいないんだとか。
「北海道観光か。いいね。それじゃ、最初は近場の動物園にデートしに行こうか」
「うん!一夜大好き!!………っ!!!?」
言ってしまった。後の祭りである。
その後、一夜に押し倒されてママンが買い物で居ない事を良い事に腰が使い物にならないぐらいに抱かれ、幸せそうな一夜に「愛してる」と言われながら、いっぱいキスを至る所にされた。
次の日の日曜日、一夜は大量の北海道にまつわる雑誌をいっぱい持ってきていた。それを今度は襲われないように縁側に移動。一夜の膝の上にはピカソが乗っている。
「浮気者!!」
「俺には音だけだよ」
「ピカソの浮気者!!」
「音は俺の事が好きなんだよね?」
「一夜の浮気者!」
良からぬ気配を察知し、急いで言い直すと、一夜の機嫌は良くなった。
一夜の持ってきた雑誌を一冊引き寄せて、1ページ1ページ丁寧に開いて、記事を読む。なんて素晴らしい。魅力たっぷりな北海道。ラーメン、デザート、海産物、広大な敷地の花畑、ラーメン。ラーメン、美味しそう。ラーメンにバターを入れるのってありなの?ありなんですね。北海道は何入れても美味しいからありなんですねわかります(偏見)。
「あれ…」
「どうかした?」
「なんで、北海道限定の雑誌ばっかりあるの」
なんか、やたら詳しく載ってるなと思って何気なく表紙を見てみれば「北海道限定版」と書かれた物がほとんどを占めている。
「親父に、新婚旅行先が北海道と言ったら、沢山貰った」
「……………!!?」
あれ。私、結婚にOK出してませんけど。