episode7 佑 〜優と佑〜
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。みんなが席に着く。
おれも席に着いた。
先生はまだ来ていないのか…。
どうしよっかな? とりあえず、隣の女子にでも話しかけてみるか。
「ねぇねぇ」
「えっ!? あ、何…でしょう?」
えっ…。そんなに驚かせちゃったかな?
「何?どーしたの? 何そんなビビってんの?」
おれは笑いながら聞いた。
「や、だって、いきなり話しかけられたし。びっくりするでしょー?」
そ、そうかな? なんか悪いことしたかな…。
「ごめんごめん、そんなつもりじゃなかったんだけど。名前聞こうとしたんだ」
「あぁ、名前ね。清水 優です。よろしく…」
清水優さん、ね…。って!!
「え!? 優っていうの?」
おれの名前と一緒じゃん!
「うん、優だよ…? なんかあるの?」
「おれも、佑っていうんだけど。桜庭佑」
目を丸くした清水…さん?に、おれはそう言った。
「あー、そうなんだ。同じだね!」
清水さんがそう言って笑う。よかった、笑ってくれた。だから何?とか言われたらどーしよーってちょっと思ってたんだけど。
「なんかすごい偶然だな」
おれもそう言って少し笑った。
てか、清水さん、っていうのは、なんかヤダな…。でも、なんて呼んだらいいのかわかんないしなー…。普通、仲良くなるな
ら、下の名前で呼んだほうがいいんだよな? まあ、優と佑でややこしいかもだけど。
まあ、おもしろいからいっか。
「じゃあ、なんて呼んだらいい?」
とりあえず聞いてみることにした。なんかあだ名とかあるなら、そっちの方がいいだろうし。
「えっ、あぁ。呼び方かぁ…。うーん、なんでもいいよ」
なんでもいいか…。じゃあ、やっぱり下の名前でいっか。
「じゃあさ、下の名前でもいい? 優って」
「え、あ、うん。全然いいけど。でも、同じ名前だし、ややこしくない?」
「まぁ、そうだけどさ。なんかおもしろいじゃん? だから、優も、おれのこと佑って呼んで」
あ、今普通に優って言っちゃったけど…。いいんだよな?
「うん、わかった。えっと…佑…くん?」
あ、よかった。気にしてないかんじだな。でも、くん付けなんか、しなくていいのにな…。
「別にくん付けしなくていいのに。…まぁいいや。慣れたら佑って呼んでくれたらいいから」
「あ、うん…」
少しとまどったようにうなずいた優。なんかおれへんなこと言ったかな?
そんなことを考えていたら、チャイムが鳴った。
そういえば、いつのまにか先生来てたんだな。何にも言わないから、気づかなかった…。