episode6 佑 〜有名人!?〜
中野山高校。今日からおれが通う学校。今は、その学校の、1年4組の前にいる。
今日は入学式。そして今は、8時10分だ。
いや、全然遅刻じゃねーんだけどさ。初日って、だいたいみんな早く来たりするじゃん? その中じゃ、おれ、すっげー遅い方かもしれないな…。
ガラガラー…
なんかみんなが静まってる。さっきまでは、廊下にも、ちらほらおしゃべりの声が聞こえてきていたのに。しかも、なんかおれのこと見てるし。
「…どうしたの? なんかこのクラス静かじゃん。みんなもっとしゃべろーよ。仲良くしよーぜ?」
おれは自然とそう言っていた。
だって、高校生だぜ? 学校生活は楽しみたいじゃん。みんな静かとか、ヤダし。
「ねぇ、名前なんていうの?」
おれは手始めに、近くにいた男子に声をかけた。
「あ、おれは、須藤 翼」
元野球部か…? 坊主が少し伸びたような髪型だ。
「顔に似合わねぇ名前だろ? おれ、野球部だったからさ。ずっと坊主だったし」
そう言って笑う須藤。
「まあ、確かに。おれは、桜庭 佑。佑でいいから。よろしくな」
おれは、納得して、うなずいた。やっぱり野球部だったんだ。
「おれも翼でいいから」
翼とは、仲良くなれそうだな。いいやつそうだし。
「てか、佑、お前すげぇよな」
いきなり翼が口を開いた。
「は? 何が?」
「お前、超有名人だぜ? うちの中学の女子とか、ほとんど佑のこと知ってたし。何でも、東中の王子様らしいぜ」
はああ? 何だそれは…。
「お前かっこいいしなー。このクラスの女子も、たぶん知ってると思うよ。だからさっき、佑が来たとき、みんな静かになったんだよ」
「いや、おれそんなかっこよくねーし。つーか、東中の王子様って何だよ!? 初耳だけど?」
おれは少し声を荒げて翼に反論した。
「そりゃあ、本人には言わねぇだろ。…とにかくお前は、超モテるってことだよ!」
モテて…んのか、おれ? いや、告白されたことくらいは、何回かあったけどさ。彼女とか、いたことねーし?今もいねーし…。
「そうそう、うちの中学でも、有名人だった」
「おれんとこでも!」
いつのまにか、クラスの男子がこっちに来ていた。
そしてみんな口々に言う。おれが有名人だと…。
なんか、わけわかんねーんだけど!?