episode4 優 〜織ちゃんとの出会い〜
「ねぇ、優。さっきすごい桜庭くんとしゃべってたじゃん。もしかして、好きになっちゃった? そうだよねーかっこいいしねー…」
「ちょっと待って! いつ誰が誰を好きになったって!? だいたい、話しかけてきたのはあっちだよ。話が長くなったのは、名前が一緒で、なんて呼んだらいい?って話してたからだし。別にうちはそういうのに興味ないし」
私はなおもふざけたことを言い続けそうな麗奈を遮ってそう言った。
「えー、でもさー。けっこう楽しそうに見えたよ。ね?織ちゃん」
織ちゃん? って誰だ?
「うん、見えたね」
織ちゃんと呼ばれた子が、そう言った。
「あ、はじめまして。私、如月織花です。よろしくね」
麗奈の後ろの席の子か…。にしても、超可愛い子だな。
「織ちゃんって呼んでるから」
麗奈が付け足してくる。
「ああ、はじめまして。清水優です。よろしくね、えっと、織ちゃん…?」
「うん、優ちゃん…でいいかな?」
「全然いいよ。むしろ優で」
「うんわかった。なれたら優って呼ぶね」
なんかさっきも聞いたような会話…。あ、桜庭…じゃない、佑くんと話してたんだっけ。
ま、何にしても、初めての友達だよー!!
「はいはい、はじめましてのあいさつはそれぐらいにして。話元に戻すよ」
麗奈が私と織ちゃんの間に入ってくる。
「それでさ。なんて呼ぶことになったの?」
麗奈が興味深々な顔で聞いてくる。
「普通に…下の名前で、って言われたけど…」
なんでだろ。なんか、別に普通のことなのに、少し恥ずかしい気がする…。
「おー!! なんか、仲良くなってんじゃん? やっぱり。てかさ、お互いに、ゆう、って呼び合うの? なんか変じゃない?」
「いや、あのさ、別に、仲良くなんてなってないし。ゆう、って呼び方の話は、私も変だと思ったけど、おもしろいからいいんだってさ」
冷やかすような麗奈の口調に、少しムキになったように答えた。
「へぇー…」
麗奈がニヤニヤしている。それを見た織ちゃんは、クスッと笑って、私の方を向いた。
「でも、優ちゃんと佑、お似合いだと思うけどな? なんか気が合いそうなかんじだったし」
織ちゃんが、満面の笑みで私を見つめる。
でも、私は、その言葉に反論する前に、あることに気がついた。
今、織ちゃん、佑くんのこと、佑って呼んだ…?