episode3 優 〜呼び方〜
「えっ!? あっ、何…でしょう?」
ヤバイ。びっくりしすぎて、言葉変…。
「何? どーしたの? 何そんなビビってんの?」
桜庭くんが笑ってる。うう、恥ずかしい…。
「や、だって、いきなり話しかけられたし。びっくりするでしょー?」
手を顔の前でバタバタさせて、私は桜庭くんの方を向いた。
「ごめんごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど。名前聞こうとしたんだ」
あ? 名前? あ、そういう普通の会話ね。
「あぁ、名前ね。清水優です。よろしく…」
まぁ、普通でいいんだよね。
「え!? 優っていうの?」
わっ! 何? 優がどうかしたのかな?
急に桜庭くんが大きな声を出したから、私はビクッとした。
「うん、優だよ…? なんかあるの?」
「おれも、佑っていうんだけど。桜庭佑」
えー!? そうなの? でも麗奈何も言ってなかったよね…。
「あー、そうなんだ。同じだね!」
「なんかすごい偶然だな」
そう言って桜庭くんが少し笑った。
…こう見ると、確かに桜庭くんは、かっこいい…と言えなくもなくもない…かな?
って、そんなこと考えてどうすんだよ自分。
「じゃあ、なんて呼んだらいい?」
自分にツッコミを入れたところで、桜庭くんが聞いてきた。
「えっ、あぁ。呼び方かぁ…。うーん、なんでもいいよ」
私は特に、あだ名とかないしなー…。中学の時は、男子も女子も「優」だったし。
「じゃあ、下の名前でもいい? 優って」
「え、あ、うん。全然いいけど。でも、同じ名前だし、ややこしくない?」
「まぁ、そうだけどさ。なんかおもしろいじゃん? だから、優も、おれのこと佑って呼んで」
いや、おもしろいって。まあ、なんでも、いいんだけど。
「うん、わかった。えっと…佑…くん?」
とりあえず、「くん」を付けて呼ぶのが精一杯だ。
「別にくん付けしなくていいのに。…まぁいいや。慣れたら佑って呼んでくれたらいいから」
「あ、うん…」
私が少しとまどいながらうなずいたときに、チャイムが鳴った。
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