episode1 優 〜東中の王子様〜
中野山高校、1年4組。
私は今、そのクラスにいる。
今までとは全然違った、キレイな教室に、机、椅子。
空も晴れわたって、絶好の入学式日和!
…なんだけど!!
やたら周りが騒がしい。
このクラスの人も、友達がいるのか、遊びに来ている他のクラスの人も、なぜかみんな落ち着きがない。
「優! おはよっ。同じクラスになれたね」
「あぁ、おはよ、麗奈」
中学のときの友達、「河瀬 麗奈」が、嬉しそうな顔をして、教室に入って来た。
「ねぇ、麗奈。なんでそんな嬉しそうなわけ? なんかあったの?」
席に着いてもまだなおニコニコしている麗奈。なんか変…。
「だって!! このクラス最高じゃん。優がいるし」
え? 私がいるからなの?
「それに、なんといっても、あの、桜庭くんがいるんだよー? もう、超ラッキーっ!」
なんだ、私がいるからじゃないんだ…って、そうじゃないでしょ。
「桜庭くん? 誰それ? 麗奈の知り合い?」
「えっ!? 優、桜庭くん知らないの!?」
…はい、知りません。うちの中学にいなかったし、そんな名前の人。
「東中学の、王子様だよっ。もう、超かっこいいの!! 練習試合とかで、東中行ったときとかに見たんだけど」
王子様ぁ? 誰だよ、わけわかんない。
東中は、私の中学、西中に、わりと近い中学だけど、そんなの聞いたことないし…。
「もう、優はそういうのに、ほんとうといよね。たぶん、このクラスの人のほとんどが、知ってるんじゃないってくらいなんだけど。肝心の本人は、まだ来てないけどね」
うといって言われてもなぁ。
ていうか、だからみんな落ち着きなかったのか。その桜庭くんとやらのせいで。
でも、どんな人なんだろ? そんな有名になるくらいだし、そうとうかっこいいんでしょうけど。
「あ、ほらっ。桜庭くん来たよ!」
麗奈がそう言ったと同時に、教室の空気が変わった。
そしてその桜庭くんは、教室に入って来て、なんと、私のとなりに座った。