1-3 家族に問題ありすぎです
「シャルロット 王都一番の仕立て屋と宝石商を呼んだぞ。好きなだけ選びなさい。」
「ーーーお父様。嬉しいですが、今ドレスはいりません。」
「なら、宝石ならどうだ。遠慮はいらないよ。」
部屋でおとなしくしているだけの私に今日も父「クラウス」は甘やかすだけ。
だから、シャルロットはわがままに育ってしまったんだな。
しかも、娘のために湯水のようにお金を使っている。
前世、庶民の私には、どうしても無駄遣いに感じてしまう。
それに、このままでは公爵家が確実に傾いていく。
いいのだろうか。
いいえ。よくない。
「お父様。宝石ならたくさん買っていただいて、余っています。」
「でも、毎日ベッドの上で安静にしてばかりでは、気が滅入るだろう。
お金ならいくらでもあるんだから気晴らしにたくさん買っていいんだよ。
今までだってたくさんのドレスや宝石を欲しがっていただろう。」
またしても自分の今までの行動を思い知らされる。
シャルロットは、派手好きで目が痛くなるような金やショッキングピンク、紫などの色のドレスをオーダーメイドで月に何十着も作らせていた。
宝石だって大きさにこだわって7歳ではどう見ても重いだろうと思うようなものを次々と。
なんてもったいない。
そして、その色彩感覚たりや・・
おかげで毎朝、メイドとのやり取りにも困っている。
「シャルロットお嬢様、今日のドレスはどうなさいますか?」
「アリサ、ありがとう。なるべく落ち着いた色のものを選んでくれない。」
「こちらでよろしいですか。」
アリサは、ショッキングピンクのフリルたっぷりなドレスを運んできた。
こ、これが落ち着いている?
「申し訳ないけど、フリルや飾りも少なく青とか黒とか白い服は?」
「もう少し飾りが控えめな紫のドレスならあります。」
「ーーそれでいいわ。お願いね。」
毎朝これである。
いい加減、落ち着いたものは皆無だと気付いた。
そこで、毎日何かおねだりしてほしいと甘やかすお父様にお願いすることを決めた。
「それならお父様。既製品で構いませんので、なるべく落ち着いた色の室内着が欲しいのですが。」
「遠慮しなくていいよ。それなら仕立て屋を呼ぶといい。すぐ手配するからね。」
こう言って、ようやく父も部屋を後にした。
もちろん、この後すぐ来た仕立て屋からブルーや淡いラベンダーなどの優しい色でレース控えめのデイドレスやドレスを十数着ずつお願いした。
しかし、そこは公爵令嬢。
既製品なんてもってのほか。
しかも質素に見えるものは良くないということで一流の生地や刺繍が細かく入った手の込んだオーダーメイドのドレスになってしまったのだが。
どうしても落ち着いたデイドレスがすぐ欲しいからと既製品も数着お願いすることにした時には、さすがに離れたところにいるメイドたちからざわざわと驚きの声が聞かれた。
「なんか、シャルロットお嬢様以前と様子や趣向が変わってない?」
「あんなに派手でわがままだったのにね。」
「頭を打って前の記憶が無くなってたりして。」
廊下を歩きながら話す声が聞こえた。
仕方ない。
少しずつだが、みんなの意識を変えていくしかない。
そして、一度も顔を見せないお母様。
気になって、アリサに聞いてみた。
「お母様はどうしているの?」
「今日は、お部屋に宝石商を呼んでいらっしゃいます。」
幼い頃 かわいいドレスを着てそれをほめてもらいたくてお母様に見せに行った。
でも、目を向けてはもらえなかった。
前世のゲームの中の母「オリビア」を思い出す。
厳格な家に生まれ、家族との関係の構築の仕方が分からず、子どもたちとうまく接することができない母親。
そんなストレスから買い物することにはまってしまっている。
豪華なドレスや宝石を山のように買い、お金を湯水のように使ってしまっている。
豪華なお茶会も何度となく開催している。
父も母の行動に疑問を抱かず、したいようにさせている。
前回母親と話したのはいつだったろうか?
無関心な母親に対してさみしさからシャルロットはどんどんわがままになり、困らせて反応を見ようとしていたのかもしれない。
だって、まだ7歳だもの。
実は、もう一人。
ローゼンベルク公爵家には、兄「エドワード」がいる。
14歳の兄は今屋敷にいない。
甘やかすばかりの父親、浪費してばかりの母親。
そして、わがまま放題の妹、つまり私。
そんな家族を毛嫌いし、13歳から入れる学園の寮に。
兄が出ていった日の夜、屋敷は驚くほど静まり返っていた。
私の家族、私も含めて問題ありすぎじゃない?
どうしたらいいの?
断罪まではまだある。
千里の道も一歩より。
まずは、お父さまと向き合おう。
そしてお母さまと話してみよう。




