異世界に備えて、パンを自作してみる ~ ただしオーブンはない
最近、これまで自分では作ったことのないような手間のかかる料理に挑戦していまして、いろいろと試行錯誤しています。
ラーメンのスープ作りに凝っているのは以前書きました。そちらが安定して作れるようになったので、じゃあ次に何に挑戦してみようかというところで、パンはどうだろうと思いまして。
パン作り、前から気になってはいたんですね。なんといっても、異世界転移/転生モノの定番ネタですから。米は見つからなくとも、なぜか小麦は当たり前のように存在しているナーロッパ世界には必須と言えます。一応、底辺ながらも細々とお話を書いてる身としては、非常に興味深いネタです。
しかしながら、うちにはオーブンがありません。あるのはコンロ内蔵のグリルとオーブントースターのみ。ホームベーカリーなどというしゃれた機械もありません。
ちゃんとしたオーブンがなければパンは作れないと思っていたので、これまでパン作りは除外していたのですが。
そんなときに、「フライパンでパンを焼く」という動画を見まして。
固定観念が吹き飛びました。
なんでも、世界大戦中に前線で兵士がやっていた方法という触れ込みでして、すごくアウトドア向きというか、サバイバル系です。異世界小説において、ロクに道具が揃っていない初期の状況にも応用できそうなところがナイスです。
調べてみると、オーブン以外でパンを焼くというのは主流ではないものの、それなりにレシピがあるようですね。一部の薄焼きのパンは鉄板やフライパンで焼くものみたいですし、また、カレーパンなどの揚げパンや蒸しパンといった焼く以外の方法もあります。
極論すれば、広義のパンとは小麦などの穀物の粉に水その他を加えて、こねて、焼いたものということになりますかね。
そこさえクリアできれば、パンは作れるわけです。
オーブンでなくとも加熱はできる。ならば、うちでもパンを作れるのではあるまいか。
フライパンで作れるのなら、グリルやオーブントースターでもいけるかもしれない。なんだったら、カレーパンなど揚げる系統のパンだって可能やもしれぬ。
そう思いまして、チャレンジしてみました。何事もやってみなければわかりませんから。
創作に盛り込むにも、実体験があるとないのとでは、描写のディテールに差が出てくるかもしれませんし。(ただし、本筋から逸脱しすぎていればカットする羽目になりますが)
以下、やってみたことや所感などをつらつらと書いてみたいと思います。
あくまで素人の筆者が、一般的でないやり方で、試行錯誤していったものなので、すごく稚拙というか雑だとは思います。本職の人やこだわりのある人からすると、いろいろツッコミどころ多数かもしれませんが、そこはまあ生暖かい目で見ていただければ。
○材料
「漢は黙って目分量。体で覚えろ。異世界にグラム表記の重量計なんざねえ」
……と言いたいのは山々です(なにぶん、大雑把な性格なもので……)が、いかんせん最初から何の指標もなしで挑戦するのは無謀です。特に、発酵やこねてグルテン生成といったプロセスは経験がなく、見当がつきません。
そこで、分量は重さじゃなく体積、つまりはカップ何杯分かで大雑把に測ってます。カップも軽量カップではなく、普通のカップでやってます。(なにぶん、大雑把な性格なもので……)
小さじ○杯とかだって大雑把な体積ですし、お米を炊くときもカップで計量するので、まあこんなのでも大丈夫でしょう。
小麦粉をカップに軽く盛ったときと、ぎゅうぎゅうに詰め込んだときとでは、実際の量には若干の差が出てきますが、素人のパン作りではそこまでの厳密さはいらない気がします。入れたカップを軽くトントンと叩いて均すくらいで十分かと。
材料はオーソドックスに強力粉、ドライイースト、砂糖と塩少々にぬるま湯、それだけです。パンの種類によっては、水のかわりに牛乳を入れたり、オイルを少量くわえたり、小麦以外の穀物を使ったりしますが、あくまで基本はこの5つなんじゃないでしょうか。
この中で一番難しいのは水の分量ですかね。多すぎると生地がべちゃべちゃになって収拾つかなくなりますし、少ないとぼそぼそになる。
いろいろ試したところ、カップ1杯の小麦粉に対して、だいたいカップ4割弱くらいの水がいいのかなと。
その量だと入れた直後は水が全体に行き渡らなくて、部分的にパサパサボソボソしてたりしますが、こねていくうちに全体に浸透していきます。むしろ最初に完全に行き渡らせる程に入れてしまうと、後でユルユルの生地になってしまいます。
まあ、レシピによっては、あえて多目の水でユルい生地を使う場合もあるようですが。
酵母は素直に市販のドライイーストを使いました。3gの小袋が10個入ってるタイプです。
量としては、小麦粉カップ1杯にドライイースト小袋半分くらいでいいようです。
酵母はふんわりしたパンには必須で、異世界モノではこれを用意するのが肝、みたいなところがありますが、いかんせん初心者なのでそこまで手は出せません。全部手探りでは、失敗しても原因がわからなくなります。菌類は失敗すると怖いですし。
そんなわけで、まずはパン作り全体の流れを把握するのを優先してます。
○こねる
YouTubeの料理動画にはお手軽だったり、時短なこね方というのも何種類かあったのですが、その中でこれはと思ったのは、混ぜてこねて発酵させるまでを全部ビニール袋の中で済ませる方法です。
ビニール袋に材料を入れて、口を閉じ、しばらく置いてから、あとはひたすらビニール袋ごと揉んでいきます。20分くらい揉み続けたほうがいいでしょうか。
この方法だとこねる最中に手も周りも汚れずに済みます。
薄いビニールだと破けそうなので、厚めのものがいいです。あと発酵すると膨らむので、その分余裕のある大きさが必要です。
うーん……揉んだりとか、膨らむとか、薄いと破けそうとか、何だか違うものを描写しているような気がしてきました。夜想曲や月光ではないんですが。気のせいでしょうか。気のせいですね。
それはともかく。
この方法は異世界では使えませんが、十分にこねた生地がどんな感触になるのかを知っておくにはちょうどいいですし、なにより手軽です。
○発酵
発酵時間についてはレシピによりほんとバラバラで、正解というのはわかりません。温度によっても違ってきます。
理屈としては生地に混ぜ込んだ酵母菌が分裂・増殖させ、生地の中で炭酸ガスを発生させる、ということになるんでしょうか。そのため、酵母菌が活動しやすい暖かい環境において、数時間寝かせておくわけです。そこだけ守れてれば、けっこうアバウトでいいのかなと。
ただ、こねて発酵させて、パンの形に成型した後にも1~2時間置いたほうがいいようです。レシピによっては成型から焼くまで30分かそれ以下としているものもありましたが、それでやってみると焼いてるときにあんまり膨らまないみたいです。形をつけるときに、いくらかガスが抜けちゃうんでしょかね。
前準備がこんなところで、後は焼いていきます。
焼く器具ごとに、それぞれ見ていきましょう。
○コンロ付属のグリル
まずは魚焼き用のグリルで、専用のココットプレートという蓋つきの金属製の皿を使って焼いてみました。
グリルとオーブンって似たようなものかと思ってたんですけど、実は違いました。オーブンが全体を一定の温度で加熱するのに対し、グリルは直火で炙る形になります。
そのため、グリルではけっこう加熱にムラがあって焦げやすいです。ココットプレートである程度緩和できますし、アルミ箔で蓋をして直火を当てないようにする方法もあるのですが、それでも火加減は調節できる最弱まで落とさないとダメですね。
あと、コンロのグリルだともう1つ問題があって、高さがあんまりないことです。ココットプレートを介すると、高さはさらに狭まります。
生地は焼いてる最中にも膨れるのですが、膨れすぎてコットプレートのフタやグリルの上面に届いてしまうことがあります。そのため、厚みのあるパンは無理となります。
平べったくすれば一応は焼けますが、焼きムラも考えると、あまりグリルはパン焼きには向いてないようです。
唯一例外的に、ピザはいけます。バッチリです。
生地も薄く引き伸ばすので、8~10分ほどとわりと短時間で焼きあがります。直火の当たる表面はほどよく焦げ目があって、裏面もかりっとしてておいしいです。
○フライパン
円形に、平べったくまとめたものをフライパンに入れて、蓋をして弱火で焼いて、ひっくり返してさらに焼きます。
途中でひっくり返すのは、フタの内側があまり熱くならず、上面が焼けないからです。かといって、火力を上げると下側が焦げてしまいます。
そのため、焼き色がつくのは上下の面だけで、側面はほんのり黄味がつく程度です。ぱっと見はやたらデカい「おやき」か「スフレ」みたいな感じになってしまい、少々パンっぽさが足りないかもです。
まあ、見栄えはともかく、中身はちゃんとパンになってましたけどね。ただ、やっぱりこう、なんか物足りない気はします。
○オーブントースター
うちにあるのは1000wオンリーのタイプで、サーモスタットも固定なので、細かい温度調節はできません。
一般には、1000wだと230℃くらいらしいのですが、庫内の空気で温めるのと、赤外線を直接当てるのとでは、グリルと同様に焼け方にだいぶ違いが出てきそうな気がします。
それで試しに、ヒーターの赤外線を直接当てた場合と当てなかった場合とを比べてみました。
ひとつの生地の片側半分をアルミ箔で覆いまして、半分は直にヒーターにさらしました。
結果を比べてみると、直接の方は狐色に染まりましたが、カバーした方はほとんど白いままでぜんぜん焦げ目がついていません。
その一方で、カバーした方が1~2割ほど大きく膨らんでいます。直接だと色合いは良くても、あまり膨らんでいないのです。
ヒーターを直接当てると、生地が膨らみきる前に表面が焼き固まってしまい、それ以上膨らまなくなるんでしょうかね。当然、膨らみきってないので、食感は落ちます。
あと、ヒーターは上下についてるので、下側も直接当てないほうがいいです。たぶん、先に下のほうが焦げるので。
アルミ箔をしくと生地がくっついてしまうので、耐熱皿か、金属製のプレートに生地を乗せて焼くのがよさそうです。
あれこれ試した結果、最初の15~20分はアルミ箔でカバーをして熱し、最後の5分ほどはアルミ箔を外して焼き色をつける、というのが一番良さそうです。
こうすると十分に膨らんだ上に、上面もいい感じでこんがりと焼きあがります。
たぶん、オーブン以外で焼くなら、この方法が一番なんじゃないかと思います。
○揚げパン、というかカレーパン
生地はそのままで、具には冷えたままのレトルトカレーを入れて包み、パン粉は直接生地に引っ付けました。
問題は揚げるときでした。包み方が悪かったのか、揚げてる最中に生地が破れて、中身のカレーが高温の油の中にこぼれ出してしまい、盛大に爆ぜました。それも1回で終わりではなく、内圧が高まったせいか次から次へと中からカレーが噴き出てきて、その度にボンッボフッと連続で爆ぜまして。
まあ、普段揚げ物をしていれば油が爆ぜるのはよくあることですが、このときの爆ぜ方は尋常じゃなくてですね。油の飛び散り方がハンパじゃなく、正直、ヤベェと思って肝が冷えました。
一応、揚がったモノはきちんとカレーパンになっていて、味も上々ではあったんですが、おっかないんで二度とやりたくないです。てか、普通に店で買ったほうがいいですね。労力と油の使用量に見合いません。
あと注意点としては、揚げるときにはパン生地が予想以上に膨れ上がってしまうことでしょうか。生地を小さめに包んだほうがよさそうです。
○まとめ
そんなこんなで、いろいろと試行錯誤してみたものを書いてみましたが、いかがでしょうか。失敗も多かったですけどね。
店で売ってるような、艶のあるキツネ色に焼き上げるのは、ちゃんとしたオーブンがないと無理っぽい気がします。均等に熱を加える、というのがオーブン以外ではネックになるんでしょうかね。
でも。見た目は微妙ですが、中身はちゃんとパンと呼べるものは作れました。外側はカリっとしてて、中はモチモチふわふわな感じで、予想以上においしかったです。焼きたてほやほやだったから、というのもないではないですが……。
まあ、パン作りはなかなか奥が深いようで、まだまだ試行錯誤しつつ挑戦していきたいと思います。
〔了〕
お読みいただきありがとうございます。




