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男女比1000:1の女性至上主義国家の恋愛スキル皆無の冒険者パーティー、男が希少な男女比1:100な現代ダンジョン社会に転移したらモテすぎて困惑しています  作者: Ciga-R
第一章 戦律の五星姫編

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第30話 抱え方は事故、想いは本気



 群星リンクの選ばれし百人……百花繚乱のガチ勢たちは、時が止まったまま、息をひそめてボス部屋の映像を見守っていた。


 誰もが、画面の向こうに広がる空気の震えを感じ取っていた。うたたの足取り、魔石の光、ストレイの視線。そのすべてが、何かを予感させるように、静かに、しかし確実に積み重なっていく。


 そして、うたたが、ふいに傾き、ストレイが、迷いなくその身体を受け止めた瞬間。


 画面の中で、ふたりの世界が生まれた。


 その光景は、あまりにも美しく、あまりにも尊く、まるで一枚の絵画のように、完璧だった。


 それは、コメントを打つ手を止め、ただ画面をみつめるほどの衝撃を彼女たちに与えた。だけど五星姫ガチ勢を自認している百花繚乱のメンバーたちの誰もが内心では嵐が吹き抜けていた。



(百花繚乱・内心の叫び)


『うたた様あああああああああああああああああああああああああああ!!!!』

『ストレイ様の無詠唱浮遊制御からの自然なお姫様だっこ……尊すぎて息が止まった』

『あの一連の流れ、完全に芸術。もう絵画。いや、神話』

『あの距離感、あの視線、あの香りの描写……恋が始まる瞬間って、こういうことなんだ……』

『「落ちなくてよかった」って、そんなセリフある!? 心臓が落ちたわ!!』

『あの一言で恋が始まるって、もう少女漫画の神が降りてる』

『ストレイ様、あんた……あんたって人は……!』

『うたた様の「もうちょっとこのままで」って、破壊力が核レベル』

『百花繚乱、今この瞬間、全員がストレイ様に恋しました』

『尊すぎて語彙力が死んだ……ありがとう……ありがとう……』


 うたたとストレイの世界が、まだ空気の中に残響を残していた。誰もがその余韻に浸り、胸の奥をじんわりと温めながら、次の言葉を探していた。


 そんな中、ふいに斗花が、ぽつりと口を開いた。


「クラウ……なら余裕でオレ……ほらオレってこの中では女にしては、一番ガタイがいいだろう? クラウならオレでも抱っこできるんじゃないかな~なんてな」


 その言葉に、場の空気がぴたりと止まる。


 冗談とも本気ともつかないその一言が、まるで水面に落ちた小石のように、静かな波紋を広げていく。


 クラウの目が、何度も宙をさまよう。斗花の笑みは余裕に見えて、どこかぎこちない。そして、クラウの顔が、見る間に真っ赤に染まっていく。


 誰もが、息を呑んだ。


 これは、何かが起きる。何かが、確実に、起きてしまう。


 そして、クラウが、意を決して一歩、前に出た。


「で、で、では……失礼します!!」


 その瞬間、百花繚乱の誰もが高速でコメント欄を投稿しだした。



 百花繚乱(ガチ勢百人・コメント欄)


『って、ちょっと待って!?!?!?』

『斗花姐御!?!?!?!?!?!?』

『クラウ様あああああああああああああああああああああああ?』

『なにその抱き方!? 丸太!? 丸太なの!?』

『お姫様だっこじゃなくて、完全に材木運搬スタイル!!』

『クラウ様、抱き方ァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

『姐御の「ちがうううううう!!?」が最高に乙女で可愛すぎて死んだ』

『クラウ様、真面目すぎて逆に罪深い……』

『女帝の「女に恥かかせるなよ……」が、もう、もう……尊い……』

『鉄拳の女帝の顔がトマト通り越して唐辛子レベルで赤いの、可愛すぎる』

『クラウ様、乙女心に無自覚で全力で刺してくるのやめて!?』


 斗花の絶叫が、ボス部屋に響き渡った。


「ち、ちがうううううう!!?」


 丸太のように脇に抱えられたその姿は、あまりにも予想外で、あまりにも豪快で、百花繚乱のコメント欄は、爆笑と悲鳴で埋め尽くされた。


 けれど……その中で、クラウは真剣だった。騎士として、尊き御方の言葉に応えられなかったことを、心の底から悔いていた。


『お、女に恥かかせるなよ……』


 その小さな声が、クラウの胸に深く刺さる。そして彼は、もう一度、決意を込めて動いた。


 今度は、丁寧に、慎重に、けれど力強く。


 斗花の身体を、そっと抱き直す。


 背中と膝裏に、腕を回す。重さを確かめるよりも早く、体勢を整える。


 その動きは、どこまでも自然で、どこまでも優しかった。


 気づけば、斗花は、ちゃんとしたお姫様だっこの姿勢で、クラウの腕の中にいた。


 笑いの余韻が、ふっと静まり返る。


 斗花の頬が、見る間に赤く染まっていく。そして、彼女の胸の奥に、さっきまでとは違う種類の熱が、そっと灯り始めていた。


『そして……そして……』

『ちゃんとお姫様だっこされた姐御……』

『「おもいですか……光栄です」って何ィィィィィィィ!?!?』

『クラウ様、真面目すぎて逆に恋愛兵器なんよ……』

『斗花姐御の「重くないか?」って、乙女すぎて心臓がもたない』

『あのやりとり、尊さと笑いが同時に来てて情緒が死ぬ』

『クラウ様、天然でプロポーズみたいなこと言わないで!?』

『女帝の「はああああああああ!!?」が完全に初恋の叫び』

『顔真っ赤な姐御、可愛すぎて画面が爆発した』

『クラウ様、あなた……そのままでいて……でもちょっとだけ自覚して……』

『この二人、尊いのにテンポがギャグで最高すぎる』

『百花繚乱、今この瞬間、全員がクラウ様の想いに抱かれました』

『このシーン、額に入れて飾りたいレベルの名場面』

『斗花様、次はちゃんと「重くない?」じゃなくて「好き」って言って……!』

『クラウ様の「光栄です」が、心に刺さりすぎて抜けない……』

『この事故、永久に続いてほしい……』

『顔が……顔が……! はにかんでるうううううううううううう!!!!』

『クラウ様の腕の中で、あんな顔する姐さん、初めて見た……』

『あの距離、あの空気、あの静寂……完全に恋のはじまり』

『クラウ様の「光栄です」からの、あの表情……もう、結婚式かな?』

『女帝、あんなに強いのに、あんなに可愛いって……反則です』

『クラウ様、ストレイ様……無冠の灯、恋の火種が大炎上してるぞ……!』

『百花繚乱、今この瞬間、全員が酸欠です』

『尊さと笑いとときめきで、情緒がジェットコースター』

『この回、永久保存版。何回でも見返す』

『ありがとう……ありがとう……この事故に感謝……』



 九重すみれの内心の叫び


『……っ、うたた……!』

『また、またそうやって……! みんなの視線をかっさらって……』

『あたしだって……あたしだって……』

『あたしだって、あんなふうに……! お姫様だっこ、されてみたいのに……』

『あんな完璧な角度で、あんな自然な流れで、あんなに優しく……』

『ずるい……ずるいずるいずるい……』


(でも……違う……)

(あたしがされたいのは……)

(魔術師でも騎士でもない……)

(あたしを抱き上げるのは……それは)


『紫乃お姉様……!!』

『お姉様に……お姉様にお姫様だっこされたい……』

『あの凛とした横顔で、無言で抱き上げられて、耳元で「大丈夫、すみれ」って囁かれて……』

『そのまま、あの完璧な腕の中で、ふわって浮かんで……』

『あああああっ!? あっ……』

『お姉様……あたし、やっぱり……お姫様だっこされたいです……!』

『うたたにまた負けたくない……でも、あたしが見てるのは、あの人だけ……!』

『紫乃お姉様……あたし、いつか……』

『お姫様だっこされるその日まで、絶対に諦めませんから……!』

『だからお願い……その腕で、あたしを……』


 群星リンクの管理者室の片隅で、すみれは静かに拳を握りしめていた。その瞳には、うたたに対するぬぐい切れない棘も悔しさも、憧れも、そして、これだけは変わらぬお姉様への愛が、確かに燃えていた。



 九条財閥本社、最上階。


 静流は、執務机の前に設えられた一人掛けの椅子に腰を下ろし、音も立てずに紅茶のカップを口元へと運んだ。


 画面の中で、ストレイとうたた。クラウと斗花。二人の漢が、迷いなく女性を抱き上げる姿が映し出されている。


「……なるほど。白印様とは、また別の系譜ね」


 華奢で可憐な守られる側としての男性像が主流となった現在、この抱き上げる者としての在り方は、時代の流れに逆らうようでいて、とても新鮮だった。


「……ニーズは、あるわね。だとしても」


 視線が、画面の片隅に映るフェルマの姿を捉える。


「九条にとって、最優先は変わらない」


 再び、紅茶を口に運ぶ。その動きは、最後まで一切の音を立てなかった。



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