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16歳、はじめての宗教勧誘体験談(ノンフィクション閲覧注意)

作者: 心晴

すべてこれは事実、閲覧注意。

昨日久しぶりに中学の友達から連絡が来ていた。

「うちに来ないか」って誘われた。「ママの友達もいるけどいい?」と言われて、問題無かったからそのまま行くことにした。


今日向かう。その子は中学の親友だ。くつろいで、私と親友と親友のお母さんとその友達の4人で話していた。束の間の、穏やかなひとときである。

「彼氏できた?」

「まだ。そっちは?」

「こっちもだわ笑」

テーブルに並べられたお菓子をつまむ。すると、親友の母が呟いた。

「良かったね、優愛も幸せになれたね」

「あ…」

これには心当たりがあった。親友の優愛は一時期不登校気味だったのだ。優愛の母の友人が口を開く。

「やっぱり高校生活も上手くいったりいかなかったりよねぇ」

「そうですね。大変なこともありますね。」

「でも、優愛ちゃんはアレをやったから、今は元気なのよね?」

「はい!」

話が盛り上がってきた。いや、進んできた。少しずつ、少しずつ、雲行きが怪しくなってきた。

「念仏を唱えると幸せになれる」とか。

「一緒にちょっとやってみない?」 って言われたからそれだけならってことにした。これ以上はまずい感じがした。観光気分で、これで終わりにしよう。


念仏をやってみる、から本部に行ってみる、に話が変わり、いつの間にか車に乗せられて30分。

変なところに連れて行かれた。


着くと、マスクを付けさせられた。

立派な建物で庭には小さな滝と蓮の花。建物に入ると一面がガラスと大理石だった。

「そういえば年賀状とかも送りたいし住所教えてほしいな」

友人の母にそう言われ聞かれたことに全て答えた。住所。生年月日。電話番号。この前に気づくべきだった。念仏を唱えるとは、このおかしな宗教に入るということだった。視界の端にとらえたのは「入信報告書」の五文字。そこに私の個人情報が書き綴られていく。そこで不信感が恐怖に変わった。

「あっあの…!」

声が裏返る。マスクをつけていて良かった。これまで浮かべていた愛想笑いさえ造れなくなっている。

「母から、電話がかかってきたので、失礼します。」

かかってきてなんてなかった。1秒でも早くあの3人から離れたかった。知性を感じる優愛の母の友人の史田さん。包容力のある優愛の母。中学生活のほとんどを共にした優愛。3人から離れ、母にすぐ電話をかける。幸い、足を踏み入れたのはまだ入り口だけだった。早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て早く出て

「っお母さん!」

状況を説明した。

「迎えにいくね、それまで外で待ってて。」

その声に安心する。大丈夫、私は闘える。


母が来るまでの間、「仏様は私たちに教えを救いを」「とても有り難いこと」と話し続ける史田さん、にこにこと屈託なく微笑み頷き続ける優愛の母、何も言わない優愛と一緒にいるのは苦しかった。母が迎えに来ることを伝えても引き下がらず、「お母さんに相談したの?」と痛い所を突かれる。

「いえ、GPSを見た母から電話がかかってきたんです」

もちろん嘘だ。

「お母さんを説得させて、本当に素晴らしいものだから…!」

ここは敷地内、誰も止めない。ここでは私がおかしいのだ。「有り難い教えを受け入れること」を渋る私が。母は機転を利かせて父も連れてきた。あっさりと引き下がられ、私はその後母の車で帰宅した。


ショックだった。友達が宗教二世だったこともあるけど、私は今までただのターゲットだったのか。遊びたかったのではなかったのか。私は親友だった優愛の家に持っていったバッグの中のゲームコントローラーを、まだ取り出していない。


ねぇ、優愛。遊びたかったんじゃなかったの。私が行かないと言ったらどうするつもりだったの。だって、毎週日曜日に行かなければならないっていう決まりなのに。はじめからそのつもりだったの。


入信報告書は、今も優愛の母が持っている。

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