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「お義父さん……」


 幸恵が泣き崩れた。

 入院中は父が亡くなったことを知らせていなかった。母体と胎児に何かあったら大変だからだ。それに、出産後も喜びを噛みしめている幸恵を悲しませたくなかった。だから、父の死を幸恵が知ったのは、退院して華村酒店へ子供を連れて帰った時だった。既にお通夜も告別式も終わっていた。


「もう少し……」


 また泣き崩れると、労わるように母が肩を優しく抱いた。


(しょう)ちゃんを見せてあげて」


 幸恵は頷いて立ち上がろうとしたが、少しよろめいた。その体を受け止めた母が手を貸して立ち上がらせると、幸恵は手の甲で涙を拭って無理矢理笑みを浮かべてから、翔を抱き上げた。


「お義父さん、翔ですよ」


 遺影に子供の顔を近づけた。父がこの世を去った1時間後に生まれた初孫だった。目元や唇は父を彷彿とさせ、まるで生まれ変わりのように思えた。


 そんな我が子に『翔』という名前を付けた。

 翔、それは、飛翔の翔。

 想いを込めた名前だった。

 醸は遺影を見つめながら心の中で呟いた。


「オヤジ、ありがとう。この店を命を懸けて守り抜いてくれて、本当にありがとう。オヤジの想いはちゃんと自分が引き継ぐからね。そして、しっかり翔にバトンを渡すからね。これから世の中が大きく変わっていくと思うけど、自分も翔も世界に目を向けて羽ばたいていくからね。

 それからオヤジ、自分にジョーという名前を付けてくれてありがとう。外人でも発音しやすい名前を付けてくれたお陰で、フランスでもアメリカでも親しく接してもらえたよ。俺が息子にショーと名付けたのもオヤジの意思を継いだからだよ。ジョーと同じで外国人にも呼びやすいと思うからね。俺以上に外国の人たちから親しみを込めて呼ばれるようになると思うよ。

 オヤジ、オヤジの想いは翔にちゃんと引き継ぐからね。だから、安心して眠ってください」



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