表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/50

第9話 ダンジョン村

 多くのグリーン級、ブロンズ級冒険者は素材はほとんど持ち帰らない。

 心臓付近にある魔石だけ拾って帰ってくることがほとんどだ。

 モンスター素材はかさばる割にはあまり儲からないものが多いためだ。


 荷物持ちは登山の役職にならいポーターと呼ばれる制度もあるにはある。

 これは中学を卒業した十五歳以上で登録制になっていて、ホワイト級と呼ばれている。

 ホワイト級冒険者の戦闘は一応、規約で禁止されているんだけど、緊急時はもちろん例外的に戦闘することも許可されている。

 中にはこのホワイト級冒険者を安く使って戦わせている、制度の悪用をしている人たちもいるらしい。

 それでもポーターは必要なため、今のところ黙認されているのが実情だった。

 一年以上在籍したポーターは十八歳になり、再び講習を受けるとブロンズ級に直接上がれる。

 グリーン級にならなくていいので、その目的で早くからポーターをしている人もいた。


 僕たちはモンスター素材もマジック・バッグがあるので持って帰れる。

 ポーターも雇う必要がない、のだけれど……。


「いひひ、お兄ちゃん」

「なんだ、マナミ」

「あのねあのね、じゃじゃーん。私ホワイト級冒険者。登録しちゃった」

「ポーターか。危ないからダメって言ったのに」

「いいじゃん。戦闘しなければいいんでしょ」

「その通りだが、なかなかそうはいかないというか」


 妹と視線を交差させる。

 すると妹マナミがにやりと笑って見せる。


「お兄ちゃん、私、雇ってよ」


 ポーターのホワイト級はブロンズ級以上がいるパーティーと一緒でなければ、ダンジョンへ入ることは禁止されているのだ。

 登録から間もないグリーン級もポーターを雇う資格がない。

 つまり、一人で見学したいとか言ってもダメってこと。

 ポーターでソロとかはできない仕組みだ。


 だからポーターになったマナミは誰かに雇ってもらう必要がある。

 しかし、基本的に縁故、つまりコネがほとんどで、自由に雇ったりする支援制度はない。

 ということでマナミのコネといえば僕しかないわけだ。

 ネットとかで探す人もいるにはいるが、トラブルになりやすいので推奨はされていない。


「ダメって言いたいけど。他の馬の骨とかに雇われるよりは、マシ、か」

「そうだよぉ。変な男の人に雇われて、あんなことや、こんなことになったら、責任取ってくれるの?」

「う、そう言われると」

「でしょ。実質、お兄ちゃんしかいないじゃん」

「まあ、そうだな」


 ということで後日。


「あーあー。リオンのダンジョン配信、はじめます。今日はポーターとして僕の妹、マナミがついてきてます」

「えへへ、お兄ちゃんの妹でマナミです。よろしくお願いします」

『かわいいお兄ちゃんに妹までくぁわいい』

『かわいい姉妹だか兄妹だか、もう分らんな』

「ということで、リオン、ミリア、マナミの女の子三人でお送りします」

『ぱふぱふ』

『いえい!』

『よし、いいぞ』


 ドローンが僕たち三人を順繰りと見渡す。

 マナミも革鎧を装備している。

 革鎧といえば、この前、ルミナスと一緒にポーターをした。あれから三回ほどお世話になっていた。

 ちょっとお金が入ったので、マナミも含めて三人ともオーガの革鎧に更新してある。


「ルミナス様様で、オーガの革鎧です。ブイブイ」


 もちろん自分たちでオーガの皮を持ち帰ったものを加工してもらったのだ。

 またマジシャンズ・ハンド製の一品だった。

 僕たち女の子用なのでサイズが小さく、オーダーメードだった。

 汎用品は男性サイズで、百六十センチ以上からなので、百五十センチくらいの僕たちには大きいのだ。

 それに胸も少し出てて形も違うんだそうで。

 一着十万円くらいだったかな。服としては高いが、鎧は重要な防具なのでケチケチしてはいけない。


「今日は三階から奥、東地区へと延びるダンジョン村へ向かいたいと思います」

『えっと東地区ってなんだっけ』

『日本平ダンジョンは東西に広がってて、入り口は西地区にあるんだ』

『そそ。それで三階の東西の東地区の入り口にダンジョン村がある』

「解説ありがとう。ダンジョン村っていうのはダンジョン内の拠点のことだね」


 ダンジョン村には冒険者ギルドとコンビニ『ギルド亭』がある。

 ギルド運営のコンビニだね。

 コンビニだけど休憩室とかもあって、寝泊りや簡易的な食事もできる。

 村といっても住民とかいなくて、設備も最低限しかない。

 入り口にはギルドに雇われた警備が立ってるくらいだろうか。

 この警備もギルド職員だったり、冒険者が雇われれてやっていたりまちまちだ。


 今日は土曜日。学校もお休みということで、昼から潜っている。

 順調にスライムやゴブリンなどを倒して進む。

 ゴブリンは魔石以外特に有用な素材もない。

 皮も薄くて使い物にならないのだ。

 もちろん不味いゴブリン肉を食べる習慣はない。


「ディメンジョン・イーターいないねぇ」

「いないねぇ」

「そんなすぐいないでしょ。お兄ちゃん」

「そりゃね」


 ブラック・マウスがけっこう出てくる。

 この大型のネズミは白ネズミがディメンジョン・イーターなのに対して黒っぽいのでそう名付けられている。

 同じネズミでもマジック・バッグにはならないのでハズレ枠である。

 それでも毛皮が初級用防具になるので売れるには売れるので、皮を剥いでいく。

 肉は食べられないことはないが、あまり食用にする文化が発展しなかった。

 ネズミ肉だしね。

 皮を剥ぐ作業はちょっとグロテスクで妹が嫌な顔をしたが、それも次第に慣れてきたようだ。


「ブラック・マウスばっかりだね」

「まあ、このあたりじゃね」


 妹が不満気だが、僕は軽くあしらう。


 そうして進むこと数時間。

 本来ならマジック・バリアが切れる前に戻らなければならない。


「ほら到着」

「おお、コンテナハウス? みたいな何かだ」

「そそ。これがダンジョン村だよ」


 何人かがすでに休憩していた。

 僕たちも中へと入る。

 ここでアイテムを売却することもできるが、手数料がかかるため、マジック・バッグに余裕がある僕たちはそのまま持って帰る。


「重要なのは、ここにもギルド職員のマジック・バリアの係員がいるんだよ」

「なるほど。それで活動時間が大幅に伸ばせるのね」

「そういうこと」


 妹がふむふむと頷いた。

 時間はもう午後六時ごろだったので、ここでご飯にする。


「名物はトカゲ丼だけど、どうする?」

「え、トカゲ?」

「はい?」


 女の子二人は頭にクエスションを浮かべていた。


「正確にはアイス・リザードのお肉なんだけど」

「あぁ、トカゲ系モンスターのお肉なのね」

「うん。うま味もあってけっこう美味しいから、おすすめなんだけど」

「じゃあそれで」


 ということで三人でトカゲ丼を食べる。

 甘辛い味付けにうま味のあるお肉。

 それも手に入りやすく安いため、これでもかとお肉がたっぷり乗っている。

 逆にご飯は外からの持ち込みなので、控えめだ。

 それにお味噌汁。

 ダンジョンに生えるキノコが入っており、赤味噌味でなかなか美味しい。


「なにこれ美味しいです!」

「外では食べられないの?」

「ん? 飲食店でもたまに売ってるよ。ただ外だとちょっと高いんだ」

「なるへそぉ」


 妹もミリアも感心していた。


「ごちそうさま!」

「ふふ、ごちそうさまです」

「ごちそうさまでした」


 丁寧語なのはミリアちゃんだ。

 ご両親は失業していたと言っていたけど、育ちの良さを感じる。

 高校もけっこういいところみたいだし、僕たち庶民とは少し違いそうだ。


 輸送するのも大変そうだが、専門のマジック・バッグを持ってる業者がいて、その人たちが輸送を担当しているため、水や調味料、雑貨、ポーションなどいろいろなものを持ち込んでいる。

 帰りはゴミのほか、トカゲ肉と魔法キノコを満載して戻ってくるらしい。


「それじゃ、午後は東地区だね。マナミ、大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

「ミリアちゃんは?」

「私も大丈夫です」

「んじゃ、東地区へ、レッツゴー」

「ラジャー!」

「はーい、お兄ちゃん」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ