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5話

臨戦態勢を取っているユウナ、サクラに対して棒立ちするカイ。


ーー怖い、殺される


目の前のメフィストに対して怯えるだけのカイにユウナの言葉は一切耳に入って来なかった。

ユウナとサクラは二人で倒そう試みる。

華で視界を塞ぎそこから光線を放つが見事に交わされてしまう。

「あなた方は邪魔です」

メフィストが指を鳴らすとユウナとサクラのみ地面に出来た空間に呑み込まれてしまう。

コツンコツンと革靴の音を鳴らしながらカイの周りをゆっくり歩き始める。

周囲の時間が止まったように温度、呼吸、音を感じ取れなかった。

「私は貴方を攫いにきました、なんでだか分かりますか?」

「なんでだ?」

震えた声のカイに歩み寄る。その不気味な仮面からは冷酷な笑みが見える。

「それは災厄の王が貴方の能力を欲しがっているからですよ、しかし貴方にそんな力があるようには見えませんね、現に貴方は今ただ恐怖しているだけの役立たず・・・なんですから」

ただ怯えるカイ。今も戦うことよりも逃げる事や後悔、死への恐怖で動けずにいる。

だが先日のリーダーの言葉がふとよぎる。


ーー「ユウナがここに来たのは10歳の時、両親が災厄の王に殺されてしまい、ここで引き取った、そこから彼女は努力を惜しまずにここまで強くなったんだ」ーー


ーーユウナもこの恐怖に打ち勝って戦っているんだ

ユウナはもっと幼い時に大切なものを失い、戦う覚悟を決めてここまで来た・・・

なんとなくだがその時の泣いている彼女の様子が浮かぶ。

「うるせえよ」

「はい?」

カイの拳が弧を描きメフィストへ向かって行く。

その目からは消えかけた闘志が再び蘇る。

失敗はしてもいい、ただ後悔のない道を選択する。

簡単に受け止められてしまったがミラージュで相手から隠れる事に成功する。


見たところ敵のギフトはワープであると推測出来る。

以前戦ったチンピラの数段は格上であろう。

神殿の柱の影に潜みただただ考える。

そして前回の模擬戦をイメージし目を瞑る。

メフィストは神殿の中央で指を鳴らすと先ほどとは比べ物にならない大きさのワープホールが出来る。

中から出てきたのは全長5メートルほどの大きさの首が3つある犬であった。

荒い鼻息を鳴らし、口からはよだれを垂らしいる。

「ケルベロス、隠れている奴を探しなさい」

バウと吠えると鼻で獲物を探し始める。

柱から飛び出る人影に対しケルベロスも勢いよく飛びかかるがそれはカイの作った幻影であった。

今ので位置はバレてしまい、メフィストが直接迫って来る。

腰に装着していた小刀を抜き構える。

その攻撃よりも早くカイを捉えようとするがそれは幻影であった。

カイの狙いはケルベロスであった。

勢いよくジャンプしケルベロスを切り刻む。

悲鳴の雄叫びをあげるケルベロスに対し追撃を図るがメフィストに阻まれる。

「なめていましたが思ったよりやりますね」

再度ミラージュを使い身を潜める。

ヒーローらしい戦い方とは思えないがこれでいい、全力で奴を倒すだけだ。


柱の影で呼吸を整えた後に再度交戦に出ようと柱から身を出すがそこにメフィストの姿は無かった。

「しかし、私に勝つのはまだ早かった見たいですね」

気づかぬ内に背後に回り込まれていた。

急いで小刀を振るうが交わされ顔面に見事な右ストレートが入る。

「ぐはっ」

血反吐を吐きながら転がっていく。

再度ミラージュを使い隠れるが気がつくと後ろに回り込まれる。

瞬間移動でないと納得がいかない速度であった。

幾度となく攻撃を喰らいボロボロになる。


「もうギフトを使い切ってしまいましたか、やはり期待はずれです」

意識が徐々に薄れていく。その足は震えており立っているのがやっとなことが分かる。

ーーここまでか

倒れそうになるカイの正面のには光が見える。

ーーなんだ?死んでしまったのか?

その光の正体は扉が開いたことにより差し込んできたものだった。

そこに立っていたのはリーダーのガイであった。

「待たせたな、大丈夫か?」

少し微笑んだ後にそっと倒れ込む。

「貴方も邪魔です」

指を鳴らす動作を見せたメフィストに対し能力を使う。

【グラビティ・フィールド】

メフィストは急に地面に伏しギフトが繰り出せなかった。

まるで鉛を載せられているかの様に身体が重い。

「そうか、貴方があのガイですね」

スタスタと歩み寄っていくガイ。

「そうだ、お前らのような犯罪者を裁く者だ」

「そうですか」

横から巨体がガイに衝突してくる。ケルベロスだ。

咄嗟に左の手でもギフトを使いケルベロスを圧縮させそのまま潰す。

口を開くメフィストに急いでとどめを刺そうとするが口からワープホールを作りだし間一髪脱出されてしまう。

「ちっ逃したか」

遅れてユウナが到着する。かなり急いで来たのか息が乱れている。

「敵はどうなりましたか?」

「間一髪逃げられてしまった、奴は初めて見た災厄の王の手先の新顔だろう」

「なんで奴らはカイを狙っているんですか?」

「確定的な事は言えないが奴らは神々のギフトを集めている」

「神々のギフトって神から与えられた能力ですよね?カイがそうなんですか」

「それは分からないがなんかしらの力を秘めているのだろう」

カイをそっと抱き上げる。

「とりあえず帰るぞ」

疲れ果てたユウナは考える事をやめて扉を出る。

そこには勿論来た道ではあるが山から見た良い眺めが映る。

良い眺めな事は認めるがこの山々を下るのは絶望的だ。

「それじゃあ気をつけてな」

そうゆうとガイはカイを抱えたまま空中に浮き颯爽と消えて行ってしまう。

「私も運んでいってよー」

その声はやまびこになり、ファレスチナ山脈に響く。

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