3話
カイは毎日ユウナと訓練を続けていたが、いまだに一度も勝てていなかった。ユウナの一点集中のレーザー攻撃に対してミラージュを使うと、彼女はすぐに範囲攻撃に切り替え、カイの位置がすぐにバレて倒されてしまう。「使い方がワンパターン」とユウナに指摘されるが、カイはどうしてもコツをつかむことができずにいた。
|焦⦅あせ⦆るカイはリーダーのガイにアドバイスを求めた。
「ギフトの使い方のコツか…正直、ギフトってそれぞれ能力が違うから、これっていうアドバイスは難しいんだけど、1対1の戦闘を意識するなら、自分の勝ちパターンを作り、それに乗せることが大事かな」
「その勝ちパターンが見つからないんですが…」
「それは訓練の中で見つけていけばいいさ。焦らなくていい」
「そうですね…」
ガイの言葉に納得しきれないまま部屋を出ようとしたカイだったが、ガイに呼び止められた。
「そういえば、他のメンバーが|帰還⦅きかん⦆したから紹介するよ。少し待っててくれ」
ガイに連れられて出迎えたのは、二人の新しい仲間だった。
「右から霧島サクラ、彼女のギフトは花を操る能力『|花乱舞⦅はならんぶ⦆』だ」
「よろしくね」
「次に風間リョウ。彼のギフトは大地を操る『ジ・アース』だ」
「よろしくな」
「よろしくお願いします」
カイは二人に|深々⦅ふかぶか⦆とお|辞儀⦅じぎ⦆をした。
「リョウ、早速なんだが、カイがギフトの使い方で悩んでるみたいだ。少し見てやってくれ」
「了解です、リーダー。訓練室に行くぞ」
「はい!」
カイはリョウとともに訓練室へ向かい、何度か模擬戦を行ったが、やはり全敗してしまった。
「能力自体はとても良いが、まだ使いこなせていないな」
「具体的にはどの部分でしょうか?」
「まず、お前のギフトはサポート向きだ。それを理解しろ。1対1の時は無理に戦わない方がいいだろう」
「そうなんですが…」
ふぅ、とリョウは一呼吸置いてから続けた。
「1対1を意識するのであれば、まず敵の行動をよく観察して隙を見定めることだ。お前のギフトは敵の隙を作りやすいが、逆にこちらも敵に隙を見せないようにしなければならない。自分のギフトの|射程内⦅しゃていない⦆で|翻弄⦅ほんろう⦆し、敵が隙を見せるまでじっくり待つんだ」
「はい! ありがとうございます」
「あと、基礎体力も大事だ。トレーニングルームで走り込みを怠るな」
カイはもう一度元気よく返事をすると、すぐにトレーニングルームへと向かった。
そこから1週間、リョウに毎日稽古をつけてもらい、修行に励んだ。
「最近、あいつ張り切ってますね」
「あいつってカイのことか? まあ、新人だしな」
「調子はどうなんですか?」
「なんだ、気になるのか?」
「ばっ、そんなことないです」
「まあ、そのうち分かるさ。なんせ目標は打倒ユウナらしいからな」
「そうですか…まあ、負けませんけど」
遠くからものすごい勢いの足音が聞こえてくる。
「ユウナ、一本勝負お願いしてもいいか?」
走り込みを終えたばかりのカイが、汗を|滴⦅したた⦆らせながら挑んでくる。
「あんた、汗臭い!シャワー浴びてきたら?」
「お願いします!」
カイは小さく丸まり、土下座をした。
「いいわよ、一回だけだからね」
訓練室の観戦席には、リョウ、ガイ、アキラが集まっていた。
「アキラさんは、なんでいるんですか?」
「なぜって、トレーニングルームでよく話してたからな。この勝負の行く末は男なら見届けねぇとな」
全力で応援するアキラは、熱気に満ちていた。
「実際のところ、どうなんだ、リョウ?」
「以前本人にも話しましたが、カイの能力はサポート向きです。ユウナには勝てないでしょう。ただ…」
「ただ?」
「面白いバトルにはなると思いますよ」
~戦闘開始~
開始の合図とともに、ユウナの手が光り始める。それを見たカイはすぐに回避行動を取る。しかし、ユウナの手数は多く、カイの回避も次第に間に合わなくなっていった。
(基礎体力はだいぶ鍛えたようね)
ユウナの能力「フォトンフレア」は光を自在に操るもので、手数や火力、攻撃速度、どれを取っても最強クラスだった。ギリギリのところでミラージュを使い、カイは身を隠す。自分の幻影を送り出すが、ことごとく消されてしまう。
身を隠しているカイに待ちきれなくなったユウナは、範囲攻撃の構えを取った。光の光線があたり一帯を蹴散らす。しかし、その瞬間、カイは上空に飛んでおり、被弾を免れていた。彼はそのままユウナに一直線に向かっていく。
【|雷閃⦅らいせん⦆】
攻撃が当たるかと思われたその直前、ユウナは光の速度で反応し、カイの攻撃が当たる直前に見事なカウンターを決めた。
「ぐはっ」
この勝負はカイの負けに終わったが、周りの評価は上がっていた。
「ユウナに雷閃を使わせるなんて、やるな。やっぱりカイは男だ」
地面に伏しているカイを見下ろしながら、ユウナが言った。
「少しはやるようになったじゃない」
「はは、そうだろ…」
そう言ったまま、カイは気絶してしまった。