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昆虫武神シンラ 第一話

以前pixivに投稿していた某東映特撮の二次創作の設定を変更し、オリジナルヒーロー作品として投稿しました。


あくまで趣味で投稿した作品です。続くかどうかわかりませんがよろしくお願いします。


残虐な描写や思想批判等もありますので、苦手な方は注意してください。


地球の地下深くにある謎の空間に、彼は眠っていた。別次元からの存在である彼は、先の戦いで受けた傷を治すために、この洞窟で長い眠りについていた。


彼が眠っている間、外の世界では多くの戦争、革命などが起こり、現在に至っている。その事を、彼は知っていた。


彼は岩石でできた繭状の棺の中で、この星の意志から外界の情報を得ていた。そして、その夥しい数の情報から、彼はこの世界の異変を知る事となる。


地球の記憶にアクセスする中で、異変の原因が自身に関係するある存在である事を彼は知った。


そして、異変を阻止する長い眠りから彼は目覚めた。


その姿は、人の形ではあるが、全身を皮膚が変化した銀色の装甲で覆われており、また、頭部は二本の触角が生え、顔つきも昆虫、特にカミキリムシに近い外観であった。


彼は洞窟の外へと一歩一歩、歩み始めて行った。


己の使命を果たす為に。




夜、とある通りを一人の女が歩いている。彼女は暗い夜道を慣れた足取りで歩いていた。


この通りの周囲には街灯が少なく、深夜になっては誰も通らない。


だが彼女は自宅アパートに戻る近道としてこの道を通っていた。


彼女がアパートの玄関に着いたその時、背後から触手が伸び、彼女の首に絡みついた。


触手の先端には鋭い牙があり、それは口吻である事を示していた。


そして、触手の口は 女の首筋に食らいついた。


女は悲鳴を上げることもできず、そのまま血液を吸収されていった。


闇を照らす月の光が触手の中を通る赤い血の流れを透かし、触手は脈動しながらゆっくりと吸血を行った。




翌日、アパート前で女性の変死体が発見された。


その死体は体内の血液と水分を殆ど失っており、完全にミイラ化していた。


外傷は首筋の円形の傷のみであり、当初この事件は猟奇殺人として捜査が行われることとなった。


この事件以外にも、ここ最近、若い女性ばかりが同様の手口で殺害される連続殺人事件が発生していた。


警察が猟奇殺人として調査を進めるが、一切の手掛りを得ることはできず、全て迷宮入りの事件となった。




しかし、全く別の視点でこの事件を捜査している者たちがいた。


彼等はその存在が公には公開されておらず、その存在を知る者は政府関係者など、ほんの数人しかこの世には存在しない。


ただ唯一判明している事は、彼らが警視庁、及び自衛隊からのエリート人員が中心で結成されており、彼らには最新の科学技術が提供されていた。


彼等の目的は、近年立て続けに発生している連続猟奇殺人事件及び、その事件に関与しているとされる危険対象の殲滅である。


その組織の名は、「夜警機関」である。


某施設地下に存在する夜警機関本部では、研究結果が報告された直後、組織内で会議が開かれ、猟奇殺人事件の犯人は人間ではないと判断された。


それと同時に、同組織内に存在するエリート部隊『ミラージュ』が、事件の鎮静化に向け動き出した。


ミラージュ、それは夜警機関内部において、敵対勢力との最前線での戦闘を想定されて結成された少数精鋭のスペシャルチームである。


彼らには戦闘に特化した組織であり、その武装面においても、最新鋭の技術、設備が提供されている。




夜警機関地下本部3階、ここにミラージュの作戦司令室が存在する。


夜警機関は本来、その存在を公には知られてはならないため、本部は某所に存在するとある大型施設の地下深くに存在している。施設自体も巨大で地下は3階まで存在している。


作戦指令室では、五人分のデスクのうち、一つの席にミラージュ専用の制服を着た20代前半と思われる青年が座り、パソコンに示された事件の被害者の遺体の映像を見ていた。


するとそこへ、もう一人の男が入ってきた。外見は30代前半であり、同じようにミラージュ専用の制服を着用している。男はパソコンの画面を見つめる青年に向かって話しかけた。


「如月、お前もシャワー浴びてきたらどうだ。被害者の画像ばかり見ていると具合悪くなるぞ。」


如月と呼ばれた男は、パソコンから男の方へと振り向き、席から立ち上がると、コンピューターのスイッチを切った。


「すみません草薙副司令。このところ同化獣による殺人が多く続いていて対策を練るのについ・・・。」


「お前の気持ちもよく分かるが、息抜きも大切だぞ。」


「はい。」


そう言われると、如月は作戦司令室を後にした。




夕暮時、高層ビルが立ち並ぶビル街。


とあるビルの屋上に、一人の男がいた。


男は黒い特殊スーツを着ており、更にその上から黒いロングコートを身に纏い、首にカミキリムシの成虫が入った琥珀のついたネックレスをかけていた。


男は屋上の端まで行き、夕焼け空を見つめていた。


「この世界の闇が動き出したか・・・。」


そう言うと男は後ろを振り返った。男の両目は赤く、人ならざる空気を漂わせていた。


男はしばらく歩き続けると、突然光に包まれた。


光が消えると、夕日が異形の存在の影を照らしていた。


その影は人型ではあるが頭部に二本の触角があり、昆虫のカミキリムシと人間を合わせたような姿だった。


そして、その影の主は、一瞬にしてその場から消え去った。




夜、ミラージュ作戦指令室では、所属する五人の隊員が集結していた。


そこでは、これまで発生した猟奇殺人事件について話し合われていた。


「第一の殺人は先月の三日に起こったわ。ここでは、20代前半の会社員の女性が全身の体液と水分を抜かれ、ミイラ化死体で見つかったわ。」


そう言ったのはミラージュの司令官である神山佑奈である。


三十代前半の彼女は元自衛官であり、災害発生時において的確な判断力で復興及び支援を進めたため、その才能の高さを買われミラージュに入った経歴がある。


「次の事例は同じ月に発生した女性の連続変死事件についてだけど、ここでは三人の女性が同様の死を遂げているわ。」


「三人とも、今回の事件と同じく全身の体液と水分を失ってミイラ化していた奴ですね。」

神山の事例を詳しく説明したのは元警視庁警部の須藤大河である。


彼も二十代という若さでありながらも優秀な才能の持ち主である。


彼は情報収集のプロであり、過去に数百件の不法サイトの摘発及び邪教集団の壊滅に貢献した過去があり、その経験が元でミラージュにスカウトされた経緯を持つ。


「警察の調査では、遺体から唾液のようなものが検出され、同化獣由来の物と思われる物質が検出されています。」


須藤の報告を聞き、ミラージュ副司令官の草薙祐一が話し始めた。


「今回の事件、それに先月の事件の事例から、同化獣が被害者を捕食したものと思われる。遺体の状況から、食人願望が強い個体であると推測される。」


「同化獣の数は遺体の状況から推察すると、恐らく一体でしょう。」


草薙の推察を、須藤が補足した。


そして、神山が公安を通じて得た情報を隊員達に説明した。


「警視庁が調査した結果では、殺害された五人の女性は、全員同じ有名企業に勤めているわ。社内でのトラブルに関しては現在調査中よ。」


神山の発言から、殺人の実行犯の動機が不明であることに、隊員達は憤りを覚えた。


「奴ら、何のために殺人を行っている?」


そう呟いたのは如月淳司である。


その一言に場の空気が一層重くなった。


暫く間を置いた後、神山が話を切り出した。


「これ以上被害を広げないために、上層部から同化獣殲滅の命令が出たわ。計画としては、囮を使って目的地にまで誘いだし、そこで殲滅を行うわ。」


神山の計画案に、須藤が疑問を口にした。


「囮役は、一体誰が?」


「既に被害者達が勤務していた会社に派遣しているわ。監視と内部調査でね。」


「まさか、本城隊員が?」


「ええ。」


「一人で調査任務は危険ですよ!」


「大丈夫。その時のために、如月隊員には新しい兵器で出撃させるわ。」


須藤に説明した後、神山は如月の方を向いた。


如月は、それに対し、ゆっくりと頷いた。


如月は内心、不安であったが、一般人を守るという強い決心を胸に、覚悟を決めた。





一方、被害者を出した企業では、今後被害者を出さないようにする為、社員に注意を呼び掛けていた。


夕暮時、社員が自宅へと一斉に帰宅する中、一人の若い女性社員が会社を出た。


女性がしばらく歩いた後、その背後から不審な男が現れ、女性の後をつけ始めた。


女性は男の気配に気づいたのか、足を速めた。


男も置いて行かれまいと足取りを早くし、女の後を追った。


女は男を巻くために、女はとある廃工場へ逃げ延びた。


女は安心したのか、一息をついた。


しかし、その時背後から男の声がした。


「なあ、姉ちゃん、俺と遊ばないか?今晩だけでいいからさあ、楽しい夜にしようぜ。」


その声の主は、女をつけて回した一人の男だった。


「なあ、返事してくれよ。今晩だけでいいからさあ・・・。」


すると、男の口内から、先端に牙が生えた触手が伸びた。


異形の物と化した男が女に近づこうとした瞬間、ライトが男を照らした。


とっさの事に何が分からず対応に困る男に、追われていた女が話し始めた。


「食人欲がありすぎて、罠にはまったのが分からなかったのね。」


その一言に、男は驚かされた。


「貴様・・・何者・・?」


男の質問に、女は答えた。


「私たちは、お前達同化獣をこの世から消し去るために存在するものよ。」


その答えに、男は笑いながら、その肉体を人ならざるものへ変化させた。


その姿は、一見すると象を人型にしたかのような姿であったが、頭部が左右非対称で目が一つしかなく、更に右耳が巨大で、左耳は小さく魚の胸鰭を模した形状であった。


右半身は紫色の甲殻で覆われ、左半身は赤い血管の浮き出た肉腫で出来ているかのごとく不気味なものであり、両手には鋭い爪が生えていた。


また、最大の特徴として、蛭の様な形状をした長い口吻が頭部から生えており、その付け根には目が直列に並び、とてもこの世の生物とは思えない姿をしていた。


同化獣が唾液を滴らせた口吻を女に向けて伸ばし始めた。


「フフフ・・・。俺たちを倒すだと?たかが人間の分際で俺たちに勝てるとでも?

いっその事、生き血を吸いつくしてやる・・・。」


同化獣が呟いたその直後、爆発が起こった。何の事かと驚愕する同化獣の前に、爆音を轟かせて巨大な何かが女の前に現れた。




それは、六輪のタイヤを持つ乗用車サイズの特殊装甲車両であった。


「如月さん、来てくれたのですね・・・。」


女は如月が来た事に対し、安堵した。


『本城隊員、本部トレーラーの位置情報を特殊インカムに転送しました。急いで退避してください。後は俺がやります。』


「如月さん、後はお願いします。」


特殊装甲車両のコクピットに居る如月の説明を聞いたミラージュの女性隊員、本城亜美は、急いで如月から指示されたトレーラーのある方向へと走り去っていった。


「逃がすか!」


同化獣が叫びと共に本城に向け口吻を放った瞬間、如月はコントローラーを操作し車体前面に装備された銃で口吻を撃ち、弾き飛ばした。


そして、車体前面からニードル弾を四発発射した。


ニードル弾は特殊車両本体とワイヤーで繋がれており、如月はタッチパネルを操作してワイヤーから高圧電流を同化獣目がけて流し込んだ。


同化獣は感電し、痺れて一時的に動けなくなった。




一方、本城は本部トレーラーと合流し、車内で神山、草薙、須藤と再会した。


「如月さんは?」


本城の問いに、神山が答えた。


「大丈夫。戦闘を開始して優位な状態よ。」


その返事に本城は安堵した。


戦闘の様子はミラージュの運用する小型ドローンから送信する映像をトレーラー内部のモニターで確認出来る。


「だが、安心している暇はない、特殊車両である機装車マキナが本当に同化獣を倒す事ができるのか確認せねばならない。」


草薙の言葉に、その場の空気が重くなった。


本城達は息を飲んでモニター越しの戦闘を見つめた。




深夜、廃工場の敷地内で、如月が操縦する特殊装甲車両である機装車マキナと、男が変化した象型の異形と呼ばれる同化獣の戦闘が始まっていた。


象型の異形は本城を食い損なったことに腹が立っていたらしく、如月がマキナという兵器を運用しているにも拘らず襲い掛かった。


如月はマキナを操作して躱し、左側にあるタッチパネルを操作した。


直後、マキナの左側装甲が展開し、銃口が出現した。


そして、そこから弾丸が十数発発射された。


弾丸は電撃攻撃で動きが鈍っていた象型の異形に命中した。


そして如月はアクセルを踏み込み、マキナの車体後部ブースターを展開し、猛スピードで象型の異形へと向かった。


そして、動けなくなった象型の異形を弾き飛ばした。


完全に身動きが出来なくなった象型の異形に、マキナを肉薄させた。


「今だ!」


如月は右側にある操作ボタンを押し、車体後部ブースター上部にある大型ロボットアームを展開し、象型の異形を抑え込んだ。


そして、如月が内部で捜査を行うと、ロボットアームの中央からレーザーカッターが象型の異形の胸目がけて発射された。


レーザーは象型の異形の胸を焼き切り、内部を露出させた。


そこに、赤黒く光る拳大の球体が出現した。


「よし、後は中枢器官を破壊すれば、こいつは消滅する!」


如月は、自身の勝利を確信していた。


なぜならば、同化獣には明確な急所が存在し、それは過去のデータから判明している。


そのデータによると、同化獣は怪人体になった後、胸の中心に赤黒い球体状の中枢器官を構成し、そこ攻撃すれば同化獣は死亡するというのである。


本部トレーラーでも、如月が同化獣の急所を狙っていることに、初戦闘の勝利を確信していた。


「如月さん、あと少し!」


本城が叫んだ。


マキナ内部の如月は中枢器官を確認すると、正面にあるタッチパネルを操作してロボットアーム中央から特殊爆薬を出現させた。


そして、勢いをつけて特殊爆薬を同化獣の中枢器官に押し付け、ロボットアームの一部ごと装着させた。


そして同時にマキナのバックギアを入れて一気に離脱した。


直後、中枢機関に押し付けられた特殊爆薬が発光し、大爆発した。


象型の異形は、爆炎に飲み込まれた。




「やったか?」


その瞬間、草薙が本部トレーラーの中で叫んだ。




如月が内心勝利を感じていた時、突如爆炎の中から何かが飛び出した。


「そんな攻撃じゃあ、俺様を殺すことは不可能だよ!」


何と象型の異形は生きており。マキナの上に自身を叩きつけた。


凄まじい衝撃がマキナ内部の如月に襲い掛かった。




トレーラー内部でも、あまりの出来事に隊員達は愕然としていた。


「急所を狙った筈なのに・・・。」


神山が失意に満ちた言葉を放った。


「神山さん・・・。」


本城が如月の身を案じた。




象型の異形は、追い打ちをかけるかのごとく両手の鉤爪で、マキナに連続して引っ掻き攻撃を浴びせた。


マキナは更に火花を散らし、頑丈であるはずの装甲は徐々に引き裂かれていった。


如月も操作パネルやスイッチを操作してロボットアームや搭載された機銃を駆使して反撃した。


だが象型の異形はロボットアームと機銃を破壊し、マキナの車体上部の装甲を剥ぎ取った。


コクピットは防護用の特殊プラスチックで覆われており、如月に怪我は無かったが、立場は完全に逆転していた。


如月は真上に居る象型の異形を睨み言い放った。


「何故だ、何故攻撃が通用しない・・・・!」


如月の疑問に、胸の傷口を始めとするダメージが回復した象型の異形が勝ち誇った様子で答えた。


「俺の肉体は、そんな攻撃では破壊できない。中枢器官など、弱点ではない。そんな兵器ごときで、俺たちを倒そうとするなど、千年早い!」


象型の異形はそう言うと、鋭い爪が生えた右腕を大きく振り上げた。


コクピット諸共如月を引き裂こうとしたのだ。


「如月さん!」


本城が叫んだ。


「如月隊員、すぐに退却して!もうこれ以上は危険だわ!如月隊員?聞こえているの?如月隊員!」


神山も叫び声を上げた。


「マキナ、機体各部分のダメージが限界まで達しています!」


須藤が絶望に近い言葉を放った。


「如月!」


草薙がモニター越しの如月に叫んだ。




象型の異形は如月に向けて言い放った。


「貴様は食う価値もない、この俺に抗ったからには死の制裁を受けるのだな。」


象型の肥大化し、大きな爪が生えた右手を、マキナ内部の如月目がけて振り下ろした。


「如月さん!」


本城が、悲鳴に近い叫び声を上げた。


マキナ内部の如月も、自身の死を覚悟した。




すると、どこからか足音が聞こえてきた。


象型の異形は攻撃を止め、周囲を見渡した。


そして、象型の異形はその気配を感じ、後ろを振り向いた。


振り向いた先に、足音の主がゆっくりと近づいてくるのを、象型の異形は確認した。


暗い闇の中で、その姿は定かではなかったが、異様な気配を放っていることを象型の異形は承知していた。


自分達と同じく人ならざる存在でありながら、自分たちの敵、象型の異形はそう感じていた。

そして、暗闇の中から、異様な気配の正体が、その姿を現した。




その姿は、形は人とまったく同じであるが、全身は、皮膚が変化したと思われる銀色の装甲で覆われており、頭部には二本の触角が生えていた。


両目は赤く、昆虫の複眼らしき形状をしており、口には二つの鋭い牙があった。


全身が銀色に光り輝くその姿は、人間と昆虫、特にカミキリムシを合わせたような外観であった。




その姿を、象型の異形だけではなく、マキナ内部の如月や、本部トレーラーの隊員達も確認していた。


「誰・・・?」


本城が言った。


象型の異形はマキナから降り立ち、銀色の昆虫人間に近づいた。


仲間かどうか確認する為だ。


「何者だ?俺の同族か?」


象型の異形が尋ねた瞬間、昆虫人間は両目を赤く光らせ、同化獣に飛びかかり、強烈な膝蹴りを浴びせた。


象型の異形は吹っ飛び、積み上げられたドラム缶に激突した。




とっさの出来事に、何が分からなくなった象型の異形に対し、昆虫人間は両手の甲から二つの鋭利なクローを発生させ、同化獣の頭部目がけて連続パンチを決めた。


パンチが決まるにつれ、昆虫人間の両手に生えた二つのカギ爪が象型の異形に突き刺さり、鮮血が飛び散った。


昆虫人間は、次にベルトのバックルから鞭を出現させ、それを右手に持ち、象型の異形を連続で打ちのめした。


鞭の先端と側面は鋭利な刃物の様になっており、象型の異形の頭部を貫通した。


象型の異形は頭部から鮮血を吹きながらよろけ、次に来た鞭の一撃により、一つしかない目を潰された。


象型の異形に大ダメージを与えた昆虫人間は、その長い口吻を掴み、そのまま一気に引き抜いた。


肉を引き裂かれる音を立てて口吻が引き抜かれ、象型の異形は大出血を起こした。


象型の異形は断末魔をあげ、傷口を左手で抱え込んだところ、昆虫人間の強烈なヒールキックを首に受けた。


昆虫人間の両足踵には、両手の甲同様にクローが存在し、相手に致命傷を与えることが可能なようだ。


ヒールキックを受けた象型の異形は、顔面と首から大出血を起こしながら真横に弾き飛ばされてきた。





本部トレーラーでは、隊員達がその惨状を見ていた。


マキナを圧倒していた同化獣が、突如現れたたった一体の異形の存在の前では、無力に等しい存在であること知ったのだ。




象型の異形は昆虫人間の攻撃により大流血を起こし、周囲は血の海で覆われていた。


その光景を見た昆虫人間は、鞭を収束させ日本刀状の剣に変形させ両手で構えた。


すると、昆虫人間内部にあるエネルギーが両手を経由して剣に送り込まれ、剣が光り輝き始めた。


剣にエネルギーが十分チャージされると、昆虫人間は象型の異形目がけて一気に走り出した。


そして、瀕死の状態だった象型の異形を内部の中枢機関諸共切り裂いた。


直後、象型の異形は苦しみの叫びを上げた途端、大爆発を起こし跡形もなく消え去った。




その光景を見た如月を始めとするミラージュ隊員一同は、人間以外に同化獣と敵対する存在がいることを初めて知った。


彼等は昆虫人間が、何の理由と目的があって同化獣を倒すのか、調べる必要があると確信していた。


昆虫人間は、目的を済ませたのか、ゆっくりと歩き始めて行った。


「お、おい、待て!」


如月はマキナ内部からスピーカーで昆虫人間に向かって呼びかけたが、昆虫人間は振り返らず、その場を去り、夜の闇に消えていった。




第一話 完



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