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聖なる言霊を小言と馬鹿にされ婚約破棄されましたが、普段通りに仕事していたら辺境伯様に溺愛されています  作者: 青空あかな


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第25話:気持ち

「ポーラちゃんっ、昨日はあの後どうなったのっ」

「一から十まで教えてくださいっ」

『フェンリルにもわかるように頼むっ』

「端折るんじゃないよっ」


 翌朝、朝食が済み、お庭の掃除を始めようと玄関から出た瞬間、すぐさま興奮した様子のみんなに囲まれた。

 右から左から、自室に運ばれた後の行動を事細かく問いただされる。


「べ、別に何もありませんよ。ベッドに横になった後、すぐに寝てしまいました」

『「まっさかーっ」』


 寝たと言っただけで、大仰に驚かれる。

 結局、昨日は夜ご飯も食べずに朝まで寝てしまったのだ。

 というより、みんな窓から覗き見ていたから、何が起きたか全部知っているはずなのに……。

 ガルシオさんがこほんっと軽く咳払いし、厳めしい顔つきで話し出す。


『ポーラ。ルイと仲が良いのはいいことだ。大いに仲良くしてくれ。だがな……“いかがわしい”のはよろしくないと思うぞ』

「いかがわしいことは私もルイ様もしていませんよ、ガルシオさん」


 どうやら、ガルシオさんはお姫様抱っこを“いかがわしい”ことだと認識しまっているらしい。

 人を運ぶ方法の一種です、と何度説明しても納得してくれなかった。

 その“いかがわしい”お姫様抱っこで思い出したのか、みんなはより一層興奮が激しくなる。


「だって、辺境伯様があんな大事そうに女の人を運ぶところ、初めて見たもん。あれはもう、運命に選ばれた男女にしか許されない抱っこだよ」


 ……とは、エヴァちゃんの談。


「まさしくポーラさんは麗しいお姫様、ルイ様は優美な王子様……。まるで、美しい物語の一場面を見ているかのような心持ちでした」


 ……とは、アレン君の談。


『あんなに男らしいルイは過去一番だ。あんなにキリッとした顔ができるのかと思ったよ。いかがわしいのは良くないがな』


 ……とは、ガルシオさんの談。


「ルイも顔に似合わず、やるときはやるんだねぇ。ルイがあんな大胆な抱っこをするだなんて、昨日までのあたしに言っても信じないだろうよ」


 ……とは、マルグリットさんの談。

 みんな色々と妄想が先走り過ぎているような……。


「私とルイ様はみんなと変わらない関係ですよ」

「『またまた~』」


 いくら想像しているのとは違う、みんなと同じ関係だ、と言っても、四人はニヤニヤするばかりで納得してくれない。

 困ったね、どうすれば納得してくれるのか。

 どんな言葉で説明しようかな、と考えていると、マルグリットさんが思い出したように言った。


「そうだ、ポーラ。ルイと相談したんだけど、あたしもしばらくこの屋敷で暮らすことにしたよ。でも、掃除や洗濯は自分でするからね」

「えっ、そうなんですかっ!?」


 思わず、驚きの声を上げてしまう。

 てっきり、マルグリットさんはお家に帰るのかと思っていた。

 お屋敷で一緒に暮らすんだ。


「“久遠の樹”の様子を見ないといけないからね。これからも観察が必要なんだよ」


 マルグリットさんは自信満々に言う。

 本心は樹じゃなくて、私とルイ様の観察なんじゃないかな……。

 顔に書いてあるし。

 ……念のため、観察しても面白い現象はありません、とお伝えしておこうか。

 そう伝えようとしたとき、玄関が静かに開かれた。

 さっきまであれこれ話していたからか、現れた男性を見ると心臓がドキッとしてしまう。


〔ポーラ、ちょっといいか?〕

「は、はいっ」


 ルイ様だ。

 朝にお話しすることは驚くことでもないのに、どうしたわけか心臓が強く鼓動してしまう。

 心地良いような、もどかしいような……不思議な感覚もまた、私を混乱させる。

 みんなはと言うと、私たちの周りから離れお庭の隅っこに移動していた。

 いつの間に……。

 ワクワクとした瞳でこちらを眺める。

 ガルシオさんだけは前足で顔を隠し、隙間からこちらを見ていた。

 ですから、いかがわしいことは何もしていないのですが……。


〔インクがそろそろ切れそうなので、街に行く機会があったら一緒に買っておいてくれるか?〕

「わかりましたっ。誠心誠意、買わせていただきますっ」

〔ありがとう、よろしく頼む〕


 ただの業務連絡なのに、なぜかドキドキしながら答えてしまった。

 ルイ様は特に何を言うわけでもなく、いつも通りの雰囲気でお屋敷に戻る。

 みんなは私の周りに戻ると、ニヤニヤとした意味深な笑みを浮かべた。


「『いったいどんな話を……!』」

「今度インクを買ってきてほしいという、単なる業務連絡で……」

「『またまた~』」


 事実を伝えても、やっぱり信じてくれなかった。

 まぁ、そのうち平常運転に戻るかな。

 ワクワクするみんなじゃないけど、心の中にフッと疑問が浮かぶ。


 ――私はルイ様に対して……どう思っているのだろう……。


 自分の心と向き合う。

 今までルイ様に対しては、尊敬や憧れ、私をおいてくれた優しさ……などの感情が主に心を占めていた。

 大切な人なのは間違いないはずだ。


 ――でも……それだけじゃない気がする。


 いつからか、尊敬や敬慕といった感情とは、別の気持ちが私の心に根付きだした気がする……。

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